《悪魔の証明 R2》第96話 063 セオドア・ワシントン(1)

「お待たせしました。もうすぐ開きます」

ドアの間近にいた可らしいが、行列に呼びかける。

の手前には長テーブルがあり、トゥルーマン教団青年活部の人間と思しき者たちがその向こう側に立っていた。

彼らはドアが開くと同時に手荷チェックをけるよう観客の導を始めた。

チェックを終えた人々が會場にぞろぞろとっていくと、列はあっという間に小さくなっていく。SPたちを従えて私も進み行く列の後ろに続いた。

そして、もう會場へ足を踏みれようかという時、前をいくミハイルが急に間口の前で立ち止まった。

「ミリア、君は中へらないのかい?」

と、そこにいるに向けて聲をかけた。

サイキック・チャレンジのネット放送時たまに映り込むだったので、すぐに第六研のメンバーであると気がついた。

それでなくても、は肩の部分を出した白いロングティーシャツをにつけ、特徴的な大きなを惜しげもなくたゆませている。トゥルーマン教団青年活部の人間であればそのような格好をするわけがない。

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し悲しそうな表をしながら、ミハイルにミリアと呼ばれたは首を橫に振った。

「ミハイル。今日は先生のサポートはできないの。外で見張りをしなければならないから」

と、言う。

「そうなのか? 何でよりにもよって今日? レイには何も聞いてないけど……」

頷きながらもミハイルが、疑問を呈する。

すぐに解せないといったじの表を見せた。

「うん……そうだね。でも、いいの――ミハイルは気にしないで」

歯切れの悪いじで、ミリアが言葉を返す。

「そうか。何かあったんだったら、相談に乗るよ。レイのことだったら、僕に任せておけよ」

ミハイルはそう言うと、普段見ない心配そうな顔をする。

彼が役に立つとは思えないが、ふたりのやりとりの意味はもちろんよくわからない。

だが、通常であれば彼がサイキック・チャレンジの現場にいることが當然なので、そこに參加できないというからには直前に何かしらトラブルが発生したということなのだろう。

トゥルーマン教団との決戦前にしては、あまり良い報ではない気がした。

私がそんなことを考えている最中、先に進まないといった聲が後方から聞こえてきた。

そちらを見やって見ると、ずっと間口を私たちが占拠していたせいで、館り口間際まで人の渋滯ができていた。

このままだと會場りの邪魔になってしまうので、

「おい、ミハイル。中にるぞ」

と、聲をかけた。

「はい、大統領……いえ、でも……」

ミハイルは返事をしながらも、先に進もうとしない。

彼がこのようになるとは、ミリアが現場にいないことは第六研にとって、それほど異常なことなのだろう。

「ミハイル。大統領を待たせちゃ悪いでしょう。早く行って。そして、観覧席から先生を応援してあげて。先生はミハイルがいなきゃ駄目なんだから」

ミリアが優しく聲をかける。

これを聞いて、ミハイルはようやくき出した。

「ミリア、じゃあね。また後で」

頭を軽く振りながら、別れの挨拶をする。

名殘惜しそうにミリアから目を切って、前へと進み始める。

「今から、決戦が始まるんだ。気を落としている場合じゃないぞ」

間口を通り抜ける際、私はミハイルに聲をかけた。

し肩を落としていたので、彼の背中をポンと叩く。

會場の中にると、街頭にある大型ビジョンと同じ大きさ程の晶モニターが、目に飛び込んできた。

その大型ビジョンは舞臺の幕の前に置かれており、ステージ上からその畫面を直接目にすることはできない位置にあった。

緩い坂道になっている通路をし前に進んだ後、「あれ?」と、私は聲をあげた。

近づいてようやく気がついたのだが、天井から吊るされたその大型ビジョンは、通常考えられない程高いところに位置していた。

もちろん畫面は観覧者にだけ観せたいものがあるときに使われるので、ステージ上の者の目にる必要はない。なので、高い位置にあること自は不思議ではない。

だが、その大型ビジョンは、畫面の角度に傾斜があり、その位置も相まって顔を上げてようやく目の角度と平行になるよう設置されていた。

あそこまで機を置く場所が悪いと、後部座席に座る人間でも首が痛くなってしまうはずだ。

今日は大型ビジョンを使うつもりはないのだろうか。

私は何となくそう訝った。

大型ビジョンから目を戻して、通路の様子をうかがった。SPたちは、すでに両端の通路へと散っていた。

私が陣取るのはステージから見て最前列から三列目の中央通路に程近い左側のブロックにある座席。大統領である私を守るためにしては、現在SPが位置している場所は若干遠い。だが、銃を持ち出されない限りは問題ない距離にはいる。

本來であればSPたちも、私のいる中央の通路や、暴漢がってくる可能がある後部座席の後ろにも人員を配置したかったのだが、第六研、トゥルーマン教団側、雙方からNGが出たため、このような配置となった。

いずれにしても私の周囲にいるのは、既知の人ばかり。SPの間に挾まれた私の座席がある列に他の誰かがってきたら、すぐに彼らが対処する。

このようになった理由は表向き、観覧席をテレビに映すとき異様な印象を視聴者に與えたくないからということだったが、それが彼らの本心かどうかはわからない。

だが、これらを鑑みれば、サイキック・チャレンジ中私のに問題が起こることはないだろう。

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