《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月20日:売店にて挑戦"権"、一本30,000マーニで販売中!

なんだなんだとプレイヤー達の視線がどんどん集まってくる。

どうも俺が何者であるか知っているプレイヤーも混ざっているらしく、スクショを撮影している者もちらほらと見えた。許可を取れ許可を。

とはいえこれだけでは客寄せパンダでしかない、パンダと一対一で毆り合うことが趣旨である事を分かりやすく理解させる必要がある………ので、こういう時は仕込み(・・・)を使うのだ。

「おうおうおうツチノコさんよお! いきなり出てきたと思ったら無限組手だの景品だの! 詳細を言ってくれなきゃ興味も惹かれねーゾ!?」

なんかコッテコテのガンを付けてきた鉛筆の手先(プレイヤー)を半目で睨みつつ、咳払いをして改めて俺がここにいる理由を口にする。あんの大役者め……吊るして干してたくあんにしてやろうか。

半分ヤケになりつつも、聲を張り上げて俺が今からここで何をするのかを、そしてそれに參加するために何をするべきかをぶ。すかさず拡聲魔法が口元に展開された、こういう時だけ用意が良くて何よりだよありがとうねぇディプスロ!!(ヤケクソ)

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『えー、任意參加! 容はさっき言った通り無限組手! 挑戦権(・)を持ってるプレイヤーと俺……サンラクが対人(PvP)やります! なんでこんなところでやるかっていうと前王陣営の黒幕にサボった分働けと脅されました!』

「豪華景品ってのはなんなんだよ!?」

なんでこいつこんな喧嘩腰で大演技してるの? とはいえちゃんと筋書き通りではあるので、俺はインベントリアを作し………寶船の甲板上を指さす。

『商品は………俺が貯蓄してた高レベルモンスターの高レアドロップアイテム! 大総額で言うと……』

「展開」を選択。格納空間に貯蔵されていたそれが、実を得て……この世界へと現れる。

直後、虛空よりぼとり、と何かが落ちた。なくとも甲板に立っているので地上から見上げているプレイヤー達には見えないなこれ。仕方ない、一旦ドロップを中斷して地上に降りて……

『五十億マーニくらいはするんじゃねーかな?』

次の瞬間、渓谷を埋め盡くさんばかりの勢いで虛空から大量のアイテムが噴き出した(・・・・・)。

水晶群蠍の素材、帝晶雙蠍の素材、さらに言えば舊大陸には存在しないモンスターの素材。なんていうか鉱系な外殻持ちのモンスターばかりを周回していたせいか、ガチャガチャと騒々しい音を立てながら莫大な量のアイテムがぶちまけられていく。

五十億マーニ分ともなれば、十個やニ十個どころではない。ドバドバと現れ続けるアイテムにこの場にいたプレイヤー達の視線は釘付けだ。

『出大サービスってやつだ! 俺に勝った奴に………文字通り! 偽りなく! そっくりそのまま! これを全部くれてやる!! 俺の周回一か月分だぞふざけんなちくしょー!!』

ちょっとオーバーリアクション気味に指さす寶石のようなきらめきを放つ素材の山を指し示せば、拡聲された聲を聞き取ったプレイヤー達の眼がの炎に燃える。魚を釣るのに家財を全て池に投げ込んでいるような気分だ、正直言って誰かにくれてやるつもりは頭ないので全員ぶちのめす気満々ではあるのだが。

……ペンシルゴン曰く「そういうのは思ってても言わないものなの、人寄せするならそのつもりが無くても懐の深さだけ示さないと」とのことなので口には出さない。やっぱ黒幕に慣れてるような奴がいうと説得力が違いますわ。

あの大はサクラだが……サクラで大、っていうとなんか酢漬けっぽいな。いやそれはどうでもよくて、だ。一応「プレイヤーがサンラクに問いを投げても良い」という流れは作ってくれたので役目は果たしたと言えよう……大演技だったけど。なんであんなコッテコテのレトロチンピラムーブだったんだあいつ。

