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翌日、迎えに來てくれた洋子さんにはるかはこれまで迷を掛けたことを謝った。そして車の中でこれまで仕事に積極的にしなかった原因について話をすると、洋子さんもまた自分が擔當している子役を守るというマネージャーの役目を果たせなかったことを後悔して謝る。

「お互いに謝ったのだし、過ぎたことよりもこの先のことを考えましょうよ」

このままだと謝罪合戦になりそうだったので、僭越ながら口を挾ませてもらった。はるかも吐き出してし気が楽になったみたいだけど、まだ完全に吹っ切れた訳ではないだろう。

洋子さんもせっかく前向きになったはるかを再び追い詰めたくはないだろうから、きっと徐々に仕事に復帰できるように取り計らってくれると思う。急がずゆっくり、気持ちを落ち著けていってほしい。

私もはるかに負けないように頑張らないとね、ひとまず今日１日かけて行われる測定とスポーツテストをしっかりやろう。前世の中學に學したての頃って、こんなにイベントばっかり詰め込んでいたかなと不思議に思う。私立だからなのかな、住んでいる場所が変わっていることももしかしたら関係があるのかもしれない。

洋子さんにお禮を言って車から降りて、はるかと一緒に教室へと向かう。先にはるかの教室があるのでそこで別れて、私は自分の教室へとった。席が近いクラスメイトにおはようと挨拶をすると、ぎこちなく返してくれるようになった。

私とはるかみたいに友人同士で験したけれど、クラスが分かれてしまった人達も結構いるみたいだ。學してまだ數日なので、様子見に徹している人も多い。小さく聞こえてくる話し聲は、おそらく部活関連で友達になったり以前から知り合いだったりした子なんだろうな。

席に座ってぼんやりとしていると、先生が教室にってきて今日の流れを説明してくれる。長重は當然だけど、視力も調べるなんて本格的だなぁと思う。科の先生が聴診で心音と肺の音も聞くらしく、できればのお醫者さんがいいなぁと思った。まだ大人の男ににれられるのには、すごく抵抗があるのだ。でも醫さんはただでさえ數がないから、多分男のお醫者さんが來るんだろうなぁ。

お醫者さんにはやましい気持ちは全然ないだろうし、職務に忠実な人がほとんどだと思う。でも相手がどう思っているかは全然関係なくて私が我慢できないという話なので、結局問題の原因側である私がどうにか耐えるしかないんだよね。

そんなことを考えていたら、いつの間にか先生の話は終わっていた。子校だから當たり前だけど子しかいないので、教室でそのまま著替えるみたい。何の躊躇もなく制服をいで著替える子もいれば、そわそわとしながら恥ずかしそうに著替え始める子もいて格の違いをじる。私はどちらかというとプライベートで人にを見せるのが恥ずかしいタイプなので、ちょっとだけモジモジとしながら著替え始める。

仲が良い人達だと、別に一緒にお風呂にっても大丈夫なんだけどね。クラスメイト達とはまだそれ以外の関係を築けていないから、ほとんど他人みたいなものだもの。そりゃあ恥ずかしくもなるよ。

中學１年生だからみんなまだ第二次徴が始まったぐらいみたいで、スポブラとか簡素なファーストブラを付けている子が多い。中にはシミーズだけとかノーブラの子もいて、やっぱり長は人それぞれなんだねとしみじみしていた。

そんなことを制服をぎながら考えていると、突然私のを両手で鷲摑みされた。

「ふぁっ！？」

「わぁ、おっぱい大きいね！　何か育てるコツとかあるの？」

びっくりしたのと、フニュフニュと自分のを他人にまれている変な覚に思わず変な聲を上げてしまった。そんな私には反応せず、突然をんだ人はのんびりとした聲でそんな質問をしてくる。どうすればいいのかわからずとりあえず離してしいと訴えるけれど、彼は聞こえていないみたいに指をかしている。

「その子、困っているじゃないの！　早く離しなさい！！」

後ろから怒鳴り聲が聞こえて、さらに『ゴッ！』という鈍い音がしてからすぐに両手が離れる。無意識のうちにを両手で隠して背後にチラリと視線を向けると、おそらく私のをんでいた子が頭を押さえて痛そうにしゃがみ込んでいた。その後ろには力いっぱいに握った自分の拳を、もう片方の手のひらでさすっている。他人の頭を思いっきりグーで拳骨したら、よっぽど手が丈夫じゃない限りめちゃくちゃ痛いんじゃないかな。

「だ、大丈夫？　ごめんね、友達がバカなことして。ほら、痛がってないでアンタも謝りなさい！」

先程まで涙目で拳をさすっていたが私に向かってそう言い、後半は毆られた子に向かって強い口調で怒鳴った。『うぅ、をんだだけなのに……』とか言っているセクハラを握りこぶしを見せつけるようにしているがにらみつけると、小さく『ごめんなさい』と謝った。まぁ突然でびっくりしただけで別に怒っていないので、謝罪はすぐにけれた。

「えっと、確か松田さんだったよね。こんなのがきっかけだなんてけないけど、私は川本睦（かわもとむつみ）。ソフトボール部なの。よかったら仲良くしてくれたら嬉しい。ほら、アンタも自己紹介しなさい」

