《【電子書籍化】殿下、婚約破棄は分かりましたが、それより來賓の「皇太子」の橫で地味眼鏡のふりをしている本に気づいてくださいっ!》第32話 絶対に、決して、間違いなく、旅行ではない
「すごっ! なんか鮮やかっていうか、いいねガーディナって!」
馬車の窓から外を見ているレオの歓聲。
「ああ、ガーディナも久しぶりだな。馴染みになった店があるから、今度連れて行ってやる」
ヴィクター様の楽しげな笑み。あと私への謎の宣言。
「旅行って楽しかったんですね。どこかの殿下も今はエリックなので、堂々と無茶を斷れるのは最高の気分です」
ゆったりと座席に腰掛けたライアン様の満足げな呟き。
「あのですね」
「何だ?」
「ん?」
「何でしょう」
三者三様の返事に、一拍置いて返す。
「迫を、どこへ置いてきたんですか!?」
「妻と旅行するのに迫なんているか?」
「旅行、ってなんですか!?」
おかしい。この人たち、やはりどこかおかしい。
「旅行は旅行でしょ? 可いの子いないかなあ」
「ヴィクター様、私たち、どこに向かってるんでしたっけ?」
「味い料……ガーディナ王城だな」
「……何のためでしたっけ?」
「それはもちろん、旅……王太子のお披目式だな」
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「…………王太子って、どんな人でしたっけ?」
「俺よりは劣る男。お前は俺の方が好きだ。そういえば、ガーディナ王家のを引いているらしい。スレニアと繋がって、俺を殺した疑が濃厚だな」
「最初の報は別にいりません。それが分かってるんなら」
すう、と息を吸う。
「もうし、張したらどうですか!?」
「なんで?」
張とはほど遠い、レオの気の抜けた返事。
「珍しく意見が一致したな。今から張して何になる?」
「それはそうかもしれませんが! 分かります!? 私たちは言うなれば、今から敵の本拠地に乗り込むわけですよ!」
「何だか格好いいですね」
「ライアン様まで! ライアン様はまだ常識的な方だと思ってました!」
「安心しろ。この俺について來れている時點で、ライアンも十分おかしい」
「殿下、自覚あったんですね」
「ですから!」
疲れた。猛烈に疲れた。
この、何を言っても無駄というか、どうしようもないじは久しぶりかもしれない。ぐったりと馬車の座席に沈み込んだ私に、ヴィクター様が両手を広げる。
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「來い」
「お斷りします」
「疲れたんだろう? 寢るか? お前の抱き枕になら、喜んでなるぞ」
「……誰のせいだと思ってるんですか」
ふう、と深呼吸をする。冷靜になろう、うん。
この人は、いやこの人たちは完全に、ぶ私を面白がっている。
出発した時點で嫌な予はしていたのだ。いそいそと何か綺麗な箱を取り出し始めるレオに、うきうきと出発の準備を始める地味眼鏡。完全に旅行気分だということは分かっていたけれど、それもガーディナにればしくらいは変わると思っていたのだが。
完全に旅行だと勘違いしている。全力で楽しんでいる。
まあ、おで張というか、そういうものは解れた気がする。これでもエルサイドに來てからは初めての他國で、しばかり張していたのだ。
「ほらアイリーン、來い」
「嫌ですよ」
「なぜ」
レオとライアン様の視線が痛いからだよ!
