《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第1章 1963年 プラスマイナス0 - すべての始まり 2 伊藤博志
男の名前は、伊藤博志というらしい。姓名以外でわかっているのは、正真正銘日本人であることと、自分に関する記憶のほとんどを忘れてしまったということだった。
ところが不思議なことに、政治や経済、歴史などについては驚くくらい覚えている。
「どうしてこんな服裝で歩いていたのか、まるで思い出せません。きっとこの上に、何か羽織っていたはずなんですが……?」
薄手の上下だけで寒くはなかったか? そんな質問への答えに、彼は不安そうな顔でそんなふうに言って返した。
自分はいったいどこから來て、どこへ行こうとしていたのか?
帰る家はいずこにあって、家族や親類は果たして、いるのかいないのか?
何もわからないという男を、その日、智子は家に連れ帰った。もちろん警察へ……とも考えたのだ。しかしどう見ても悪人には見えなかったし、空っぽになった弁當箱を、悲しげに見つめる姿に彼は思わず言ってしまった。
「もしよかったら、このままうちに來ませんか? 大したものはないけど、お腹いっぱいになるくらいなら約束できるし、そんな格好で外にいたら、きっと風邪引いちゃいますよ」
Advertisement
そんな軽はずみな発言に、伊藤はしっかり躊躇を見せた。
「いや、大丈夫だから……」とだけ言って、ベンチから慌てて立ち上がろうとする。
ところがその時、フワッとが斜めになった。何かに押されたようによろけると、そのまま地面にしゃがみ込んでしまうのだ。
智子は急いで駆け寄って、そこで彼のが熱いと知った。さらに額に手を寄せて、
――すごい熱じゃないの!
そんな事実を知ってからは、兎にも角にも智子の獨壇場になる。
伊藤が何を訴えようと聞く耳持たない。彼のを必死に支え、智子は家への道をひたすら歩いた。途中かなりの急坂があって、十歩歩いては休むといったじになるが、その頃には伊藤も逆らうことなく智子の歩調に合わせて歩いた。
そうして家に著いた時、ちょうど彼の気力も限界を迎える。
急にガクンと膝をつき、そのまま倒れてしまうのだった。
それから彼は、三日の間眠り続けた。醫者によると疲労のせいだということで、當然といえば當然なのだが、當初、智子の母親は腰を抜かさんばかりに驚いた。たまたま家にいた智子の父親を呼びつけ、厳しい顔で事の次第を説明するが、父親の方は意外にも、
「今さら、病人を追い出すようなこともできんだろう。いいから、離れに寢かせてあげなさい。それから針谷さんに電話して、往診してもらうよう頼んだらいい」
あっさりそれだけ言って、さっさと元いた書斎に引っ込んでしまう。
「針谷さん」とは、戦前から近所で開業している針谷醫院のことだった。
きっととっさに、未だ現役代議士である祖父の顔でも過ったか? さらに言えば、父、桐島勇蔵本人も、そこそこ名の通った弁護士なのだ。だから病人の一人や二人、面倒見る余裕はすべてにおいて十二分にある。三百坪の敷地に客人用の離れがあって、そこに寢かされた伊藤という存在は、それでも桐島家にとって厄介者のはずだったのだ。
ところが熱も下がり、し歩けるようになってすぐ、そんな立場が変化する。
「父が、伊藤さんとし、話がしたいと言っているんですが……」
智子が離れにやって來て、いくぶん遠慮がちにそう告げた。さらにそんな言葉のし前、
――彼は、いつまでここにいる?
そんな勇蔵からの問いかけに、智子はここぞとばかりに告げたのだった。
「あの人、自分がどこの誰だかもわからないの。だからお願いです。お父さんの力で、伊藤さんを助けてあげてください」
すると一気に不機嫌そうになり、勇蔵は眉間に深々と皺を寄せた。それでも深呼吸一回分くらいで、とりあえず本人から話を聞こうと返事が返る。
この時、桐島勇蔵は実際のところ、伊藤という男をすべてにおいて見下していた。
――どうせ喧嘩でもして、頭を打ちつけるなどしたのだろう……。
そんな想像を決めつけて、さっさと追い出してしまおうくらいに考えていた。
ところがだった。智子が紅茶を淹れて廊下を行くと、なんとも愉快げに笑う勇蔵の聲が聞こえてくる。応接間にると、伊藤を案した時とは別人のようで、
「おい智子! 紅茶なんかじゃなくてビールを持ってこい! あと、確か頂いたハムがあっただろう? あれをすぐに持ってきてくれ!」
などと、上機嫌で言ってきた。
「晝間っから、お酒なんか飲むの? 伊藤さん病み上がりなのに……?」
――伊藤さん、大丈夫ですか?
