《悪魔の証明 R2》第79話 051 シロウ・ハイバラ(3)
それを耳にしたせいか、トゥルーマンの小さな目玉がギロリとエヴラの方へと向く。
元々目つきが悪いので、妙な圧迫が俺のいる場所まで伝わってきた。高圧的な態度。テレビで見せる和な顔とは百八十度違った。
「命? 人聞きの悪い。私たちはシチリアのマフィアではない。それどころか、慈悲深い教義を信仰するものだ。無駄な殺生などするわけがあるまい」
トゥルーマンが言う。
臺詞から察すると何もするつもりはなさそうだが、口調が荒いので脅しのようにも聞こえた。
「あ、ありがとうございます、トゥルーマン様。それでは、もう一度チャンスを頂けるのですね。本當に良かった。これからは、このエヴラ。神命に誓いまして、番組を通し布教を邁進してまいります」
先程までの表を一転させ、エヴラは嬉々とした聲でそう述べた。
トゥルーマンは、ふむ、と唸ったかと思うと、肘掛けによりかかりきょろきょろと周りを見渡した。
「コバヤシ……コバヤシはいるか」
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と、呼びかける。
奧のドアから颯爽と小柄な男が現れた。
特徴的な広いおでこを見れば、それが誰であるかすぐにわかった。最近、導師に格上げされたジャック・ウィルソン・コバヤシだった。
「何か用でしょうか、トゥルーマン様」
と言いながら、トゥルーマンの元へと足早に駆け寄ってくる。
前に到著するなり、膝をついてを屈めた。
「ああ、コバヤシ。おまえにひとつ相談がある。おまえの橫にいるエヴラは、もう一度チャンスがしいそうだ」
トゥルーマンが、臺座の上からそう聲をかける。
「なるほど、チャンスでございますか。トゥルーマン様はどうなさるおつもりで?」
「もちろんやぶさかではない」
「さすがトゥルーマン様、それは慈悲深いことで」
「……となると、コバヤシ。私としては々困ったことになる」
「困ったこととは何でございましょう。私ができることであれば何なりとお申し付けください」
うやうやしくコバヤシは言う。
「『トゥルーマンの泉』の後釜はおまえであると、先日私自が辭令を下したばかりだ。エヴラを許すとなると、不本意ながらその辭令を撤回せねばならん。私としては資本主義の原理に沿って、致命的な失敗をした者より現在功をおさめようとしている者に期待をかけたいと思っているのだが、どうしたものだろうか」
と、トゥルーマンが問いかける。
「僭越ながら、私の意見を述べさせて頂きます」コバヤシは丁寧な口調で斷りをれた。すぐにまた口を開き言う。「エヴラ導師は、民衆のトゥルーマン教団に対する信頼を大きく失墜させたのは間違いありません。これは、我らの教義に対する裏切りと申し上げても過言ではないでしょう」
「ほう」
トゥルーマンの唸る聲が周囲に鳴り響く。
彼がどう思ったのか、その態度からはうかがい知れない。
「そして、このコバヤシ。『トゥルーマンの泉』に関しましては、分不相応な分ではありますが、エヴラ導師と同等以上の実力を発揮できると自負しております」
と、コバヤシはアピールするような臺詞を続ける。
「では、コバヤシ。『トゥルーマンの泉』に関しては、席を譲るつもりはないというのだな。エヴラが好機を失えばそれがおまえに回ってくるのだから、それも當然か。仮面が取れたばかりで未だ薄給の分のおまえとすれば、これは千載一遇のこと。無理もない」
トゥルーマンは仰々しく述べる。
「いえ」
コバヤシがをし屈めながら、曖昧な返事をした。
「――して、それではどうしたものか」目を細めながら、トゥルーマンは言う。「おまえが、『トゥルーマンの泉』を引き継ぐというのであれば、エヴラは不要になる。だが、エヴラが今までしてきた貢獻を考えると、私としては死罪を申し付けるなどという無粋な真似は無論したくない。で、コバヤシ、おまえはどのような罰を與えるのが得策だと考える?」
「トゥルーマン様。お言葉ですが……その慈悲深いお言葉を踏まえますと、エヴラ導師へ罰則を與えるなどということは推奨しかねます。ですので、エヴラ導師には教育をけて頂くことで、今回の件をおさめてはいかがでしょう。これで命を奪うこともなく、罰則を與えることもなく、エヴラ導師の神のみを長させることができます」
コバヤシが訥々とエヴラの今後の処遇を提案する。
彼がその臺詞を終えた瞬間、エヴラはビクっとを揺らした。
教育をける、ということに対しての拒否反応だろう。
だが、教育とはいったい?
スピキオに教えて貰っていない用語だった。宗教団によくありがちな隠語なのだろうか。
「それは妙案だな、コバヤシ。では、エヴラには教育をけて貰うことにしよう。スピキオ、おまえもそれで構わんな」
薄い笑みを浮かべながら、トゥルーマンがスピキオに確認する。
彼の発言によっては、その教育とやらをけなくても良いということなのだろうか。
俺は一瞬そう訝った。
エヴラも同じようなことを思ったのか、何かを期待するかのようにスピキオへと視線を移した。
だが、
「私は一向に構わないと思いますが」
スピキオはトゥルーマンに同調するような言葉を返して、あっさりとエヴラの期待を裏切った。
こいつにそういった類いの願を抱くこと自間違っている。愕然と肩を落とすエヴラの背中を眺めながら俺はそう思った。
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