《悪魔の証明 R2》第85話 056 ミハイル・ラルフ・ラインハルト(1)
「トゥルーマン。コバヤシさんは、今までの罪を後悔して、真実を公衆の面前で告発したいと私に相談してきたの」
晶モニタのきが止まるのを見計らったかのように、畫面の中のレイは言う。
「それでは、『トゥルーマンの泉』というテレビ番組があるから、そこで告発をすればいいわ、と私はアドバイス差し上げたわ。トゥルーマン教団の超能力が噓なのだとしたら、世界中にいる信者の方々にそれをお伝えしなければなりませんものね」
再び口を開いたかと思うと、そう説明した。
「初めまして、レイ・トウジョウ先生。お互い顔を合わしたことはありませんが、どうやらお互いのことはよくわかっているようですな」やれやれとため息をつきながら、トゥルーマンは言葉を返す。「だが、しかし、です。先生。我々の能力が噓であるというのは、聞き捨てなりませんね。コバヤシは彼の心に悪魔がおりてきたせいで。あのような行を取ってしまっただけなのです」
「あら、悪魔のせいでしたの。それは大変ね」
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レイが嫌みな口調で想を述べる。
「ええ、私たちの能力が否定される云われはありません。そうです。みなさんご承知の通りです。ですが、トウジョウ先生の思うようなことを公に申されましては、さすがに我々としても立つ瀬がない。當然、我々にも反論の機會を與えてくれるのでしょうな」
トゥルーマンが訥々とリベンジマッチを提案する。
この申し出に、レイの口がにやりと歪んだ。
それを見た瞬間計畫の大筋が、僕の脳裏に浮かんだ。
結局のところ彼の狙い通りになったということなのだろう。
その計畫を思い返しながら、僕はのでそう言葉を吐いた。
「ええ、もちろんですとも。トゥルーマン。私としても、本當に超能力とやらが存在するのか大変興味があるの。常々この目で実際に見たいと思っていたところよ。それでね、提案というわけではないけれど、とても良い妙案があるの」
と、レイはもったいつけた言い方をする。
どちらでも同じだろ。
レイの臺詞を耳にした僕は、すかさずので突っ込みをれた。
一方揺した様子もなくトゥルーマンは、「ほう、その妙案とはどのようなことですかな」と、尋ねた。
「國立アキハバラステートセンターはご存知かしら」
レイは計畫にあったトゥルーマンとの最終決戦の地である會場名を告げる。
「ええ、もちろんですとも、トウジョウ先生」
余裕をじさせる表を浮かべながら、トゥルーマンは快諾した。
「それでは話が早い。道案をする手間が省けたわね」
「で、そこで何をしたいのですかな?」
「もちろん、私はそこであなたに超能力を証明して貰いたいと思っているの」
「さて、いったいどのような方法で?」
「私が超能力を試験するテストを用意しておくというのはどうかしら。大統領と國會議員の方々も呼んで、トゥルーマン教団の超能力が本であるか確認しましょう。準備は、そこにいる大統領書ミハイル・ラルフ・ラインハルトがすべて行うわ」
二人の會話は矢継ぎ早に進んで言った。
そして、レイが最後の臺詞を終えた瞬間、ふふ、とトゥルーマンの口から笑い聲がれる。
「なるほど、サイキック・チャレンジというわけですな」
と、言う。
「あら、ご存知でしたのね」
レイはわざとらしく述べる。
「よろしい。ネット上で我々の超能力が疑われていることは知っている私としましても、これは大変良い機會です。ついに公に我々の能力が示される時がきたのですからね。おけしない理由はひとつもありません。ですが、といってはなんですが、ひとつだけ條件がございます」
トゥルーマンが含みのある臺詞を吐いた。
「それは何かしら?」
「ええ、條件とは申しましても、たいして難しいものではありません。ここにいるスピキオがテストを失敗すれば、私がサイキック・チャレンジをおけする。というような極簡単な條件です。スピキオが挑戦した時點で能力が示されれば、わざわざ私が出る幕もない。といっても、勝利した暁には布教活くらいはさせて頂きますがね。それでよろしいですかな」
トゥルーマンが條件をつけて問題ないか確認してきた。
「無論、結構よ。當然そう言うだろうと想定していましたから。その條件、軽く飲ませて頂きますわ。あなたはそれで良いのかしら、スピキオさん?」
レイにそう尋ねられたデスマスクは、聲を発さず靜かに頷いた。
薄気味悪く失笑を返してからレイは、トゥルーマンへと顔を向ける。
「それでは、場所は先程述べた通り國立アキハバラステートセンター。日時は、十一月十四日、時間は、そうねえ……ちょっと早いけれど、午前九時でどうかしら」
と、続けて確認した。
「よろしい。一週間後ですな。我々としても、まったく問題ありません」
トゥルーマンは了承の言葉を述べる。
「私の方も問題ありません」
と、スピキオも同意した。
「では、全員問題ないということで。それでは一週間後、またお會いしましょう」
そう言って話を終わらせると、レイは畫面の左端へと手をばす。
瞬時に、晶モニタの畫面が切れた。
そして、レイが暗闇の中に消えるや否や、僕は眉間を中央に寄せた。
「僕に斷りもなくこんな真似を……」
と威勢を吐き、拳を強く握りしめた。
地団駄を踏むような気分を必死に抑え込む。遅まきながら。心に怒りがこみ上げてきたのだ。
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