《ニジノタビビト ―虹をつくる記憶喪失の旅人と翡翠の渦に巻き込まれた青年―》第94話 アツアツ焼きたて
「よし、下準備はできたから材を挾んでいこう。フライパンは二枚だからもやしの方のパンはトースターにするかなあ……」
「あ、じゃあ、しょっぱいの食べ終わってから作る?」
「熱々食べたいからそうするかあ。よし、じゃあ一緒に挾もう」
キラは下準備のために使ったフライパンを洗って拭いた後コンロの上に戻して、もやしとベーコンの乗ったお皿も端によけた。それからを左にずらして空いたスペースに軽く電子レンジにかけて解凍した食パン一枚を乗せたお皿を置いた。
「まず、マヨネーズかなんかをパンに塗ってから、あとは好きな順番で好きな量のレタスとベーコンとチーズを乗せて、上からもう一枚パンを乗せれば準備はオーケー」
ニジノタビビトは恐る恐る半歩前に進んでキラの隣に並ぶとまるで何か神妙なものに直面したかのような顔で目の前の一枚の食パンと向き合った。そして目の前に差し出されたマヨネーズとそれを塗るスプーンを握りしめた。
一度スプーンを食パンの脇に置いてからマヨネーズをそっと絞り出した。キラはその分量を見てないかと思ったが、何も口出しをせずに自分も目の前の食パンにタルタルソースを塗り始めた。
ニジノタビビトはスプーンでマヨネーズを食パンの端から端まで綺麗に塗り広げる間に足りないことに気がついて二回ほど足したりした。さて次はレタスかベーコンかチーズのどれを乗せるか。しかしこれで悩んでも食べればそこまで変わらないということに気がついたので、一番近いところに置かれた洗われたレタスをちぎって二枚乗せた。
それからカリカリのベーコン、ピザチーズを満遍なく気持ち多めに乗せてからもう一枚の食パンで蓋をした。
「できた?」
「うん、それでどうやるの?」
「まずはフライパンにバターを引きます」
キラは仰々しい口調で説明しながらIHクッキングヒーターのボタンを押して二つのフライパンにバターを落とした。ヘラでバターを食パンよりも一回り大きい四角形に広げてサンドイッチから中がこぼれないようにそっと置いた。
「ここで登場するのが鍋と水、あとクッキングシートだな」
キラは食パンの上にフライパンに収まるくらいの大きさに切り出したクッキングシートを乗せて、さらにその上に水をれた鍋を乗せた。
「こうやって鍋を重しにすることで上から圧力をかけると、ホットサンドメーカーで作ったようになるんだ」
そもそもキラはホットサンドのカテゴリにホットサンドメーカーで作ったものだけでなく、トーストしたパンに材を挾んだものもれていいと思っているタイプである。それにホットサンドメーカーを使ったあとあれを洗うのが面倒であることを知っていた。
実はキラの星メカニカの自宅には何かのビンゴ大會で貰ったホットサンドメーカーがあるのだが、三、四回使って洗うのが面倒だと気がついたのでそれ以降ホットサンドを食べたくなったときはめっきりこの方法で作っている。
そのまま食パンが焦げないように火加減に気をつけながら焼いて、いい焼きが著いた頃にまたバターを落としてひっくり返して焼く。
「そろそろいいかな……」
キラは上に乗せていた鍋とクッキングシートを除けてヘラを食パンとフライパンの間に差し込んで覗き込んだ。キラは焼きを見てひとつ頷くと、そのままヘラをを奧まで差し込んでサンドイッチがバラバラにならないように気をつけながらお皿の上に移した。
キラはニジノタビビトがサンドイッチをキラキラした目でじっと見ているのを確認してからザクッと包丁をれた。
「わあ!」
キラはニジノタビビトの思わずこぼれた聲に笑ってからもうひとつのホットサンドにも包丁をれた。
「どう? おいしかった?」
「すっごく! ベーコンの方はベーコンがカリカリでチーズがトロトロだったし、あったかいレタスっておいしいんだね。それからもやしの方もびっくりした。シンプルだけどタルタルソースとの相もよくっておいしかった!」
既に大満足な様子のニジノタビビトに、キラはゆるゆるニマニマとする口もとを隠しもせずに、今からさらに楽しませてやるぞと思った。
「よし、チョコれるホットサンドの方も焼こうか!」
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