勇蔵への聲の後、智子は伊藤に向かって口のきだけでそう問いかけた。
それから瓶ビールとグラスを用意して、高級ハムを切り分けたりと応接間と臺所を行ったり來たりだ。そうしてようやく一段落ついて、智子はソファーに腰掛け、それから二人の會話に聞きった。
すると伊藤がまるで別人。どちらかといえば無口な方で、滅多に向こうからは話しかけてこない。なのに今や、息をするのも惜しいくらいに喋り続けて、その容は智子にとってチンプンカンプンなものばかり。
ところが勇蔵はどう見たって前のめりで、何度も頷きながら彼の話に聞きっている。
明治維新とは、本當のところなんだったのか? さらにそこから突き進んでしまった大東亜戦爭の真実――などと、智子が知りもしない話ばかりで、終いには未來の世界勢について語りだす始末だ。
そんな突拍子もない話にも、勇蔵は不思議と賛辭の聲を惜しまなかった。
「君はきっと、歴史學者だったんじゃないか? いや、経済學者の方かもしれん……ただ、どちらにしても、今の日本でそんなことを言葉にすれば、いろいろと面倒な目にも遭っていただろうなあ……」
そんなことを言いながらも、いつまでも戦後を引きずっていてはいけない、そろそろ國民に真実の歴史を知らせるべきだと宣言し、
「今後もできるだけの援助をしていくから、大船に乗った気でいてくれていい……」
勇蔵はとうとう、そんな約束までしてしまうのだった。
それからちょうど一週間後、伊藤は近所のアパートへ引っ越していった。
そこは勇蔵が顧問を務める不産會社の持ちで、引っ越しの日には智子も當然のように駆り出された。それでも最低限の家や食などは用意されていたから、足りない日用品を揃えるくらいで、あっという間に終了となる。
驚くことに、伊藤は英語に加えて中國語、さらにヒンディー語やアラビア語まで堪能だった。
そんな事実を知って、勇蔵は彼のために翻訳の仕事を取りつけてくる。彼の仕事はプロ顔負けで、翻訳を始めて二、三ヶ月もする頃には、フリーの仕事が舞い込むようになっていた。
【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~
【コミックス1巻 好評発売中です!!】 平凡な冒険者ヴォルフは、謎の女に赤子を託される。 赤子を自分の娘にしたヴォルフは、冒険者を引退し、のんびり暮らしていた。 15年後、最強勇者となるまで成長したパパ大好き娘レミニアは、王宮に仕えることに。 離れて暮らす父親を心配した過保護な娘は、こっそりヴォルフを物攻、物防、魔防、敏捷性、自動回復すべてMAXまで高めた無敵の冒険者へと強化する。 そんなこと全く知らないヴォルフは、成り行き上仕方なくドラゴンを殺し、すると大公から士官の話を持ちかけられ、大賢者にすらその力を認められる。 本人たちの意図せぬところで、辺境の平凡な冒険者ヴォルフの名は、徐々に世界へと広まっていくのだった。 ※ おかげさまで日間総合2位! 週間総合3位! ※ 舊題『最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、無敵の冒険者となり伝説を歩む。』
8 138無能力者と神聖欠陥
一度崩壊した世界は生まれ変わり、それから特に成長したのは人類の「脳開発」だった。頚椎にチップが埋め込まれ、脳が発達し、人は超能力を手にするようになり、超能力を扱えるものは「有能」と呼ばれる。しかし、チップを埋め込まれても尚能力を持てない者は多數いた。 「無能」は『石頭』と揶揄され、第二新釜山に住む大學生、ググもまた、『石頭』であった。 ある日、アルバイト先で、一人の奇妙な「有能」の少女と出會ってから、ググの日常はそれまでとは大きく変わってゆく。
8 76最強になって異世界を楽しむ!
現代高校生の近衛渡は、少女を庇って死んでしまった。 その渡の死は女神にとっても想定外だったようで、現実世界へと戻そうとするが、渡は1つの願いを女神へと伝える。 「剣や魔法が使える異世界に行きたい」 その願いを、少女を庇うという勇気ある行動を取った渡への褒美として女神は葉えることにする。 が、チート能力など一切無し、貰ったのは決して壊れないという剣と盾とお金のみ。 さらに渡には、人の輪に入るのが怖いという欠點があり、前途多難な異世界生活が始まる。 基本的に不定期更新です。 失蹤しないように頑張ります。 いいねやコメントを貰えると勵みになります。
8 125クラス召喚されたら魔王になった
ありとあらゆるものでTOPに立っていた子遊戯龍彌 しかし、彼の日常は突然崩れることになる 異世界からの召喚により彼は勇者として召喚される… はずだった。 龍彌は、魔王になってしまった 人間から攻められ続け、ついにキレた龍彌は人間を潰そうとする
8 75神々に育てられた人の子は最強です
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。 その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん 坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。 何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。 その赤ん坊はすくすく育ち地上の學校に行った。 そして十八歳になった時、高校生の修學旅行に行く際異世界に召喚された。 その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無雙するお話です 初めてですので余り期待しないでください。 小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。
8 59都市伝説の魔術師
ゴールデンウィークが明け、六月。『事件』後、家族と仲睦まじく暮らしていた柊木香月とその妹夢実。 彼の本業である學生生活と、『裏の仕事』も順風満帆に進んでいた。 彼の裏の仕事は魔術師だった。それも魔術師として優秀な存在であった。 最強の魔術師にも弱點はある。 「私は……仕方がない。都市伝説に『殺されても』仕方ないのよ……!」 「そうであったとしても、罪を裁かれようとしても……女性が涙を流している。それだけで助ける理由には充分過ぎると思うのだが?」 魔術師柊木香月は都市伝説から彼女を守るべく、取った行動とは――! 「……どうしてお兄ちゃんは毎回のように女の子を助けてくるのかな? もうこれで數えきれない程の回數なのだけれど。お兄ちゃん、慘殺か虐殺、どっちがいい?」 「ちょっと待ってくれ夢実! いつから君はヤンデレになったんだ! 頼むからそのコンパイルキューブを仕舞ってくれ! なあ!? 頼むから!!」 現代に生きる魔術師とその爭いを描く、シリーズ第二弾登場!
8 85