《【1章完】脇役の公爵令嬢は回帰し、本の悪となり嗤い歩む【書籍化&コミカライズ】》第42話 オルガのアサリアへの認識
その後、オルガ様と私は並んで砦の廊下を歩き、その後ろにラウロとセシリオ様が続いていた。
「ラウロ殿は、大きいね」
「? 何がでしょうか」
後ろでラウロとセシリオ様が會話しているのが聞こえる。
「長だよ。ほら、見てわかる通り、僕は長が低いじゃない?」
「そうですね」
「うっ、そんなストレートに肯定されるとし傷つくよ……」
「すみません。ですが俺の弟よりも大きいです」
「えっ、そう? それは嬉しいな。ラウロ殿の弟は何歳なの?」
「先日、十歳の誕生日を迎えました」
「僕、十八歳だけど……」
「? そうですか」
「……うん、ラウロ殿は天然だね」
「アサリア様にもよく言われます」
なんだか、ラウロが失禮なことを言っているような気がするけど……大丈夫かしら?
セシリオ様は優しくて社的のようで、そのままラウロとお話を続けてくれているようだ。
「僕もラウロ殿くらい長があって逞しければ、姉上に――」
「おねえたま、だ」
私の隣にいるオルガ様が、セシリオ様の言葉を訂正するようにそう言った。
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「……おねえたまにもうし男っぽく見てもらえる気がするんだけどね」
「すみませんが、長と格は渡すことは難しいと思います」
「うん、ラウロ殿のをしいって言ったわけじゃないからね。まあしは分けてしいとは思うけど」
「そうですか。ですが先程の會話などを聞く限り、どれほど格が大きくなってもオルガ様のセシリオ様への接し方は変わらないように思えますが」
「ラウロ殿、わかっているじゃないか。その通りだ」
またオルガ様が後ろの會話に口を出した。
「……いつまで僕はおねえたまって呼び続けるんだろうね」
「一生じゃないですか?」
「一生だ」
「……キツいなぁ」
ラウロとオルガ様の答えに、セシリオ様が絶したようだ。
うん、その、何も言えないわね。
後ろの會話が終わって、私とオルガ様も軽く話す。
「西の砦はどんな魔獣が多いのですか?」
「他のところと比べると、おそらく空を飛ぶ魔獣が多いな。押し寄せてくる魔獣の半分が空を飛べる魔獣だと思ってもらって構わない」
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「それは確かにとても多いですね」
千ほど來るとしたら、五百は空を飛べる魔獣なのね。
スペンサー公爵家が擔當している南の砦は、多くても三百くらいだ。
「まあ空を飛ぶ翼を持っていても、地面を走ってくる魔獣もいる。そいつらは地面にいるうちに倒すのが楽だろう」
「かしこまりました。そこは私の専屬騎士のラウロに任せてもらえれば大丈夫かと思います」
「人伝に最強の騎士だと聞いている。その実力、とても期待している」
「はい、ご期待を裏切ることはないでしょう」
私の言葉にし笑みを浮かべて頷いたオルガ様。
「信頼しているようだな。アサリア嬢の実力も楽しみにしている」
「こちらこそ、オルガ様やセシリオ様の魔法を見るのが楽しみです」
「ふっ、今日は砦にいる騎士達が暇になりそうだな」
そんなことを話しながら砦の城壁に行くと、騎士の方々が忙しなくいている。
すでに魔獣が砦に向かってきていると知らせがあったようで、こういうきは南の砦と同じで既視があった。
遠くを見ると魔獣が降りてきているのがし見えるが、空を飛んでいる魔獣の數が多いようね。
そしてしばらくしてから準備が整ったようで、城壁のギリギリ立っていたオルガ様が私達に話しかけてくる。
「そろそろ魔獣の押し寄せが來る、お二人とも準備はいいか?」
「はい、大丈夫です」
「問題ありません」
「よし、ではラウロ殿は下で魔獣を倒してくれ。怪我をしても今日は問題ない、この後に聖が來る予定だからな」
「……かしこまりました」
ラウロがそう返事をしてから、いつも通り城壁から飛び降りる。
毎回だけど、私から離れる時はいつも不機嫌そうになるのよね。
その行為を初めて見たオルガ様やセシリオ様が驚くのだが、私はそれどころじゃなかった。
えっ……この後、聖が來るの?
聖ってオリーネよね?
