《悪魔の証明 R2》第59話 039 シロウ・ハイバラ(2)
「確実に周囲が真っ暗になって何も見えなくなるわ」そう告げると、彼は両手をクロスさせた。次に前へと腕をばす。「だから、普通の人があのリボンで目隠しされたとしたら、視界が遮られカードの絵柄の識別は運頼みね。けれどもね、稀にいるの。尋常じゃなく視野が広い人間がこの世には」
レイが言葉を切った瞬間、アリスはをビクッと震わせた。
「その種の人間にとっては、頬と布の間にわずかにできた隙間から、下を覗くなんて造作もないこと」
そんなアリスを無視しながら、レイは説明を続ける。
「視界が広いから、下を覗くことができる……」
俺は図らずも聲をらした。
にわかに信じ難い。そんな人間が本當にいるのかとさえ思う。
「シロウ、その通りよ。だから、初めの実験でアリスは全問正解することができたの」ミリアが聲をかけてくる。「けれど、このトリックには欠陥があるの。顔をカードに向けることができないという欠陥がね」
「欠陥? どういうことだ?」
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ミリアに臺詞の先を促した。
トリックの欠陥と言われても、見當がつかない。
「あなたは頬と布の間に目を向けるしか、カードの中を確認することしかできない」
研究室中央にを移しながら、レイは俺の疑問に回答するかのように言う。
アリスの顔は瞬時に真っ青になった。
さらに、ここから見てもわかるほど手が震え出す。
「だから、顔を正面にしたまま解答を言うしかないわよね。この時點で、あなたがこのトリックを使っていることを直したわ」アリスのに起こった異変を無視して、レイは言う。「千里眼は必ず顔を対象に向け、障害を通して事を見る能力。であるのにも関わらず、あなたは対象をもっとも認知しにくい顔の角度でカードを見ようとした。不自然――不自然すぎるわ」
視線を一度スピキオにやる。
「だから、私はこう思ったの。超能力を持っているくせに、なぜか不自然な行をして無意味な能力を誇示しようとする」
臺詞を途中で切ると、レイは再びアリスへと目を戻した。
追い詰められたが次にやったことは、額から大量の汗を流し、口をパクパクさせるだけ。明らかに通常の神狀態ではなくなっているように見えた。
「――それはマジックである証拠に他ならないとね」レイは重々しい口調でそう斷定した。「このトリックを防ぐため、視界を完全に遮斷する鉄仮面を持ってこさせたの。あなたの手口をあらかじめ予想して、準備しておいた鉄仮面をね」
この言葉に反応した俺は、鉄仮面へと視線を送った。
テーブルの上に置かれた鉄仮面は、目も鼻も耳も、そして口も塞がれたまま何も語ろうとしない。それはあたかも、この勝負の終焉を示しているかのようだった。
そして、レイがそれに呼応するかのように、
「さて、そこでなんだけれど、アリス。ここまで看破されたのにも関わらず、まだ挑戦を続ける気なのかしら?」
と、終わりの言葉を宣告する。
アリスは顔を一気に紅させた。を噛み締めながら、壁際にいるスピキオへと顔をやる。
哀れなによる哀れな行を見た俺は、もはや何度挑戦してもアリスに勝利はないであろうことを確信した。
突然、ふわっとした空気が流れた。
スピキオが壁からを引き剝がす。そのままテーブルの方へと歩き出した。
重い場の雰囲気とは逆に、軽やかな足取りだった。
そうして、肩を落としているアリスの目の前で颯爽と立ち止まる白の仮面。次に、誰も予想していなかったであろう臺詞をデスマスクの奧底から発信する。
「アリス、もう一度やるのかい? やるのであれば答えなさい」
と、尋ねた。
これにアリスは困した顔を見せるだけで、何も言葉を返そうとしなかった。
「……なるほど、やらないのか。だったら、君はもうどこにでも行っていいよ」スピキオは、を刺すような言葉を平然と述べる。「今後君がどうなろうと、トゥルーマン教団は一切の責任を持たない。詐欺行為は即刻破門。契約書にそうあったのは覚えているね」
確かに契約書にそういった文言が存在するのは見たことがある。
それ自は不自然ではなく、當然のことだとは思う。だが、こんな年端もいかないとも契約をかわしていたのかと驚きをじ得なかった。
「功報酬契約だから、報酬はもちろんゼロだ。だが、その赤いドレスだけは君にあげよう。私からの最後のささやかなプレゼントだ。まあ、ストリートでは至極場違いだがね」
と、スピキオは続ける。
間もなくアリスのは、ガタガタと震え出した。
なんという真っ黒なスピキオの臺詞。彼の年齢を考えれば、この反応は仕方のないことだろう。
俺がそう思った矢先のことだった。
「死になさい」
不謹慎な言葉が、研究室に鳴り響く。
次に、ゴツッと鈍い音がした。レイの拳がスピキオの顔を捉えたのだ。
「殘念ながら、痛くもくもないんですよ。何せ、このスピキオは、仮面を裝著しておりますのでね」
仮面に突き刺さったレイの拳を払いのけながら、スピキオは言う。
臺詞を終えると、軽く肩をすくめた。
「――スピキオ。この子は私が引き取らせて頂くわ。問題お有りかしら」
眉間に皺を寄せながら、レイが強い口調で確認する。
スピキオの返答を待たず、震えているアリスを自分の手元に引き寄せた。が元におさまったことを確認してから、再び白のデスマスクを睨みつける。
「ええ、無論、構いませんとも。その汚れたアヒルさんとこちらは、もはや契約関係にありませんので」失笑じりにスピキオは言う「それにしても、ずいぶんとお優しいんですね。レイ・トウジョウ先生。とはいっても、あなたのこの対応は、まったくもって私の想定通りでしたが」
懐にれられたアリスがレイの手を握り締める様子を見屆けてから、足をくるりとドアの方へと反転させた。
途中、俺に一瞥をくれる。
それを確認した俺は、第六研のメンバーに悟られないよう軽く會釈を返した。
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