《悪魔の証明 R2》第94話 062 セオドア・ワシントン(2)
そして、し先へ行った後、私は目を丸くすることになった。
関係者り口から中へると思っていたのだが、ミハイルはそれを素通りして正面玄関へと向かっていった。
「おい、ミハイル。そっちじゃないだろう」
と、聲をかけた。
だが、聞こえていなかったのかミハイルとの距離は広がるばかり。
「やれやれ、まったく豬突猛進な奴だ。どうしようもない。行くぞ」
頭を軽く振ってから、SPたちに呼びかけた。
私はまた歩くスピードを上げる。 足がもつれそうになりながらも、何とかミハイルとの距離はまった。
結局、會場正面の玄関口を抜けたところ――國立アキハバラステートセンター一階ロビー間口付近でミハイルはようやく足を止めた。
そのミハイルの先では、顔なじみの國會議員たちが、大きなドアの前で並びながら雑談している様子が見えた。
ようやくここで私と離れた距離にいることに気がついたのか、ミハイルはこちらへと駆け寄ってくる。
息を切らしている私を連れ立ち間口を通りぬけ、その行列の最後尾へとった。
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そこに並んだと同時に、
「大統領、遅かったですね」
悪びれずに言う。
「遅かったとは? 君が勝手に先に行ったのではないのかね」
眉を顰めながら、言い返した。
「ああ、そうでしたか。大統領であればついてきてくれているかと」
ニコリとしながら、ミハイルはそう答える。
小言のひとつでも食らわしてやろうかと思ったが、日頃のトレーニングがどうとかいうくだらない反論してくるのが目に見えていたので、止めておくことにした。
代わりに、
「関係者り口からることはできなかったのかね。私としては、警備上大統領がこのような列に並ぶのはまずいと思うのだが、君の意見はどうかな。大統領書ミハイル・ラルフ・ラインハルト君」
と、日本國の大統領として當然の質問を投げかけた。
「仕方ありません」
毅然としたじでそう言ってから、ミハイルは首を橫に振る。
大統領書の分際で、忌々しい。さも當然かのように言い放つとは、いったい何を考えておるのだ。
瞬時にそう思った。
ムカムカと腹立たしくなり、
「仕方がないとは?」
語気を強めて尋ねた。
言い終えた後、深く深呼吸をする。怒りの沸點が振り切れそうになるのを、呼吸を整えることによって必死に抑えた。
「確かに、お察しの通り、関係者り口は直接控え室に繋がっており、そこからステージと観覧席に抜けることができます。ですが、控え室はトゥルーマン教団、第六研雙方の拠點となりますので、部外者である我々がそこを通ってしまっては、彼らにとって勝負の公平に欠くことになります。無論、彼らの言い分ですがね」
ミハイルはその理由を説明する。
「どこからっても同じではないのかね。ここから控え室に行くことができないなんて、建築の造り上ありえんだろう」
アキハバラステートセンターはコンドミニアムのような造りをしており、関係者り口が唯一のルートである可能は低いことから、そのように確認した。
「もちろんです、正面玄関から、控え室に行くための通路は、ふたつある非常口と観客席、計三つあります。そして、現在、そこにはトゥルーマン教団の人間が立っています。非常口は言わずもがな、ステージから舞臺袖を通って、控え室に向かう人間がいないか厳重にチェックしているのです」
「しかしだね、ミハイル。大統領が時間まで列に並んでるなんて聞いたことがないぞ」
「……これらは、トゥルーマン教団の希というだけではなく第六研の希でもあります。第三者に勝負を邪魔されては、結果に対する信頼が揺らぎますからね。ゆえに、いかに大統領といえど、正面からって頂かなければなりません」
ミハイルが理路整然としたじで言う。
神経を逆でするようなこの態度を見た私は、ちっ、と舌打ちをした。
いつもの通り融通が利かない男だ。
とはいえミハイルがこう言っている以上、面倒だが、どうやら會場のドアが開く時間を待つしかないようだ。
前方へと目を移した。
ドアの前から続く行列には、國會議員に混じって一般人と思われる人間が多數いた。
不思議に思いミハイルに訊いたところ、観覧席は前部と後部に分かれており、前部は國會議員、後部は一般人が座るとのことだった。
「なぜ、一般人をれるのかね」
私は率直に尋ねた。
このような政府公式といっても良いイベントであれば、すべて関係者で占めた方がより不正がおこなわれにくいはずだ。一般人の中であれば、トゥルーマン教団信徒が紛れ込む可能も高く、何を畫策されたとしてもおかしくはない。
ミハイルは聞こえていなかったのか、前を向いたまま口を開こうとしなかった。
「ミハイル。一般の方々がなぜこの場にいるのだ? お金は第六研持ちだとはいえ、今回は政府のバックアップの元行われるイベントだ。それであれば、政府関係者のみに絞っても問題ないし、元も割れて々と都合が良いのではないか」
彼の肩を叩き、私はもう一度確認した。
ミハイルがこちらを振り向く。
長差がかなりあるので、自然と私を見下ろす形となった。
ミハイルは私の両肩に手を置いてから、頬を緩める。
「國家的謀と思われないためです」
と、もったいつけたわりには至極簡単な回答を返してきた。
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