《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》17
そんなに飲みたいのなら新しくレモネードをもってこさせようかとルベルメルに提案するディナーツだが、それをルベルメルは手で制す。
そしてルベルメルはダリアスからグラスをけ取ろうとしたが、手をらせて床にレモネードをこぼしてしまった。
グラスが割れ、テーブルの下にレモネードが広がる。
「あら、やってしまいました。私ったら、うっかり者の一面を見せちゃいました」
「お、おい。なにやってんだルベルメルさん。ったく、新しいのを持ってくるからよ、グラスはらないでくれよ怪我するぜ」
意外に優しい一面を見せるディナーツにルベルメルは首を橫に振る。
「よいのですよディナーツさん、これだけで十分ですから」
「はあ? どういうことだ?」
ダリアスが立ち上がると、ルベルメルも同時に立ち上がる。
ぽかんとした表で二人を見上げるディナーツ。
「『水気は木気を生じる』」
ルベルメルが小さく言葉を紡ぐ。
同時に、彼がレモネードをこぼした場所を中心に床がうなりを上げる。
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「な、なんだ? 地震か?」
ディナーツとその仲間たちは腰を低くして揺れに耐えるようにして辺りを見回す。
それでも揺れは治まる気配はなく、徐々に激しさを増していく。
そして、床がひび割れ太い幹が地面から姿を現した。
「魔法か! ……ルベルメル、あんた魔法を使ったな!!」
ようやくそこではじめてディナーツは、ルベルメルが何かしらの詠唱をしたことに気づいた。
「はい、こちら私の魔法でございますディナーツさん」
ルベルメルがにこやかに答える間も木の大蛇は倉庫を奔り、ディナーツらを囲い込んでいく。
武を片手に幹を斬ろうとするも弾かれ、まったく切れる様子はない。
「どういうことだ! 俺たちに力を貸すんじゃなかったのか!!」
ルベルメルとダリアスを除き、全ての男たちが大蛇に包み込まれ、抜け出すことがかなわなくなった。
「ええ、お貸ししますとも。しかしそれは計畫の功が目的であって、計畫を練ったディナーツさんたちは別にどうでもよいのです。……だってあなた方、失敗しているんですもの」
先ほどとは打って変わって蔑むような目で彼らを見るルベルメル。
「だから今度はうまくやるって言ってるだろうがっ!」
「お前のその言葉にどれだけの信用があるんだ?」
「なにっ!?」
ダリアスはワインをグラスに注ぎ、ひとくち口に含みそして地面に吐き出した。
そして顔を歪ませた。
「……やはり不味いな、これは。こんな悪なワインをよく飲めたものだ、と腐敗の違いが分からないとみえる。まあ、が腐ったやつにはお似合いの汚水かもしれんがな」
「ダリアス様、それはし聞き捨てなりませんよ。私も飲んでいたんですから」
「お前は味覚が馬鹿になっているだけだろう、気にするな」
「ええ……。それ、フォローになっていませんけど?」
ルベルメルはダリアスが注いだグラスを手に取り、殘ったワインを飲み干す。
首を傾げながら「そんなに不味いですかねえ?」とこぼすが、ダリアスはもうルベルメルの方を向いていない。
「お前の言葉に価値がないと僕は判斷した。そして、そんな価値のない言葉を発するお前の功という言葉、臭すぎて聞くに堪えられん」
「それならば私たちが行に移した方が幾分も功する可能が高いと思いましたので」
「なにを言ってんだ!」
大蛇の中でもがくディナーツだが、一向に抜け出せる気配はない。
「最近になってだが、僕は言葉の重みや価値を大事にしている。他者に言うことを聞かせるのにどれだけの対価が必要か、このに知ったからだ。だから一時は、他者に言うことを聞かせていたお前に心していたんだ」
ダリアスはディナーツを含め、大蛇にきを封じられている全ての者をその目で捉えた。
「だが蓋を開けてみれば、どうしようもない下衆だった」
「あんたらだって俺たちと同じだろうよ! だからこうしてあんたらもここにいる!」
「善人ぶるつもりは頭ない。僕がこれからやることだってお前とさほど変わらないさ。ただ一つ、違いがあるとするならば、他者に與える言葉そこにはっきりとした対価があるということだけだ」
ダリアスは一息ついて、言葉を紡ぐ。
彼の願、から生まれた力。魔。
「限定解除『金言(ノブレスオーダー)』」
宙から細くき通った糸が垂れる。
