《悪魔の証明 R2》第91話 059 シロウ・ハイバラ(1)
國立帝都大學超常現象懐疑論研究所第六研究室――薄型の晶テレビを正面にして、橫一列に長テーブルが四つ並べられていた。
中央にひとつテーブルを置く系はサイキック・チャレンジの時のみだから、普段通りの配置にテーブルを戻していると形容した方が良いのかもしれない。
そして、その四つあるテーブルのの中央、右から二番目の席に、シロウ・ハイバラこと俺は憤怒冷めやらぬまま座っていた。
「昨日、そんな冒険譚があったの。すっごーい、そのクレアスって人」
ジゼルの間の抜けた聲が、第六研研究室に鳴り響いた。
同じく中央側の席に陣取っているジゼルのこの臺詞に、俺は強く首を振った。
それと相反するかのように、ふふ、とミリアが嬉しそうに笑う。
ちっと心の中で舌打ちをした。
ミリアのような人が、他の男のことで楽しそうに話をするのは気分の良いことではない。
やはりあの件で何かそいつと、あったのだろうか。
隣にいるジゼルを飛び越して、ミリアの顔をまじまじと俺は見やった。
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レイとミリアを襲った五人は逮捕され、今は全員ラインハルト社私設警察トウキョウにある留置場の中にいる。
ニュースで観たところ、私設警察はコバヤシ襲撃事件と同一犯と見なしてその調査を進めているらしい。
無論、その容疑者であるエヴラたちがトゥルーマン教団のメンバーであったことはなかったことになっている。
メディアは、トゥルーマン教団の自社への影響力を考慮して勝手に自主規制を引いたのだ。
とまあ、そんなことはどうでも良い。
問題は、クレアス・スタンフィールドという名の男だ。五人全員を一気に倒したらしいのだが、いったい何者なのだろう。
先程からミリアにそれとなく訊こうと思っているのだが、研究室にってきた瞬間から、ジゼルと昨日の事件について熱心に話し込んでいて、俺にその機會はまったく與えられなかった。
ダメだ、俺のことなんて眼中にない。
訊いたところで、俺なんかに教えてくれるかどうか――は、そうだ。
隣の席でノートパソコンを開き、いつもの通りキーボードを無駄にカタカタやっているジョン・スミスへ尋ねる。
「おい、ジョン・スミス。そのクレアスって野郎は、ミリアの何なんだ」
高鳴るの鼓を、唾を飲み込むことで抑えた。
「え、彼氏だよ」
と、ジョン・スミスはすぐさま殘酷な真実を口にする。
「マジかよ」
俺の心は一瞬で青ざめた。
「本當」
裏付けるかのように、ジョン・スミスが短く肯定する。
ポリポリとポテトチップスを頬張り始めた。袋をがさごそと探る音が俺の聴覚を薄く刺激する。呆然としたまま、俺はその音を聞いた。
「まさか、そんな無粋なものがこの世に存在するとは――」
と愚癡った瞬間、はっと顔を橫にした。
いつの間にか、ジゼルが訝ったような目で俺の顔をうかがっていたのだ。
この狀況は非常にまずい。
俺が取り繕う前に、「シロウなんて知らない」と、ジゼルは冷たい臺詞を述べて、ぷいっと壁の方へ顔を背けてしまった。
そして、俺がどうにか誤魔化そうと言葉を発しかけた矢先のことだった。
研究室のドアが開いた。
颯爽と現れたのは、もちろん我らが主レイ・トウジョウ。珍しくし早歩きでこちらに向かってきた。
晶テレビを背にしながら、俺たちの前で立ち止まった。
開口一番、「明日は、いよいよトゥルーマンにとどめを刺す日なのだけれど、その前にみんなに伝えておかなければならないことがあるわ」と、告げる。
一瞬のに、その場にいる全員の目が彼の方へと向いた。
「スピキオ・カルタゴス・バルカと裏切り者のことよ。裏切り者の件は後にするとしてまずはスピキオについて話すわ」
このレイの臺詞に大きくどよめく研究室。
裏切り者?
俺は首を捻った。
スピキオの件は置いておくとして、裏切り者がいるとはどういうことなのだろうか。まさか、また俺を裏切り者だと斷定するつもりではあるまい。
それともまだメンバーの中にそんな者がいるというのだろうか。
「ねえ、シロウ。そんな人この中にいないよね」
俺の思考に沿うかのように、ジゼルが小聲で確認してきた。
いや、そんなことはまずありえない。
頷き返しながら、俺はそう確信した。
ジョン・スミスがトゥルーマン寺院のコンピューターに仕掛けた小型無線機と通信し抜き出したデータベースを調査した他ならぬレイ自が、メンバーの中に信者として登録されている者はいないと斷言したのは俺の記憶に新しい。
このメンバー以外に誰か裏切り者がいるということなのだろうか。
経緯を鑑みた俺は、脳でその可能を探ってみた。
だが、関係者でいえば、ミハイル・ラルフ・ラインハルトくらいしか思いつかない。レイのパトロンである彼がそれとは考えにくい。また、大統領セオドア・ワシントンも関係者ではあるが、彼の場合は裏切る以前の問題だ。
となると、他に候補は見當たらない。
これらを踏まえると、やはりメンバーの中に裏切り者がいるということなのだろうか。
俺のそのような考察をよそに、レイはテレビ臺に置かれたリモコンを手に取り、晶テレビのスイッチをつけた。
チャンネルをビデオに変えて、晶テレビに蔵されているハードディスクから前回録畫した『トゥルーマンの泉』を選択する。
晶に番組が映し出されると映像を早送りにし、スピキオの全が映ったところで一時停止ボタンを押した。
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