《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月20日:雲を迸る耀きの如く

名前は冗談みたいなもんだが、能は大真面目っぽい二刀を構える姿は堂々たるものだ。イロモノではあるが王國騒イベントで戦場に出てきている辺り、こけ脅しではなさそうか。

ならばこちらも相応の戦力をもって迎撃させてもらうとしよう。

わざわざ左右のインベントリアに分けてれているので、全く同じタイミングで左右の手に現れたそれを握りしめて……突きつける。

「それは……銃、か?」

「トラディション&レボリューション、神代に依らないもう一つの技ツリー……そこに実った純ハンドメイド・ガン! サムライ気取るなら銃弾くらい斬ってくれるよな?」

には剣だとか撃能力を付與した剣だとかイムロンになにやら高説を賜ったが、見た目は完全に「銃のように持つ剣」だ。

とはいえ、素材が素材(サソリ)なので黃金と見間違うほどに眩くを反する水晶の刃を持つトラディションと、青白くき通った水晶の刃を持つレボリューションは観客の、そして何より対戦相手たるセツゲッカの目を惹きつけてやまないようだ。

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いつだったかイムロンが言っていた。ビィラックの手によって作り出された傑作「煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)」は鍛治師をしているプレイヤーにとってはまさに雷鳴の如き衝撃であったと。それは見たこともない……否、彼ら鍛冶師として言わせれば扱ったことすらない(・・・・・・・・・)素材を、見たこともない……これもまた否、自分たちで(・・・・・)は再現不可な(・・・・・・)製法で作られたそれは、幾人もの鍛冶師がその再現に挑み、挫折したのだと。

蓋を開ければ隠し職業「古匠」の存在や、神代の技などが絡んでいたためにあの時點のプレイヤーでは逆立ちしても再現は不可能なものであったが、古匠となり神代の技を駆使できるようになったからこそ……自分は”あえて”神代の技に依らない銃の作に再挑戦した、と。

逆立ちしなくても完できた、ざまぁみろ! と誰に喧嘩を売って誰に勝ち誇ってるのかよく分からなかったが……なくとも、鍛冶師としてなにかしらの”壁”を超えて出來上がったもの、それがこのトラディション&レボリューション。

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伝統に革命を、あるいは伝統を以て革命を起こす。水晶の刃を持つトラディションと金晶の刃を持つレボリューションというなんというか骨過ぎるほどに煌蠍の籠手を意識したデザインとなっており、能力も左右で若干異なるという意識しすぎっぷりだ。

「失くして代わりに得たのがコンパチ……もとい、リスペクト品とは」

「……?」

「いや、なんでもない」

まぁこれはこれで、というやつだ。煌蠍の籠手はフェイバリットと言ってもいいお気にりだったが、あれは一発勝負の対モンスター戦に特化しすぎているのが短所だ。何人も相手にするなら、案外こっちの方が使いやすいというもの。

「開始の合図はサイナに頼む、異論は?」

「無い!」

じゃあサイナ號砲よろしく。

サイナは俺の背後、ブリュバスの甲板上にいる。故に、サイナがいつ號砲を撃つのかを俺は視認することは出來ない。やってやれないことはないが、その場合は視線を逸らした狀態で眼前の敵と戦い始める事になる。即ち、後ろで何が起きているのかを俺は聴覚くらいでしか知覚できないわけだが……

「うおおおおサイナちゃああああああ」

「號砲(スタート):なお撃滅を兼ねます」

「ほぎゃばぁ!?」

號砲で1キルされたんだろうな、というのはなんとなく理解できた。サイナに持たせたショットガンはHE弾が発可能です。別にショットガンは散弾しか撃てないわけじゃないんだぜ………

「覚悟ォ!!」

実弾だろうと空砲だろうと號砲は號砲だ、ミチィ! かギチィ! と音が鳴ってそうなほどに引き絞られ撓んだ筋発的開放と共に推進を生み出し、二刀にスキルエフェクトを纏わせたセツゲッカが渾の大上段を振り下ろす。

だが遅い。侍の、刀による、初手の、ましてや必殺を名乗るならなぁ…………

「風より速く振らなきゃ俺には當たらねぇよ!!」

二刀には二刀で返す! 永劫の眼(クロノスタキサイア)を起したことで、眼に移る全てがスローモーションとなる。俺は主にきの速い相手を捕捉するか、きが速すぎる自分自を把握するために使っているが、このスキルは元を辿ればパリングスキルがスキルツリーの””だ。

すなわち、スローモーションの中で敵の攻撃を見切り、弾くことこそがこのスキルの本來の用途───!

「遅い!」

「何っ……ぐあっ!?」

見た目がハッタリでなければ、恐らく俺よりもSTRは上なのだろう。だがこのゲームのパリィが十全にその使命を果たせば、巨獣の爪牙すら弾くことができる。いわんや種族人間の攻撃などなにするものぞ。

あるいは巨獣の爪牙すら弾けるパリィを人間が習得できるように、それをも上回るパワーがあるのかもしれないが………それが出來そうなのは知ってる範囲じゃ二人くらいだ。セツゲッカは三人目ではなかったらしい。

二刀の斬撃を、同時に弾かれたことで萬歳のようなポーズで直したセツゲッカのがら空きのにトラディションとレボリューションをパリィのきを逆戻しにするかのように、外からへのスイングで斬り裂く。

「くっ……」

「……むん?」

妙な手ごたえだ。斬ったには斬ったが、剝き出しの生を斬ったにしては抵抗がありすぎるような。そもそも対人経験は片手で數えられるくらいはある……とすら言い難いので「対人ビルドで育てると人間のは堅いゴムみたいなになるんだよ」と言われたらそれまでだが………いや違うな。

