《疑似転生記》切磋琢磨

『疑似転生』は記憶を一部封印した狀態で転生し生活していく関係上、通常の人格とゲームの人格に差異が生まれる余地がある。そのため現実ではやろうともしなかったことに『疑似転生』では挑戦することもある。今回の強化魔法と屬魔法の複合する『屬化』もその1つであった。

芽依には最低限のリスクヘッジの概念があるが、メイリーにはそれがない。『自回復』により期から自傷による功を幾つも収めているためか、自分へのダメージを軽視しているのだ。

「確かにVR空間なら練習はできるが、制ミスったら終わりの技をやるかな普通。まあそれに化されてる私も私なんだが」

現実世界ではもちろん、VR空間を用いた魔法競技でも『屬化』は使われず、機上の空論呼ばわりされている。それほどまでに『屬化』の制は難しい。そんな高難度の魔法に挑む切っ掛けがゲーム世界の自分であることに、芽依はし可笑しくなる。

「コソ練してメイリーを驚かせてやるのも面白いかな?」

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自分自との切磋琢磨。芽依が『疑似転生』の魅力にまた1つ気づいた瞬間であった。

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そんなこんなで芽依が忙しくコソコソしている頃、世間の芽依への注目はどんどん増していた。マスコミがどんなに取材依頼を出しても、どんなに批判記事を出しても一切反応せず、その対応を代表選手となり期待の新星として大々的に扱われるようになった今でも貫いているからである。

そんな彼が出場する『WMF』の國の注目度も増していっており、良い傾向と言える。しかしこの狀況を面白く思わない者たちもいた。

「それで、アポは取れたのか?」

「あのー、えっと…すみません」

「アポを取って取材するのがお前の仕事だろ! 前みたいに取材無しのペラペラな記事でも掲載するか! ふざけるな」

「そ、そんなこと言われても、鹿島選手のマスコミ嫌いは『魔法演舞』から有名だった――」

「で? 相手がマスコミ嫌いだから取材できませんでしたで済ませるのか? 記者ってのは楽な仕事だな。それにあのガキもあのガキだ。ちょっと注目されたからって調子に乗りやがって」

悪態を著く編集者だが、現狀芽依に対して出きることが無いことも理解していた。取材に行こうがアポを取ろうとしようが、批判記事を書こうがガン無視である。さらに芽依の人気が高まった影響で批判記事への批判が多く寄せられるようになり、悪あがき的な批判記事も出せなくなってきていた

さらに芽依への取材に待ったを掛ける者の存在も大きい。

「あのね、貴方が記者くんにどんな悪態付こうが構わないけど、鹿島選手の悪口を大聲で言うのは止めなさい。魔法雑誌の大手だった『魔文』が鹿島選手の批判記事載っけたせいで一ノ瀬博士のラボから出食らって廃刊寸前まで追い込まれたあの慘狀の二の舞になりたくなかったらね」

「チッ。分かってるよ。…お前はもういいから取材行ってこい」

「…はい」

ゴシップ記事がメインの雑誌ならばそこまでの痛手では無いかもしれないが、魔法業界を専門に扱う雑誌にとって一ノ瀬博士の存在は大きすぎる。彼のラボから出を食らえば、魔法業界全から総スカンを食らう危険さえあった。

それでも芽依の躍進に一ノ瀬博士が関係していると考える記者も多く、そんな特ダネを摑むチャンスを芽依のマスコミ嫌いに潰されてると考え、徐々に徐々に芽依へのヘイトが溜まっていくという構図が知らず知らずに完してしまうのだった。

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