……なんだか、急に気分が落ちてしまったわ。
まあどこかのタイミングで會うとは思っていたから、別に構わない。
今はしっかりと仕事をしよう。
◇ ◇ ◇
突如、砦から飛び降りたラウロを見て、オルガはし驚いた。
(魔法を使える様子はない、魔力による強化のみ。つまりこの高さから飛び降りて問題ないほど、魔力の強化が凄まじいのか)
オルガはにして次期公爵となるほどの実力者、そのくらいは簡単に見抜いた。
だからこそ、ラウロが他の騎士とどれほどの強さの差があるのかがわかった。
(騎士にしては魔力量が多いとは思ったが、全ての魔力を強化に使用しているのか。なるほど、他の騎士が肩を並べるのも不可能なわけだ)
下を見るといつの間にか騎士達の一番前に立っているラウロ。
オルガが上から「その騎士を一人の遊撃隊として対応しろ!」と指示を出す。
これで下の騎士達は問題ない。
魔獣の押し寄せ、最初に來る魔獣は飛んでいる魔獣だ。
いつもならオルガ、それかセシリオが魔法を放つのだが……。
「アサリア嬢、最初の攻撃を頼めるか?」
「もちろんです」
優雅な笑みを浮かべたアサリア嬢が、オルガの隣に並んだ。
「一発、魔法を放ってくれ。出來うる限り減らしてくれるとありがたい」
「かしこまりました」
正直、オルガはアサリアが嫌いだった。
社界でも挨拶をして軽く會話をする程度しか絡んでない。
しかしオルガはアサリアが嫌いであった。
噂でしかほとんど聞いてなかったが、皇太子の婚約者で我が儘で癇癪持ちの公爵令嬢と噂が広がっていた。
それだけでも悪印象なのだが、オルガが一番気にらないのは、四大公爵に生まれたのに戦場に立たないということだった。
四大公爵が帝國で権力や財を持っている理由は、命を張って戦場に立ち魔獣と戦うから。
それなのに戦場から逃げるように皇太子と婚約し、皇太子妃になって戦場に出てこない。
確かに皇太子妃になり、いずれは皇妃になって大変な仕事をするのだが、戦場に出るほど命がかかった仕事ではない。
公爵家に生まれたのにその責務を果たさない、弱い公爵令嬢。
オルガはそんな理由で、アサリアが嫌いだったのだ。
しかし今、その考えは本から覆った。
「『――炎公爵(フレイムスペンサー)』」
アサリアが放った一つの魔法、それが飛んでいる魔獣の群れに著弾。
瞬間、空を炎が包み込み、それが晴れた時には二百以上の魔獣が消えていた。
「ははっ、凄まじい……!」
四大公爵の中でも殲滅力に優れるスペンサー公爵家の炎。
噂には聞いていたが、これほどのものだったとは。
オルガだけじゃなく、セシリオや他の魔法使いもその威力に驚いていた。
「すごっ……! あんな炎、初めて見たよ……!」
「ああ、そうだなセシリオちゃん。私達も負けていられないぞ」
「そうだね、姉上……おねえたま」
しやる気が削がれたセシリオだったが、その後はすぐに立て直して風の魔法を放っていく。
「アサリア嬢、素晴らしい魔法の援護、謝する」
「いえ、もうし減らせると思ったのですが。まだまだ未ですみません」
「ふっ、あれが未か、そうかそうか」
まだ十八歳のアサリア、確かに年齢を考えるとまだまだび代があるだろう。
(アサリア嬢は全く弱いわけではない、戦場から逃げたのではない。私はどうやら、大きな勘違いをしていたようだ)
これほどの力を持っていながら、皇太子妃になるという選択をしたのだ。
だが最近は皇太子と仲が悪く、婚約破棄まで待ったなしだと聞いている。
(なぜかは知らんが、こんな強くてしいアサリア嬢が、アホの第一皇子の妃とならないのならいいだろう)
そんなことを考えながら空の魔獣を倒し続けていると、下から空の魔獣へ大きな何かが飛んでいくのが見えた。
それが著弾した瞬間、魔獣が散したように吹き飛んだ。
「えっ、下から何か飛んでくるけど!?」
セシリオの言葉と共にオルガとアサリアも下を見ると、すでに下での戦いは終わった後のようだ。
そして死の山の上にラウロが立っていた。
「ラウロったら、下の魔獣を倒し終わったから、その魔獣の頭を切って投げているみたいですね」
アサリアが言った通り、ラウロが魔獣の死の頭を投げているのが見えた。
その発想もすごいが、上空を飛んでいる魔獣にそれを當てて倒せるほどの腕力が途轍もない。
「ははっ! アサリア嬢とラウロ殿の活躍は聞いていたが、目の前で見ると全然違うな!」
「期待に応えられたのなら栄です」
「ああ、完璧だ。あとは私達に任せてしいから、ラウロ殿を止めることは出來るか?」
「わかりました。ラウロ、ここに戻ってきなさい」
「いや、アサリア様、そんな普通に喋るくらいの聲じゃラウロ殿には屆かないんじゃ……」
「戻りました」
「うぇ!? ラ、ラウロ殿、いつの間にここに!?」
「今です」
セシリオの驚きも無理はない、さっきまで數百メートルは離れた砦の下にいたのだ。
(目にも止まらぬ速さとはこのことだな。アサリア嬢の魔法も凄まじかったが、ラウロ殿の強さはそれ以上だな)
「アサリア嬢、斷られる前提で聞くが、ラウロ殿をアイギス公爵家に譲ってはくれないか?」
「オルガ様は『弟を譲ってくれないか』と言われて、承諾しますか?」
「しないな、毆りたくなる」
「同じ気持ちです」
「そうか、気を悪くさせたならすまない」
「いえ、同じ気持ちを共有出來たのなら良かったです」
その後、西の砦の魔獣の押し寄せは、いつもよりとても早く終わった。
魔力ゼロの最強魔術師〜やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】
※ルビ大量に間違っていたようで、誤字報告ありがとうございます。 ◆TOブックス様より10月9日発売しました! ◆コミカライズも始まりした! ◆書籍化に伴いタイトル変更しました! 舊タイトル→魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 アベルは魔術師になりたかった。 そんなアベルは7歳のとき「魔力ゼロだから魔術師になれない」と言われ絶望する。 ショックを受けたアベルは引きこもりになった。 そのおかげでアベルは実家を追放される。 それでもアベルは好きな魔術の研究を続けていた。 そして気がついてしまう。 「あれ? この世界で知られている魔術理論、根本的に間違ってね?」ってことに。 そして魔術の真理に気がついたアベルは、最強へと至る――。 ◆日間シャンル別ランキング1位
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