《悪魔の証明 R2》第95話 060 シロウ・ハイバラ
このレイの述懐には、かなり疑問をじざるを得ない。
すぐにそのような言葉が脳裏を過った。
確かにネット回線に接続していない報の件は、レイの述べた通りそのような運用をしているのだろう。
だが、スピキオがふたりいるという説は、他ならぬレイ自の手で完全に否定されたような気がする。
偽のり済ましが不可能だとするのであれば、ふたりで代わる代わるスピキオを演じるなんてできるはずもない。
「となると、スピキオがふたりいるわけがない。みんなこう思ったはずね」と、レイが俺の心を読んだかのように言う。「けれどね、トゥルーマンがこのことを無論知っていて、スピキオの超能力――トリックを遂行する能力を最大限に生かすため、それを認めていると考えれば、途端にその推定は崩れるはずだわ」
「トゥルーマンが認めている……?」
目をし細めジゼルが、そう聲をらす。
「……ジゼル、まずスピキオの風貌をもう一度よく考えてみて。日常において、仮面やウイッグをつけるという行為は、自分の正を隠したいという理由を除いては、自分ではない誰かになりたいという機からくるものに他ならない。ゆえに、スピキオの素顔を隠した風貌においては、人のれ替わりまで考慮にれるべきだわ。特にスピキオのような高位にいるにも関わらず、わざわざ仮面を被っているという好きにはね。百萬ドル賭けてもいいわ。スピキオはふたりいる」
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一度言葉を切ってから、レイは俺たちの前にスピキオの寫真をかざした。
顔を人差し指で示してから、再び口を開く。
「先程述べた通り、私たちといつもサイキック・チャレンジに興じているスピキオは、この寫真の男よ。年齢三十三歳のスピキオ・カルタゴス・バルカね。それでは、ビデオ映像のスピキオは、いったい誰なのかしら――ジゼル。まずビデオの映像のスピキオと寫真の男を比べてみて、どう思う?」
そうレイに問いかけられたジゼルは、無言のまま小さな顎に手を當てる。
次に寫真へと目を落とした。
「このスピキオさんと寫真のスピキオさんは別人のように思います。だって、背やのはほぼ同じだけれど、首の筋のつき方がほんのし違うから……後、ビデオのスピキオさんの方が、ちょっとだけが大きいと思います」
スピキオの姿をくまなく確認しながら、に抱いたのであろう想らしきものを述べる。
寫真をまじまじと見つめながら、俺も、
「確かに、ジゼルの言う通りだな」
と、賛同の聲を零した。
よく観察しなければわからないが、確かにビデオのスピキオの方が首の筋や板が厚い。
その後、寫真とビデオのスピキオの気になった箇所をひとつひとつチェックしていくと、ビデオの方は、俺が対面したことのあると男と思われる寫真のスピキオとは違う的特徴が次々と判明した。
そして、レイは再び獨白する。
「ジゼル、そうね。一見同じ人にも思えるけれど、私にもそう見えるわ。いえ、そうとしか思えない、とあえて斷定する。トゥルーマン教団に人を勧したり、私たちのようなトゥルーマン教団の超能力に対して懐疑的な態度を取る人間を相手にするのが、三十三歳のスピキオ。トゥルーマンとテレビ出演したり、公に姿を現したりするのが、もうひとりのスピキオ」
「スピキオはこのふたりによって演じられているということですね」
心した吐息をらしながら、ジゼルが合いの手をれた。
「それではなぜわざわざこのようなことをするのかしら、という疑問が當然湧いてくるわね」
と、レイが注釈をれる。
「そうですね、確かにそれは不思議かもです」
ジゼルはそう言うと、普段のぼやけた目を一変させた。
「答えは簡単。懐疑論者の報を集めるためよ。三十三歳のスピキオは懐疑論者に対して最初にエセ超能力者を送り込み、彼らがその懐疑論者と対する様子を観察する」
「勝ち負けなんて二の次。トゥルーマンやスピキオ本人が、懐疑論者と相対するとき、先に懐疑論者の超能力を見破る手法を把握するため……そうすることで事前に対策を立てる。それだけが目的ということですか?」
言葉をひとつひとつ丁寧に切りながら、ジゼルがレイに詳細を確認する。
「そうね、ジゼル。大枠はその通りよ。トリックを暴こうとする懐疑論者にとって、それがどれほど不利な條件になるか、あなたたちに今更語る必要もないわね」
要約して、レイは言葉を返す。
そして、もうひとりのスピキオ。彼は、公のスポークスマンとしての役割は言わずもがな、懐疑論者たちのプライベートな報を集めるという重要な役割を擔っている。さらにこちらに隙があればそれをついて、スキャンダルを仕立て上げるためにもそのスピキオは存在するとその後説明した。
彼の言葉に聞きる俺たち。話が先に進むほど確信レベルが上がっていった。
「マスコミにとっては、エセ超能力者の噓が暴かれるより味しい報だから、その懐疑論者は世間でピエロに祭り上げられて権威が失墜する。権威が失墜するイコール信用がなくなる。つまり、懐疑論者としての終わりよ。そう、私たちが見てきたスピキオにハメられた人々のようにね」
と、補足を続ける。
確かに彼の述べた通りだとすれば、スピキオの手口は簡単だが狡猾かつ効率的のように思える。
「そして、このふたりのスピキオにとって、私たちは次の獲。ネット上で賛同者を集めていた私たちを危険と考えて近づいてきたのよ」
レイは止めかのように言った。
――要は、ひとりで懐疑論者たちと対戦していたと思われていたスピキオが実はふたりいて、そのふたりが協力し合い懐疑論者たちを破滅に導いていったということになるのだろう。
レイのその獨白を聞き終えた俺は、そのように彼の話をまとめ理解することにした。
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