《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月20日:鋒の先に士道在り

「某(ソレガシ)の名はセツゲッカ! いざ尋常に、立ち會いを申し込む!!」

なくともそのプレイヤーはサクラ大ではない。なにせサクラ大は今、気まずそうに挙げようとした手を下げているからな。つまり在野の……在野の、まぁ"お侍様"ってこと……なんだろうが………

『あー、ええと。了解した、とりあえず挑戦権買ってね』

「承った」

なんだろう、ロールプレイなのは分かるが……筋ムキムキな上半剝き出しで両腰に刀を佩いた半の巨漢侍、としか言いようのない存在なので普通の半であるこっちが霞むという恐るべき現象が起きている。

に貴賤も上下もねぇだろうと思いたいがキャラの濃さで間違いなく負けてる気がしてならない。というかこのやたらに筋をムッキムキにするキャラメイクにどこか既視が……まぁいいや、どうせ一人二人で終わるはずもない。イロモノキワモノとのエンカウントだってあるだろうよ。

とりあえずディプスロに拡聲はもういい、と手振りで伝えつつインベントリアを作。このまま山盛りにしてたんじゃガメようとする奴が絶対出てくるだろうからな、とはいえ衆目を集めるなら”お片付け”にも一工夫が必要というもの。

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「へいサイナ」

「呼応(およびですか):契約者(マスター)」

インベントリアには実は々と拡張機能(アドオン)がある。リヴァイアサンでもベヒーモスでもブイブイ言わせて攻略したので、いろいろなアドオンを導していたりする。その中の一つがインベントリアから特定のアイテムなどを現実空間に出す際のエフェクト変更だ。

やろうと思えば超神々しいエフェクトで現れる石ころ、とかもできるわけだが……まぁ今回はちゃんと真面目にやった。

青い花弁のような粒子と共に現れたメイド服姿のサイナに、僅かな沈黙の直後にわっと歓聲が上がる。どうもエルマ型ではなくサイナ自がちょっとした人気者らしく、まぁ客寄せパンダ二號になるんじゃないかとわざわざ出したわけだ。そもそもアイテム回収するだけなら自分でできるしな……ところでなんでサイナが人気者なんでしょうね、一部切り取りの畫転載されまくってるもんねワハハ。バカがよ。

「了解:インテリジェンスな格納をお約束いたしましょう」

「インテリジェンスな格納ってなんだよ」

「説明(それはもう):非常に効率的かつ迅速な作業。それを実現するのがそう……”インテリジェンス”」

すげぇドヤ顔してるよこいつ。Nパッチれてからなんかこう、前にも増してインテリジェンスをり出したような……あれってなんかこう、コンプレックスに由來するじではなかったの? 単に口癖?

とはいえ、転載されまくり畫の自稱天才(インテリジェンス)のサイナの登場に、この場のプレイヤー達は大盛り上がりだ。とはいえスクショが遠巻きなのはいつの間にやら土が盛り上がって楕円形のフェンスを形していたからだろう……ディプスロ、言さえ無ければなぁ……言さえ………いや本當、黙ってても下ネタゼスチャーするからなあいつ………

「さぁて……サイナ、船の甲板に。ここは今からバトルフィールドだからな」

「了解(かしこまりました):」

うーん、ちゃんとメイド服に合わせた言ですね。そしてちら、と隕鉄鏡を見てあえて俯瞰視點にすることで音を拾わないようにしつつサイナに小聲で補足。

「適當にファンサービスしといてくれ、定期的に手を振るくらいで……あと半徑1メートル圏に無斷で踏み込んで來た奴は銃火で蹴落として良し」

「了解(おまかせを):撃滅しましょうとも」

サイナはインベントリアと直接紐づけられているので事前に許可を出しておけばサイナ自の判斷でインベントリアの裝備を使用できる。故にインベントリアから展開した飛行ユニットで甲板へと上がっていったサイナに歓聲が上がる……本當にアイドルじみた人気だな、ドルオタも草葉ので喜んでいるだろう。

