《【書籍化&コミカライズ】私が大聖ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります(原題『追放された聖は、捨てられた森で訳アリ青年を拾う~』》幕間 ~偽聖~プリシラの最期 *読まなくてもストーリーに影響しません

R15殘描寫苦手な方は退避を

「42 旅立ち」でジュスタンが語ったプリシラの最期です。しかし、彼の聞いた報告とはほんのし違い、真相は……

プリシラは黒の森が嫌だ。

不潔だし、風呂にれないなど考えらない。その上魔は怖くて、臭くて兇暴で醜い。

カレンが頑張ってくれればしは狀況もよくなるのに、彼はおかしくなってしまった。プリシラを見た瞬間「なんであなたなの? どうしてリアじゃないのよ?」と肩をゆさぶられ、カッとなって毆った。するとカレンも負けずに摑みかかってきた。

リアより劣ると言われたのは初めてだった。許せない。とりあえずカレンが摑みかかってきたので、彼に襲われたと報告し、獨房送りにしてやった。

プリシラはついてから三日過ぎると、走を繰り返すようになった。何度逃げても捕まってしまう。それで今度は仲間を探すことにした。

皆、心のどこかでこの不気味な黒の森から逃げたがっている。見つけ出すのは簡単だった。

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兵士にはプリシラを嫌うものもいたが、幸い聖騎士達には好かれた。

何もすべての者に好かれる必要はない。ポイントを抑えればいいと言うのがプリシラの持論だ。それに兵士は強くないので、味方にするには不足、早々に切り捨て聖騎士に狙いを定めた。

プリシラを男にを売るというものもいるが、別段彼は何もしていないつもりだった。弱いふりをして守ってもらい。相手を褒めればいい。そして常に被害者の側に立ち有利に事を運ぶ。それだけだ。皆難しく考えすぎだとプリシラは思った。

どうすれば相手の自尊心をくすぐれるか考えればいい。馬鹿な聖たちはこの地で嘆くばかりで、そんな簡単なことも思い付きはしない。

聖騎士の中から、逃げてもいいというものが出てきた。エイワース、ジョーダン、ローバーの三人だ。

彼らも知っているのだ。これが決して終わることのない戦いだという事を。

結界を張ることができなければ魔はいくらでも溢れ出てくる。しかし、兵力には限界がある。考えるまでもない。これは完全なる負け戦だ。

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負け戦だとしてもプリシラにはそんなことは関係ない。自分以外の誰かがどうにかすればいいだけの事。きっとそのうち、生きているという噂のあるリアを誰かが、連れ戻すだろう。リアがどうにかすればいいのだ。

プリシラは三人の聖騎士達と手に手を取り合って出奔した。

騎士たちはアリエデの兵士の格好をし、プリシラは平民の服に著替え地味で薄汚れたマントを羽織った。汚い服は著たくはないが、走に変裝は必須だと気が付いた。聖服や騎士服では目立つのだ。

それから馬を四頭盜む。幸いプリシラは乗馬も達者だ。薄のろなリアとは違う。

今回は騎士たちがすべての手筈を整えてくれた。プリシラはただ待てばいい。仲間を募って本當に良かった。

いよいよ夜明け前に逃げ出すことになった。魔には夜も晝もないので、闇に紛れやすい時間を選んだ。

旅はかつてないほどに順調だった。夜が明ける頃には大分営舎を離れることに功した。追手が來るかもしれないが、それはたいてい兵士の仕事だ。聖騎士達が返り討ちにしてくれるだろう。