「三木あかり、ソフト部。よろしく」

「アンタが悪いのに、何不貞腐れてるのよ！」

そう言って川本さんの鉄拳が、再び三木さんの頭に炸裂した。きっと仲良しの友達なんだろうけれど、あまりの展開に私にはちょっとついていけずに呆然としてしまった。再度頭を押さえて悶ている三木さんを放置して、川本さんは私に話しかけてくる。

「ごめんね、こいつは最近同級生のをむのが好きみたいで。私達一年生部員も全員やられたのよ、先輩に手を出さなかっただけよかったけどね。もし三年生に手を出してたら、下手すれば一年生全員連帯責任でキツイ練習メニューとかさせられたかもしれないし」

「う、ううん、大丈夫。本當にびっくりしただけだから」

首をふるふる振りながらそう言うと、川本さんは自分がやった訳ではないのにどこかホッとした様子で『ありがとう』とお禮を言った。しかし部活の同級生全員のをむとか、一何の目的があったのか……意味不明過ぎてちょっと引いてしまう。

確かに私のは最近膨らむスピードがこれまでよりも早くなっているけれど、巨ってレベルでもないしね。でも他の１年生達のをんだっていうなら、大きめのが目的だった訳でもなさそうだよね。

いつの間にか隨分と人が減っていて、時計を見るとチャイムが鳴るまであとしという時間になっていたので、慌てて著替えを済ませて川本さん達と共に教室を出た。廊下では壁に背を預けて宇ちゃんが待ってくれていて、どうやら私と一緒に移しようと思ってくれていたらしい。せっかくだから４人で行こうと、私達の集合場所である保健室の前に移する。他のクラスは力測定が先みたいで、育館スタートの組と運場スタートの組に更に分かれるらしい。

「そう言えばさっき松田さんの悲鳴みたいなものが聞こえたんだけど、何かありました？」

宇ちゃんが心配そうな表で聞いてきたので、できる限り客観的にあったことをそのままに説明してみた。でも多分話している間の私の表には、困のが浮かんでいたんだろうなぁ。話を聞いていた宇ちゃんがどんどん引いていくのを見ながら、気持ちはわかると心の中で頷いた。いきなりをまれたら、そりゃあびっくりして聲を上げるよね。

更にすぐ後ろを歩いていた川本さんから部活であった話を教えてもらった宇ちゃんは、まるで未知の生きを見るかのような怯えた目を三木さんに向けていた。そしてそんな目を向けられた三木さんは、心外だと言わんばかりに反論を始める。

何でも自分のはそんなに膨らんでないのに、同い年の他のの子達は大小の差はあれど自分よりは膨らんでいるのが不思議で、自分のも膨らむようにその理由を調べようと思ったらしい。疑問に思ったことを実際に行に移して調べるその実行力はすごいと思うけれど、できればその前に周りの人達に尋ねてほしかったと思わずにはいられない。

「背の大きさが人それぞれ違うみたいに、が急長する時期も人によって違うと思うよ。三木さんはソフトボールやってるなら筋トレもするだろうし、もうちょっとが長したら自然と大きくなると思うよ」

私が苦笑しながら言うと、三木さんは拗ねていた態度を通常モードに戻した。そして心なしかキラキラとしたものを含んだ視線が、私の方に飛んでくる。

「さすがチビなのにが大きいだけあって、説得力が違うな」

「他人にチビとか言わない！」

三木さん的には褒めたつもりだったのかもしれないけれど、言葉選びが悪すぎてまた川本さんに思いっきり頭を毆られていた。そもそも私のだって大きい訳じゃなくて、が棒切れみたいに細いから相対的にカップサイズが上がっているだけなんだけどね。

そんな話をしながら歩いていると、あっという間に保健室前に到著した。クラスメイト達が列を作って並んでいるので、私と宇ちゃんは列の１番前と２番目にそれぞれ移した。

「……お腹すきました」

「宇ちゃん、朝ごはん食べてこなかったの？」

「できれば中學最初の公式記録には、いつもより痩せた重を載せたかったので」

「公式記録ってどういうこと……？」

よくわからない宇ちゃんの言い分に、私はきょとんとして小首をかしげた。説明してもらって納得したけど、どうやら今日計った記録が１年間ずっと使われるということらしい。その後で太ろうが痩せようが、その記録は変しないということみたい。私は事務所で季節ごとに長や重、スリーサイズや下の長さまで細かく計測されるからあんまり抵抗ないのだけれど、他の子達はそうではないのかもしれない。

私としては長がびていてほしいとんでやまない、せめて１５０センチまでは長が止まるまでにびてしいと常々思っているからね。

宇ちゃんと私は列の最初なので、先生に導されるままに長や重を測っていく。１４３センチで３２キロという結果に、長がびてくれたことにホッと安堵する。ただ重を測ってくれた先生には、『ちゃんと食べてるの？』と心配されてしまった。ただローレル指數的にはギリギリ痩せ型ぐらいで普通の範疇にるらしく、心配と注意が混ざったようなじだったのだけどね。

別に節制しているつもりは全然なかったけれど、何故か重が減っている自分のにままならなさをじてしまった。ちなみに宇ちゃんは長１４１センチで重が３９キロだったのだけど、來年はこの２センチ差が果たして広がっているのか逆転されているのか。できればこのまま死守したいなぁ、難しいかもしれないけれど。

そのまま流れ作業で座高や囲、視力を計られて最後にお醫者さんによる聴診と打診をされて終了。ある程度クラスメイト達の計測が終わるのを待っていると、次は育館へ行くように指示されたので、それに従って移を始めるのだった。