「さて………待たせたなセツゲッカ」

「構わん………だが、立ち合う前に一つ問いたい」

「うん?」

「貴公の所屬するクランに「京極(きょうごく)」殿がいる、と聞いたが……」

「ああうん、いるけども」

あれ、「きょうアルティメット」って読みらしいよ。と指摘するべきか迷ったが、面倒だったのでそのままにしておく。ルビ必須のややこしい名前にする方が悪い、非はそちらにあるぞ京極。

「皮算用は否定せぬが、もしこの立ち合いに某(ソレガシ)が勝ったのならば、彼との一戦を仲介してもらいたい」

「まぁ別に紹介するくらいなら別にいいけど……」

なんだなんだ、あいつプレイヤーキラーだし怨恨か? とはいえ眼前のムキムキサムライことセツゲッカからはそういう恨みのような気配はじられない。どっちかっていうと、純粋に武蕓者として戦うのを希してる、とかそんなじだろうか。

てっきり、イムロンと同じで(あくまでもゲームでの)日常會話でもロールプレイを貫き通すタイプかと思ってたが………本當に武蕓者だったりしてな。いやそりゃないか、ムキムキすぎる。長2メートルくらいあるぞあのアバター。

「そういうのは、実際に勝ってから言ってもらおうか」

「あい分かった……ならばこの二刀で某の力量を示すのみ!!」

すらり、と慣れた手つきで二刀を抜き放つ姿は隨分と手慣れているように見える。とはいえ、青聖杯もあるので見た目と聲が一致しているからと言って中が本當にその別とも限らない。それに作アシストもあるし見た目や挙から中を見抜こうとすること自いろんな意味でナンセンスか………なんでもいいや、この場に立った以上は対戦者その1に過ぎないし、これから俺が積み上げていく無數の敗北者の第一號でしかないのだから。

「伐天! 破那丸! いざ參らん!!」

明らかに”捨て”武ではなさそうだが、なくともそれを承知で刀を抜いたのは間違いないだろう。

あまりにもガチすぎて実はペンシルゴンの手先なのでは? とすらちょっと疑っているのだが、そう言った様子もないしサクラ大も知らないようなのでやはり在野のムキムキサムライということだ。

「まぁ待て待て、まだフィールドが準備できてないんだ」

「むっ」

ディープスローターに目配せをする。人格はともかく、今回の無限組手で一番負擔がかかるのはともすれば実際に戦う俺よりもアイツの方かもしれない。

「じゃあ始めようねぇ………【闘儀結界(デュエルゾーン)】」

ディープスローターが発した「一対一特化型結界」が楕円形のフェンスを縁(ふち)としてドーム狀に展開される。これにより、結界外からの干渉は不可能となったし、逆に側からの攻撃も外側に放たれることは無い。奴曰く、「雙方向に干渉できず、定員二名なので効果の割に結構ローコスト」であるらしいが組手の度にあいつに張り直してもらうので………凄い勢いで”貸し”カウンターが回っていそうで凄く寒気がする。當人は「一日の労働で貸し1でいいよぉ」と言っていたがなんかこう………悪魔と取引したが拭えない。

「いや、目の前に集中集中………さてセツゲッカ、これでこの組手に邪魔はらない。降參するなら躊躇わない方が良い」

「……何?」

「そういえば言ってなかったな。今の俺は…………過去最高に対人特化(・・・・)だ」

にやりと笑い、インベントリアを作する。さぁーて………やるからには派手に全力に、だ。

・セツゲッカ

在野のムキムキサムライ。基本的にムキムキマッチョプレイヤーの四割はマッシブダイナマイトフォロワーと言われているが、セツゲッカはその四割の方。

元々はサムライなキャラでやっていたが、マッシブダイナマイトに銘をけてマッチョであることを求めルルイアスに挑んだ剛の者。

迷いなく青の聖杯を選び、マッチョボディを手にれた………フレンドは初見絶句した。

何、元々の別? と合致する野太いボイスって事はそういうことだよ。雪月花さん

なお口調は一人稱以外割と自前

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