それはディナーツやその仲間たちのに纏わり、絡みつく。
ある者は剣を振り、ある者は歯で、その糸を切ろうと藻掻くがまるで干渉できない。
重みもも、一切の抵抗をじることなく不気味に糸が四肢に絡みつく。
「倉庫の破はお前たちが責任をもって務めるがいい。今度は失敗することがないよう、火薬が発する瞬間も間近でしっかりその眼で確認しろ」
「お、おい……。何言ってんだ、ダリアス」
ダリアスの言葉と宙から垂れる不気味な糸。ディナーツはそれが、ルベルメルが使用したような単純な魔法ではないことが理解できた。
魔法ではない何か。魔法ではじることがない凄まじい悪寒。ディナーツの背には大量の汗が噴き出ていた。
「これだけで済むのか、案外安いものだなお前たちは。それとも言葉を軽んじているお前たちだからこそ安くつくのか?」
ダリアスはルベルメルに「もう魔法を解除していいぞ」と聲をかけた。
ルベルメルはニコリとして「そうですか」と返すと、ディナーツらを拘束していた太い幹が靜かに朽ちていき消え去っていった。
きがとれるようになったはずも、一切が言うことを効かないディナーツ。
「な、なんだこれ! おい! どうなってんだ!」
ゆっくりと彼らは倉庫の出り口に歩いていく。
目の前にあるテーブルや置を避けることなく、ぶつかり倒しながら前に進んでいく。
テーブルが倒れ、グラスや置が割れても気にせずそれらを踏みつけ歩く。
「冗談だよな、ダリアス! これ、まさか、そんなはずねえよな!」
男たちは各々大聲を上げて抵抗するが、意味はない。
「追加になるが仕方ない。このまま外を歩かれてもすぐにばれてしまうからな」
ダリアスは『金言』によってディナーツらを黙らせることにした。
宙から追加で糸が垂れていき、それらは男たちの口や顎に絡みつき、無理やり口を閉ざした。
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『隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~』
書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売!
コミカライズ進行中!
詳しくは作者マイページから『活報告』をご確認下さい。
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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】
◎アーススターノベル大賞にてコミカライズ大賞と審査員賞を頂きました。6月1日に書籍が発売されました!第二巻も出ます! 「魔力ゼロのお前など辺境に追放だ!」 魔法の使えない公爵家令嬢のユオは家族から『能なし』と疎まれていた。 ある日、彼女は家族から魔物がばっこする辺境の領主として追放される。 到著した貧しい村で彼女が見つけたのは不思議な水のあふれる沼だった。 彼女は持ち前の加熱スキル、<<ヒーター>>を使って沼を溫泉へと変貌させる。 溫泉の奇跡のパワーに気づいた彼女は溫泉リゾートの開発を決意。 すると、世界中から様々な人材が集まってくるのだった。 しかも、彼女のスキルは徐々に成長し、災厄クラスのものだったことが判明していく。 村人や仲間たちは「魔女様、ばんざい!」と崇めるが、主人公は村人の『勘違い』に戸惑いを隠せない。 主人公の行動によって、いつの間にか追い込まれ沒落していく実家、ラインハルト公爵家。 主人公は貧しい領地を世界で一番豊かな獨立國家に変えるために奮闘する。 全ては溫泉の良さを世界に広めるため! ビバ、溫泉! 自分の能力に無自覚な主人公最強のスローライフ領地経営+バトルものです。 戀愛要素なし、ギャグタッチで気軽に読めるようにしています。 ※R15は念のためとなっております。 誤字脫字報告、ありがとうございます! 感想は返信できておりませんが、とても勵みにしています。感謝です。 現在は月曜日・水曜日・土曜日に更新しています! ※書籍化に合わせてタイトルを変更しました。舊タイトル:灼熱の魔女はお熱いのがお好き?魔力ゼロの無能だと追放された公爵令嬢、災厄級の溫めスキルで最強の溫泉領地を経営する~戻ってこいと言われても絶対に嫌です。あれ、気づいたら実家が沒落してた~
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