「なにかしらのアクセサリー、か」

「素を曝すならば相応の備えはして然るべきだ」

程………いや程っていうほど理解は及んでいないが、何かしらVITを上げる仕掛けがあるのだろう。というかその「相応の備え」とやらを俺は知りたいんだが………半なのに相応の備えしてないよ俺。

「さぁて……十連戦は覚悟してるからな、一戦一戦に長く時間はかけてられない。出し惜しめば悔いを殘して瞬殺だぞ?」

「勝つにせよ、負けるにせよ、長くはない、か………ならばッ! 「剛武膽(ごうぶふんたん)」ンッ!!」

スキルは基本的に口に出す必要は無い。あるとすれば……自分を鼓舞す(テンションブチ上げ)るためだ。

ゴウブフンタンとやらがどういう効果なのかは知らないが、なくとも全から赤いオーラを噴き出す姿は仁王像か何かと見間違えそうになるほどに堂々としたものだ。

あくまで口に出して発したのがゴルフワンタン?だけで、他にもスキルを重ねがけしているようだ。俺の言葉をバカ正直にけ取って短期決戦を仕掛けるつもりのようだ。

あるいは、もし俺が逃げを打ったらどうするんだこいつ、と思わなくもないが………俺から吹っ掛けて、向こうが乗った以上はそんな腰抜けた戦法を取ったら俺が士道不覚悟(・・・・・)だろうよ。

「かかってこい!」

「おおおおおおっ!!」

裂帛の咆哮と共に突っ込んできたセツゲッカだったが、ヤケというわけではないらしい。本薄よりも先んじて飛んできた斬撃波は牽制、だがほぼ無裝備の半である今の俺にはこれをけることはできない。ダメージもそうだし、直撃によるノックバックは致命的に過ぎる。

故に俺が取れる選択肢は実質的に回避一択。だがそのワンアクションを選べば、フル強化狀態のセツゲッカが程圏に俺を収める、と……なるほど、俺が逃げないという前提だが"詰め"のきとしては理に適っている。

ただ一つだけセツゲッカに誤算があるとするなら……

「消え───」

「悪いが、回避も加速補正るんだなこれが」

多重的円周運《オービット・ムーブメント》。

前後左右から襲い來る攻撃(ボール)に対して円周運で対処するドッジボール的回避スキル。ドッジボールというものは原則地に足ついてやる球技だ、宇宙ドッジボールみたいなゲームもあったがあれはあれでワームホール時差打ちとかメテオ分ボールとかそもそもボールじゃなくてメテオがホーミングで頭狙ってくるとか々カオスだったから參考にならん。

多重的円周運《オービット・ムーブメント》は「行きたい場所」を終點として半オートで円の軌道で回避するスキルだ。そして回避アクションの初はステップをれること、要するにこのスキルは「凄い距離を円形カーブするステップ」なのだ。

そこに加えてこちら、鍛え直しの過程で手にれた畢竟雲耀(ひっきょううんよう)Lv.6というスキルです。

最初の一歩のみ(・・)を超高速にするスキルを組み合わせるとどうなるか。恐らくセツゲッカの認識では……一瞬で目の前から消えた俺が再び出現したように見えるだろう。

なにせこのスキル、レベル100オーバーになってから初めて習得したものである。流石にマジの雲耀(0.00005秒)ではないだろうが……文字通り一歩目の初速(・・)に関しては過剰伝達のそれを上回る。

「保険をかけられるのはここが最終ポイントだぜ……ッ!」

の攻勢を呆気なく回避されたセツゲッカだったが、これはジャンケンではない。初手の結果がどうであろうとそれは勝敗を決するものではなく、また攻撃を止める理由にはなり得ない、故にその巨は再び眼前に現れた敵を討つべく空振った刃を再び振るわんとする。だが悲しきかな、セツゲッカよ……

を振る(おまえ)よりも引き金を引く(おれの)方が速い。

・畢竟雲耀

直訳:つまり雷

初速を加速させるスキルはこれに限らないが、このスキルは習得に一定ラインの條件がある。要約すると雷並に速いレベル130以上が習得の條件を満たす

Q.それって要するに【最大速度】かそれに屆き得るプレイヤーしか覚えられないのでは?

A.そうだが?

一歩目、であればそこからステップしようがジャンプしようがムーンウォークしようが速にするので油斷するとそのまま高速で地面に突っ込むことになるが悪いやつが「ステップすると特定の地點までほぼオートで移してピタッと停止する」スキルと組み合わせた。

・剛武

心肺や封臓に強い負荷をかけることで各種ステータスを一時的に大きく強化するスキル。心拍が太鼓の音にはならない。

強化値は他のスキルと比較しても頭ひとつ抜けているが、効果時間が短くさらに効果が切れた時點で大幅に弱化+スタミナの殘量に関係なくスタミナゲージがゼロになる……要するに十秒ほどけなくなる。

・総勇姿の護符《ヒロイック・フルボディ》

このアクセサリーひとつにつき、無裝備狀態の部位ひとつに裝備の合計分のVITを加算するアクセサリー。例えば頭が無裝備でそれ以外の部位の裝備の合計VITが500だとすると無裝備狀態の頭にVITが500加算される、というもの。

一見すると破格に思えるが基本的にシャンフロは防は効果ありきなのでこれ前提で無裝備にするくらいなら普通に何かしらの効果ついてる防つけた方が……となるので使用者はあまりいない。

一番必要としてるやつはそもそも存在を知らない。

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