《疑似転生記》批判と強化

芽依と花の『魔闘』は、一瞬のうちに決著がついた。やられた本人は何が起こったか殆ど理解できず唖然とした様子であったが、観客席から見ていた者たちは別の意味で唖然としていた。

今の一戦、花が放った『クイックドロウ』を芽依が『転移』で回避した。『クイックドロウ』は速さだけを見れば世界でもトップレベルである。それを『転移』で回避するという事は、理論上、ほぼ全ての攻撃を回避できるという事である。しかも2連続『転移』後、『雷轟』も発している。自分たちが逆立ちしても出來ないような蕓當に、誰も言葉を発する事が出來なかった。

「これで終わりですか?」

そんな中、空気を読まず芽依が問い掛ける。

「は、はい?」

「推薦の選考とやらはこれで終わりですか?」

「え、えーと」

芽依の問い掛けに困った選考委員は、他の選考委員や代表候補たちに視線を向けるが逸らされてしまった。誰も第2の生贄にはなりたくない。

「はい。本日はこれで終了となります」

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「そうですか。それなら帰ります」

こうして芽依は強烈なインパクトだけを殘して去っていった。その余波は様々な場所に波及していくことになる。

選考會から3日後、會見が開かれ『WMF』の代表選手が発表された。順當に実績のある選手が発表されるなか、芽依の名は世間をざわつかせた。『魔闘』の出場選手に日本の次期エースと言われた齋藤花の名前が無いこともそれに拍車をかける。

報番組のコメンテーターやネットの自稱有識者たちは、今回の選考に苦言を呈した。話題だけの選考、選手を蔑ろにしていると。その流れに乗ったのがマスコミであった。今まで芽依に袖にされ続けていた恨みがあるためか、かなり批判的な記事が紙面を飾る。

しかしそれも直ぐに収まった。とある蕓能雑誌がとある記事を発表したからである。

[世代代!? 選考會で起きた一騎討ちの結末]

その記事には選考會での出來事が事細かに記されていた。そしてその記事に対して関係者は誰1人として反応を示さなかったため、より真実味が増すのだった。

これにより、疑の選考から一転、芽依は期待の新星としてテレビや新聞で扱われ出すのだった。

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『紅鬼』シドとの一戦で自の接近戦の弱さを実したメイリーは、燃えていた。腕が。

「あつっ! 熱っ、痛い! もう『消火』」

『消火』によって腕の炎を消すメイリーだが、腕は焼けただれ普通の人なら數ヵ月はろくに使えないだろう重癥を負う。

「まったく…『治れ』。ふう、やるか」

それを『神聖魔法』で治し、再度同じことを繰り返す。

なぜメイリーがこんな蠻行を犯しているかと言えば、接近接戦強化のため新しい『強化魔法』の特訓であった。

「炎とか雷を纏うのは古來からの伝統なんだが上手く行かないな」

『強化魔法』と『屬魔法』の融合。その発想事態は昔から存在し、先人たちの多くが挑戦している魔法である。しかしメイリーの慘狀から分かる通りかなり難易度が高かった。制を誤れば『屬魔法』が者を襲う。かといって『屬魔法』の出力を弱めれば大した強化にならない。魔力制に関してかなりの度を誇るメイリーが、それだけに集中しても失敗するレベルである。

回復手段が富なメイリーだから続けられるが、普通の者であれば失敗イコール火ダルマなハイリスク魔法など挑戦すらしないだろう。

「今のはちょっと上手くいったな。生焼けくらいに抑えれた」

回復手段があろうが、こんな魔法に挑戦するメイリーは々特殊なのだろう。

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