《悪魔の証明 R2》第92話 057 ミハイル・ラルフ・ラインハルト(2)
「トゥルーマン教団のデータベースから、彼の給與が青年活部の白仮面たちに気が生えたようなものだと知ったの。それでミリアに接させて、こちら側に寢返るようお金を摑ませたのよ。當分コバヤシが逃亡生活を続けても困らないくらいの大金をね。エリシナと私のお金、全財産をはたいてやったわ」
と、続けて言う。
「買収ってわけか……」
レイの臺詞に僕は反応し、そう言葉を返した。
「そうよ。彼を買収したの。コバヤシはトゥルーマン教団にこれ以上関わっても、いつ粛正されるかわからないからって、ふたつ返事で協力を約束したわ」
「でも、結局、コバヤシは逃げ切れなかったじゃないか」
「――コバヤシには、すぐに整形することを勧めておいたのだけれど、高飛びしてから整形する方を選んだみたいね。やはり、演技は上手くとも知能の方は極めて低次元。その証拠が今回の事件。でも、さっきも言った通り、死んでいる可能は極めて低い」
「もしかしたら、死んでいるかもしれないじゃないか」
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「ま、そうだとしたらそれでいいんじゃないかしら。彼も相當悪どいことをしてきたのだから、自業自得だわ。ちなみに前回の『トゥルーマンの泉』だけれど、コバヤシは私のシナリオ通りにいていたの。トゥルーマンの観覧、私たちの出演、あなたの敗北、そして、コバヤシによるトリックの暴。すべてが私の書いたシナリオ通り」
と、レイが訥々と獨白を進める。
「……僕の推理能力を買ってたんじゃないのか?」
目を丸くしながら、僕は尋ねた。
「推理能力? 違うわ。そんなもの買ってるはずないじゃない。だって、この世で一番私の思い通りにいてくれるのが、あなたの能力だもの」
レイが衝撃の臺詞を述べた。
これに僕はごくりと息を飲んだ。
だから、コバヤシのやり方がレイに似ていると思ったのか。
さらりと嫌みを言われたが、よくこのようなことを考えるものだと僕はので素直に賞賛した。
だが、追い打ちをかけるように、「さらにちなみにだけれど、コバヤシの言った読筋というのは噓よ。彼にそんな能力はないわ。私があなたの格からコインを袖に隠すというのを読んで彼にアドバイスしたの。あなたに読筋があると思わせたのは彼の才能だけれど」と、レイは付け加えた。
「……なあ、君が僕の言うことを訊くとは思えないけど――トゥルーマン教団との件は、もう止めにしないか。危険過ぎる」
レイによる再度の嫌みを気にも留めず、僕はそう申し出た。
「慎んで、お斷り申し上げるわ」
と、拒否するレイ。
まあ、そう言うだろう。
「ああ、わかった。そういえば、攜帯では君が危険だと端的に言ったけど、もうし報を教えておくよ。トゥルーマンは警告してくるくらいだから、君への襲撃に関しては乗り気ではないみたいだったけど、スピキオがなにかやりかしそうな雰囲気で僕のことを見ていた。だから、スピキオには、十分気をつけた方がいい。本當は、僕がついていてあげたいところなんだけど――國會議員の方々に、サイキック・チャレンジの參加を打診しなければならないから、當面その暇はなさそうだ。だから、辺警護のために誰かをつけよう」
今までの経緯を鑑みながら、そう提案した。
「いいえ。それもお斷り申し上げるわ。私の推測が正しいとすると、逆にこれは大きなチャンスよ」
と言って、レイはすぐに首を橫に振る。
この臺詞を聞いて、ぷちっと僕の脳のなにかが切れた。
「馬鹿か、君は。スピキオが、どれだけ危険な人か君にはわからないのか。スピキオは超能力者ではないとしても、あのトゥルーマンの右腕なんだぞ」
と、激怒しているなりに懸命な忠告をしたが――これにも、レイは聞く耳を持つ気配を見せなかった。
澄ました顔でマグカップを手に取ると僕から目を切り、容に口をつけてコーヒーをすすり始める。
なんという不遜な態度。さらに頭にきた僕がソファーから立ち上がって、熱弁を振るおうとした時だった。
「違う。スピキオは、本の超能力者」
と、急に隣からの聲が聞こえてきた。
僕はその聲がする方――アリスへと顔をやった。
「アリス、スピキオの家にちょっとだけ住んでいたの。スピキオが家にいるときは、おかしいことなんて起こらないんだけれど、スピキオがいなくなった瞬間不思議な現象が起こり始めるの。誰もいないはずなのに、音がしたり、勝手にドアが開いたりするの」
と、アリス。
「ポルターガイスト現象ね――」
レイがアリスの話を要約した。
「そんなの、アリスに超能力の存在を信じさせるためのトリックに決まっている。でも、アリス。それはただの現象で、スピキオが超能力を使ったというわけではないんじゃないのか?」
僕は諭す意味も込めてそう確認した。
これにアリスはぶるぶると首を橫に振った。
「スピキオは、瞬間移もできるわ。さっきまでそこにいたかと思うと、次の瞬間にすごく遠くのところにいて、誰かと話しているの」
と、言う。
何を言っているんだ、この娘は――
呆れて思わず肩をすくめてしまった。
「アリス。瞬間移なんてできるわけがないだろう。もういい加減、超能力を信じるのは止めなさい」
すかさず、そう注意した。
「だって、本當だもん!」
僕の腕を強く摑んでアリスはそう反論してきた。
だって、本當だもんと言われても――
と首を橫に振り、僕は腕から無理矢理アリスの手を引き離した。
そして、「しかしだな……」と、僕が再び説教を始めようとした矢先のことだった。
「何を言っているの、ミハイル」
僕の言葉を遮り、レイは言う。
「さっきからアリスは、全て真実を述べているわ」
と続けて、僕の予想を裏切るような臺詞を述べた。
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