しかし、そう上手く事は運ばなかった。後ろから鬨の聲が上がり、大量の矢が降ってきた。

何事かと馬を駆りながらも目をやると、副団長をはじめとする五人の聖騎士が、十人以上の兵士を引きつれ追いかけてきた。

「信じられん! 走四人にあれほどの大人數をさくなど、魔退治が手薄になるではないか。副団長はいったい何を考えているのだ」

ロバートが驚愕する。

「くそっ、なんてことだ」

「全速力で逃げるぞ!」

聖騎士達は焦りをにじませ口々に言う。

「なぜ、副団長は、あれほどむきになっているの?」

プリシラが、疑問を口にする。プリシラ一人の時はせいぜい兵士が二、三人だ。

「副団長も逃げたいんですよ。だが、ジュスタン団長に弱みを握られていて兵役から逃れられない」

プリシラはエイワースの話を聞いて、走の聖騎士を供に選んだのは失敗だったと悟った。

その直後聖騎士ジョーダンが、落馬した。馬が矢でいられたのだ。馬が足りないにも拘わらず見境なく矢をってくる。

「あいつら俺たちを殺す気だ!」

ロバートがぶ。

「おい、ロバート囮になれよ!」

「は? 何言っているんだ。エイワース」

エイワースがロバートに近づき、馬を剣で切りつける。

「ぐあ!」

馬が暴れた拍子に、ロバートの背に矢が突き刺さる。彼も落馬した。

プリシラは一人で逃げてくれば良かったと後悔する。

しかし、先ほどからプリシラに矢がかすりもしない。きっと彼らは聖騎士だけを殺してプリシラはいつものように捕らえるのだろう。當然だ次期王妃を殺すことなど出來ない。

今回は聖騎士をって失敗した。

殘る聖騎士はエイワース一人、彼が囮になって逃がしてくれないだろうかとプリシラは思う。しかし、彼は

「プリシラ様、右手の森にりましょう」

という。確かに街道に沿うように右側に大きな森が続いている。

「あんな森、馬で走れないわ」

プリシラは聖騎士達のように命まではとられないので気楽なものだった。

「森で馬は捨てるのです。今は矢に當たらないことを考えるのです」

矢で狙われているのは聖騎士だ。

しかし、彼だけが森にって逃亡するとプリシラが囮のようになってしまう。その間彼が逃げおおせたらと思うと悔しい。

「わかったわ」

仕方なくプリシラは騎士について森へり、二人は馬を捨て逃げ出した。

ところが騎士はいつの間にか利き腕に矢をうけていて、けがをしていた。

「あら、やだ。あなたケガをしていたの?」

これでは役に立たない。なんの為の聖騎士か。

止めにハンカチを結んでも點々とが落ちる。捜索隊が、森にってきた。これではすぐに捕まってしまう。

「あなた、そんな怪我をした腕で戦えるの?」

「兵士ならどうにかなるが、騎士は無理です。兎に角逃げましょう」

エイワースは大柄で足が速くずんずんと奧へ進んで行ってしまう。プリシラは駆け足で追いかけた。を置いていくなど、こんな失禮な男は初めてだ。

その時、後方から「おい、の跡があるぞ! こっちだ」とぶ兵士の聲が聞こえてきた案の定、の跡を見つけた。兵士たちが、森を踏み荒らす足音が聞こえてくる。

プリシラはイチかバチか勝負に出た。大柄な彼を囮にしよう。

聖騎士からゆっくりと離れ、突然、駆け出した。

「おい! どこへ行くんだ!」

それに気付き、焦ったエイワースがぶ。

「いたぞ!」

兵士たちが聲を上げる。エイワースが見つかった。彼はプリシラを追うのを諦め逃げ出した。その後を兵士たちが追う。

一方プリシラは茂みに隠れてやり過ごそうとした。

彼はきっと良い囮になってくれるだろう。

息を殺し、兵士たちがバタバタと通り過ぎるのを待つ。予想通り彼らは隠れたプリシラに気付かない。

やがてび聲と剣がぶつかる音がする。エイワース達が戦っている間に、再び街道にでて逃げ出すつもりだった。

しかし、突然森の奧にった兵士達のひめいが聞こえてきた。

「うわー!」

「ノールだ! ノールが出たぞ」

ノール、群れで行する危険な魔だ。プリシラはほくそ笑んだ。馬鹿な奴ら、走兵を追って魔に行き當たるだなんて。

がでてきて、ほっとしたのは初めてだ。これで彼らの意識は魔にむき、プリシラのことなどしばしの間、忘れるだろう。

兵士たちはきっと森の外に馬を繋いでいるはずだ。後はそれを奪って逃げればいい。

もしも見張りがいたら、「魔がそこまで、やって來ている」と怯えて見せれば、すぐに持ち場を離れるだろう。

プリシラは上機嫌で茂みをかき分けた。

今度こそ走は功したのだ。後は実家でを隠そう。

だが、茂みを出たその瞬間、左腕に強い衝撃をじた。次に我慢できないほどの激しい痛みが襲う。慌てて、左腕にれようとする。しかし、れられなくて、空をかく。

唐突に、右足にも衝撃が走り、続く激痛に気を失いそうなった。バランスを崩し立てなくなり、プリシラはそのままひっくり返る。

気付けば、左腕が二の腕から下がなくなっており、右足はがこそげ骨が飛び出していた。目にしている狀況が信じられない。まるで他人事のようだ。

「え? 噓、なんで?」

辺りに臭い匂いが漂い。びちゃびちゃと咀嚼音がする。じわじわと恐ろしい狀況が頭にしみこんでくる。

恐る恐る音のする方へ顔を向けると、ベヒモス一と群れを離れたノールが一頭いた。

「ひっ」

恐怖に引きつる悲鳴を上げた瞬間ノールにを喰いちぎられた。焼けるように痛い。我慢できない。

ごぼごぼとからが溢れる。

(どうして、私なの? 何で。痛いよ! リアなら私を助けられるのよね? あの子、離れた腕をくっつけられるから。でも私の腕、食べられちゃった。やだ、やだ、やだ。腕も足もなくなっちゃうの? 助けて、助けてよ!)

しかし、プリシラのびは喰いちぎられたから、ヒューヒューと音がれるばかり。

そのうちベヒモスとノールがプリシラの腹をめがけて突進してきた。

彼らは揃ってはらわたを喰いちぎりたいのだ。目に殘忍なを湛えたもの達が競いながら腹に突っ込んでくる。

(いやーー!)

からがぼこぼこと迸て、プリシラのいまわの際の斷末魔はどこへも屆かなかった。

すみません。予定変更しました。今日更新予定だった本編48話は明日の更新です。51話で最終となっております。

*くどいかなと、「ざまぁ」割しましたが……ここにれておきます。後で場所、移するかもしれません。

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