「ツチノコさん! マジでそれ全部なんすか!!」

『二言は無い! 勝てたらだけどな!!』

俺の斷言に対しておお、と歓聲のようなどよめきが上がる。中には金銀財寶が如き輝きを放つアイテムの中にある水晶のようなそれが、何の素材なのか気づいたのか渓谷の上とアイテムをとを互に見る者もいた。

とはいえ、サクラ大に続いて質問する者が現れればあとは堰を切ったように質問の嵐だ。

「なんでわざわざそんなことするんすかー! 得無いでしょ!!」

『プレイヤーがここで観客なり挑戦者なりしてくれればいいんだとさ! 要するに俺と一緒に王國騒ほっぽり出して時間潰ししろって事だよ! 大赤字は俺だけってワケ!!』

「挑戦権って何ー!?」

「再戦アリ!?」

「マジでそれ全部くれるの!?」

「サイナちゃんどこだよー!」

「うおおサイナちゃーーーーん!!」

『ええいちょっと靜かに!今説明するから!!』

えーと、説明しなきゃならんのはバトル方式と挑戦権と……

『まず參加條件は挑戦権(・)を持っていること! 挑戦権はそこで買える!!』

指で示した方向にこの場にいる殆どのプレイヤーの視線が向く。降り注ぎ、刺さるような視線の雨に曬された中年男……イムロンは、若干口の端を引き攣らせながらも右手を軽く上げる。その手には一本の剣。

『挑戦権ならぬ挑戦剣……一本三萬マーニ。アレを持っていることが參加條件だ』

「ダジャレかよ……」

『覚えやすいだろ?』

どうも、聴覚も強化されているのかぼそりと呟かれたそれをなぜか聞き取れた俺がそのつぶやきに言葉を返すと、まさか反応されるとは思っていなかったのかそいつは目を泳がせてこまってしまった。

『バトル方式は1vs1(タイマン)! ちょっとした結界的なものが張られる……ので、そこでキルされるか降參するかで勝敗を決める!!』

「なんで降參ありなんですかー!」

『王國騒中のルールだと死んだらその場にアイテムが全部ぶちまけられるから溫措置! ちなみにドロップしたアイテムは豪華景品に加えられます』

すなわち、早く挑めばそれだけ景品獲得に先んじる事が出來るが……上手く(・・・)負けなければ、自分のアイテムが事実上の完全ロストって訳だ。

『ちなみにこっちはガチ裝備でお相手します』

「ずるいぞ!」

『ずるくなーい』

五十億かけてるのにずるいと言われる筋合いはない、悔しかったらそっちもガチ裝備を持ち込めば良い。

とはいえ、王國騒イベント中はデスするとインベントリ(・・・・・・)のアイテムや手持ちのアイテムは全てその場にぶちまけられる。”捨て”前提の裝備で俺に勝てるとは思わないでほしいものだ………

『さぁ我こそはって奴はいるか!?』

沈黙。さもありなん、日本人という種族は二番手三番手を求めたがるものだ……とはいえ、こういう時の為にサクラ大君がいる。手筈ではサクラ大が名乗りを上げて一番手として俺と戦い、適當にボコって他のプレイヤーの參戦をうわけで………さぁ來いサクラ大、ペンシルゴンから「まぁ別にキルしちゃっていいよ、基本的に彼らに重要アイテム持たせてないし」とのことなので演技じゃない斷末魔をばせてやるよ……!

だが、サクラ大の調子を整えて聲を上げるよりも早く………我こそは、と一歩踏み出した者がいた。

「ならば某(ソレガシ)が一番槍となろう……たのもう!」

『んえっ』

なんか濃ゆいのが出てきたぞ。

・挑戦剣

30000マーニ。

イムロンが事前に用意した百本を購することで挑戦権となる。儲けは三人で1:1:1、ちなみに原価は5000マーニだがサンラクが々採掘する中で集まったそんなにレアじゃない鉱石が使われているので実質原価はタダ

「なんか俺だけ損してないか?」

「使うアテあったのか?」

「いや……まぁ倉庫のやしだったけども」

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