ヴィクター様のように鈍な、いや素晴らしく強靭な神を持っていれば気にならないかもしれないが、私は気になる。じとりとした視線をけ流せるほど強くはない。
案の定というか何というか、視線をわすレオとライアン様の姿を見て、絶対に行ってやるものかと心に決めた。
「お、ここで止まらないか? あの店の料理が味いんだ」
「……何言ってるんですか?」
迫を出すことは諦めた。諦めたけれど、せめて仕事くらい全うしてほしい。私つきの地味眼鏡下級文には、大した仕事はないかもしれないけれど。
そう、ライアン様と、地味眼鏡ことエリック・グレイは、もともとヴィクター様付きだった。けれどヴィクター様が亡(・)く(・)な(・)っ(・)た(・)ということで、私付きに異になったのだ。それも言書に書いてあったらしい。何というか、用意周到がすぎる。
加えて、何人か知らない人間が私付きとなっていた。ヴィクター様が私と面識のない人をつけるわけがないのだから、きっとどれもヴィクター様の隠れ蓑というか、仮の姿なのだろう。多すぎて笑ってしまった。自分で自分がわからなくならないのだろうか。
「え、食べたい!」
「別にお前はってない。俺はアイリーンと2人きりになりたいんだ」
「側近はいないようなものなら、僕もレオもいないので2人きりです。良かったですね」
「ライアン、最近お前強くなったな? こいつの影響か?」
「アイリーン様が來たからですね。アイリーン様が関わった時の殿下、隙だらけで面白いです」
「主って知ってるか?」
「何です、エリック?」
私はもう諦めた。時折私を要求してくるヴィクター様を無視しながら、黙って聞き流すだけだ。
そうして大騒ぎの3人を乗せた馬車はゆっくりと進み。式典の前日、ちょうど日が沈むころには、ガーディナ王城にたどり著いた。
「遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました」
案の人に促されるまま、ゆっくりと王城を歩く。隣にいるのは、ヴァージル殿下だ。一応私たち2人が招かれている以上、一緒に行しなければいけない。普通に辛い。
ちらちらと不躾な視線が送られる。それも、ヴィクター様が私にした例の屋敷のせいだろう。とはいえ、前のような明らかな敵意はなかった。
ヴィクター様がいない以上、皇太子はヴァージル殿下ということになる。まだ正式な式は行っていないが、周りも本人も皇太子だと思っていているだろう。馬車は別だったので、まだ言葉をわしてはいないけれど。だから、皇太子妃、というとヴァージル殿下の妻になってしまう。全力で勘弁してほしいので、うっかり口走らないようにしよう。
話がずれた。だからヴァージル殿下にも、しばかり余裕があるのかもしれない。
後ろからじる恨みのこもった視線は無視する。どうやら初夜を潰されたことをまだに持っているらしい。その翌日にはしっかり、何ならかなり食い気味に完遂したくせに。満足そうなヴィクター様とは対照的に、端的に言って々なで死ぬかと思った。
「こちらの部屋でお過ごしください」
そう促され、部屋に通される。當然ヴァージル様とは別の部屋だ。私の部屋は廊下の突き當たりにあり、ヴァージル殿下の部屋はその手前だった。同じ部屋だったら先程から殺気を送っているどこかの地味眼鏡が怖い。
どうやらヴィクター様たちは、側近や文に與えられた別室に案されているようで。私を追ってってくる人はいなかった。
広い部屋だった。
全的に鮮やかとでもいうのだろうか、とりどりの糸で編まれた絨毯が目に眩しい。スレニアの隣國なのに、山一つ挾んだだけでこれほど違うものなのだろうか。やはり易で栄えているだけあって、いくつかの文化が混ざり合っているのだろう。見慣れない模様に、ふとあのブレスレットを思い出した。
私の。そう言って選ばれたブレスレット。
ふと、手元に視線を落とした。
贈られた、といえば。婚姻の時、ヴィクター様から贈られた指。繊細な銀細工が大きな青い寶石の周りを縁取る、あまりにも獨占全開なそのデザイン。
護衛として部屋の隅に控えていた騎士が、はっと息を呑む気配がした。一応ここはガーディナなのだから、レオが戻ってくるまで部屋にいてもらおうと思ったのだけれど。
彼は普段は私についている人ではない。エルサイドの方から、応援という形でつけられた騎士だ。もちろん陛下の偵察員としての役目は持っているのだろうけれど、全ての事を知っている陛下相手なら気にする必要はない。腕は確かだろうから、十分だ。けれど、當然彼自は事を知らないわけで。
向けられる痛々しいものを見る視線に、申し訳なくなってくる。
これでは完全に、亡き最の夫を思って指を眺める悲嘆の未亡人だ。申し訳ない。そういう空気にしたかったわけではないのだ、本當に。
何ともいえない空気になってしまい、心の中で悲鳴を上げながら私は神妙な表で指をでる。違う、本當に申し訳ない。早く帰ってきてほしい。
その心の祈りを聞き屆けたのか、軽く扉が叩かれた。ほっとしたが表に出ないように気をつけながら、私はるように告げる。
案の定、戻ってきたのはレオとライアン様、そして地味眼鏡だった。レオが騎士に軽く聲をかけると、彼は小さく頷いて部屋の外に出た。
「なんだ、もう俺のことをしがってくれたのか?」
指に添えられたままの私の指先を見て、ヴィクター様が楽しげに笑った。
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