《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》【短編】俺の憧れの先輩【煙條P】

11月17日にコミックスの2巻が発売されます。よろしくお願い致します。

俺の名前は両國健介。どこにでも居るただの24歳サラリーマンだ。

就職して2年。ようやく仕事にも慣れ、忙しいながらも充実した日々を送っている。

そんな俺は今、會社の休憩スペースで一人、缶コーヒー片手にため息をついている。

「はぁ~」

「どうした両國、ため息なんてついて」

そんな俺に聲を掛けてくれたのは九條円さん。隣の部署の先輩だ。

180を越える長と恵まれたルックス、35という若さにして課長まで上り詰めた能力から男問わず人気がある凄い人だ。

妻子持ちにも関わらず子社員たちからの人気が高く、バレンタインには袋いっぱいのチョコを貰っていたのを覚えている。

俺の會社に居る人なら誰でも知っている、ちょっとしたスターのような人だ。

そんな人に話しかけて貰えるなんて。

しかも直接の部下でもないというのに名前まで覚えていてくれるなんて。

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こういうマメさが人の心を摑んで出世に繋がるんだろうなと思いながら、俺は答える。

「あ、いえ。なんでもないです」

「はは、なんでもないことはないだろう。仕事の悩みか?」

「プライベートのことなので……すみません仕事中に」

「いや。事にもよるがプライベートというのは大事だ。私でよければ相談に乗るがどうかな? もちろん無理にとは言わないが」

マジでプライベートなことなので迷ったが、俺は悩みを打ち明けてみた。

片思いしていた付の子社員と週末にデートすることになったこと。

そして、これまで一度も彼ができたことがないこと。

「なるほど……」

「大學時代から服がダサいって言われてしまうんですよね。そのせいかなかなか彼できなくて」

「服か……」

九條さんはし考えてから渋い聲で言った。

「キミは以前、會社の近くに部屋を借りていると言っていたね」

「は、はい」

「今日の夜、空いているか?」

「え、ええ……定時上がりできそうですけど」

「では7時に駅前で待ち合わせしよう。君は定時で一端上がって、デート用にと考えている服で一度來てくれ。それを見て私がアドバイスする」

「く、九條さんが直々にアドバイスを!?」

それは……凄くラッキーなのではないだろうか?

九條さんは男の俺から見ても凄くカッコいい。

服裝だって高いスーツをばっちり決めている。

デザイン畑の人だし、きっとファッションにも滅茶苦茶詳しいのだろう。

そんな人に服裝をチェックして貰えたら心強い。

「わ、わかりました。是非お願いします」

「うん。こう見えてファッションにはうるさくてね。君の力になれると思うよ」

「ありがたいです! 楽しみっす!」

***

***

***

定時後、速攻で帰宅した俺はデートのためにと用意しておいたとっておきの服を著て駅前に向かった。

すると、九條さんは先に到著していた。

立ち姿もカッコいい人だなぁ。

「お疲れ様です九條さん。今日はよろしくお願いします」

「……うんよろしく」

おや。

九條先輩の顔が引き攣ったぞ。

「一応確認しておくが両國。君はその格好でデートに行こうとしていたのか?」

「は、はい。一応」

「まぁ一つずつ見ていこう。まずそのジャケットだが……」

九條さんは俺の著ている黒皮のジャケットを指差した。

「肩にシルバーのトゲトゲがついているね」

「あ~これがイカつくて買ったんですよね。ほら、俺って細いからナメられること多くて。だからしでも強そうに見えるようにって」

「アウトだね」

「ええ!?」

このジャケットだけは自信があったのにマジか!?

二萬円もしたこのジャケットが!?

「あとサイズも一回り大きいね?」

「あっ、実は通販で買って。だから思ったより大きかったんですよね」

服屋は苦手なので俺はもっぱら通販を利用している。

九條さんはし唸った後にこう言った。

「もちろん普段著として著るのは問題ないよ。ただデートには著ていくべきじゃないと思う」

「な、なるほど……」

「あとはその十字のネックレスだね」

「え? これも!?」

「子供っぽいから外そうか」

「えぇ!?」

とまぁその後も俺の服裝についてあれやこれやと指摘をけた。

なまじビシッと決めている人からの指摘だけあって逆らえない。

「ブツブツ……男は見た目やない……ブツブツ……中や……ブツブツ」

頭のてっぺんからつま先までダメ出しされ続けた俺の心はすっかり折れてしまった。

だが九條さんはそんな俺に追い打ちを掛けるように言った。

「服のダサい男の中を知りたがるが居ると思うかい? 世の中はそんなに甘くないよ」

「ぐああああああ」

「中なんて良いのなんて當たり前だ。大前提だ。その上でみんな見た目の話をしている」

「ぐああああああ」

「起きろ両國。ここが現実だ」

認める。

確かに世の中見た目が良いヤツが得をするように出來ている。

いや、男はまだマシだ。

の子なんて男よりさらに見た目が全ての世界を生きている。

だからこそ男子への見た目のジャッジも厳しくなるのだろう。

「お……俺のようなセンスのないヤツに生きる道はないんだ……死のう」

「いや、死ぬのは早い。君の認識を変えるために厳しいことを言ったが、事デートに限っては服選びは実は簡単なんだ」

「へ?」

「今からそれを証明する。ついてこい」

***

***

***

そう言って九條さんに連れてこられたのはユニクロだった。

九條さんは周囲を見回すと、一のマネキンを指差し言った。白いシャツに紺のジャケットを著たモブみたいなマネキンだった。

「あれと同じのを君に合うサイズで購しよう」

「えぇ……全ユニクロはちょっと。それに地味じゃないですか?」

「地味だが、変ではないだろう?」

変ではない……言われてみれば確かに。

無難ではあるが変ではない。なくとも「ダサい」とは思わない。

「あれ、本當だ。地味だし個ないけど……変ではない」

「うん。それでいいんだ」

俺の言葉に九條さんはにっこり笑った。

は男のファッションについて減點こそすれ、加點は一切しないと言われている。だから服裝に関しては無難でいい。『うわぁ服のセンスヤバ……』と思われなければセーフなんだ」

「な、なるほど……」

は出會った男を【憧れ】【合格】【足きり】の3つのどれかにカテゴライズすると言われている。だからファッションに関しては【足きり】を回避すればそれでいい。後は君の言うように……中で勝負だな」

「は、はい!」

俺は九條さんの言ったとおり、ちゃんと自分に合ったサイズの服をマネキン買いした。

「今日は……ありがとうございました」

「いや、構わないさ。それじゃ、初デート頑張れよ」

「はいっ!」

クールに去って行くその背中を見て、俺もあんな風になりてぇ! と強く思う。

「はぁ、九條さんカッケェな。いつもはバッチリ決めたスーツ姿だけど……あの人のことだ。きっとプライベートで著ている服も滅茶苦茶格好いいんだろうな」

俺は憧れの先輩の姿が見えなくなるまで、ずっとその背に頭を下げていた。

***

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