陛下からの提案は予想のできる範囲ではあった。

宮廷魔師としての仕事はそれほど過酷という訳でもない。

「まずは週3日ほどで働いてはくれないだろうか？　もちろん、給料はきちんと支払いする」

「構いませんよ。私は醫師としても患者さんの力になりたいと思っていますから」

「それは、ありがとう。すごく助かるよ」

私は醫師としてはまだまだ未なところがある。

経験していくことは醫師としては確実にプラスとなる。

「私の直轄する病院だから貴族なども來るが、一般の國民も使える病院だ。院長も良い人だから心配することはないぞ」

今や、サクラの醫療技は國をもしてもしい技となってきている。

癒しの魔法の適があっても醫療の知識が無くて、その力を持て余している者も多い。

それが、サクラの場合は高い醫療技に加えて高度な魔法も使えるときた。

こんな優秀な人材は滅多に居ない。

國王としてはこんな人材をみすみす手放す訳にはいかないということだ。

「では、早速で悪いんだが、明日から行ってもらえるか？　案はライムント辺りにやらせよう」

「分かりました。大丈夫です」

私は大丈夫だが、ライムントは大丈夫なのだろかと思ってきてしまう。

あれでも王國の副騎士団長というそれなりに偉い立場なのだが。

「私からの話は以上だ。給料やシフトについての話は院長から聞いてくれ」

「承知しました。あの、私からも一つよろしいでしょうか？」

「なんだね？　遠慮なく言ってくれたまえ」

陛下は優しい聲で言った。

「王宮図書館の閲覧許可を頂けないでしょうか？　正直、部屋にある本はこのままだとすぐに読み切ってしまいそうで……」

「なんだ、そんなことか。ちょっと待っていなさい」

そいうと、陛下は従者に何やら指示を出した。

そして、その従者は応接間を出ると、しばらくして一枚の紙を手にして戻ってきた。

「陛下、お待たせいたしました」

「うむ。謝する」

そう言うと陛下は、懐から一本のペンを取り出してサラサラと紙に書き込んだ。

「閲覧許可証だ。これで大抵の本は読めるようになるぞ」

「ありがとうございます。大抵のということはこれで読めない本もあるのでしょうか？」

「そうだな。忌とされている魔書なんかはこれだと読めないな」

忌や高位な魔や國益に関するような本は閲覧規制がされているのである。

まあ、それほど高位な魔を必要に迫られることはほとんど無いので、閲覧規制がされていても一般的には問題ない。

「その本を読むにはどうすれば良いんですか？」

「その閲覧許可証とは別に、宮廷魔師長の推薦も必要になる。まあ、サクラくんなら師長も推薦するだろうから、必要になったら言ってくれ」

「分かりました。ありがとうございます」

宮廷魔師長というと、私の直屬の上司にあたる。

私は、初日に軽く挨拶をしたが、それからはバタバタしていて中々お會いする機會が取れていなかった。

師長は氷系統の魔法が得意だったと記憶してる。

ぜひ、ゆっくりお話を聞いてみたいと思ってはいる。

「じゃあ、サクラくんの活躍を期待しているよ」

「ご期待に沿えるように頑張ります。では、私はこれで失禮します」

私は貰った許可証をポケットにれると、応接間を後にした。

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