《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第1章 1963年 プラスマイナス0 - すべての始まり 3 再會

3 再會

伊藤博志が智子の前に現れて、間もなく一年が過ぎ行こうとしている。

なのに未だ、彼自にまつわる記憶は一切戻らず、何もわからないままだった。それでも勇蔵のおかげで戸籍、住民票を手にれて、病院の検査でも特に異常は認められない。翻訳の仕事も順調で、今も時々桐島家にやって來ては、勇蔵と小難しい話に花を咲かせていた。

一方智子は高校生活にもずいぶん慣れて、小言を言われない程度の績は一応キープできていた。そして時折、英語の和訳などでつまずいたりすると、迷うことなく伊藤のところに聞きにいく。なじみとも相変わらずだ。彼は補習授業のおかげで無事卒業することができ、ブツブツ言いながらも隣町にある商業高校に通っている。もう弁當を作ってあげるなんてことはなくなったが、菓子パンを買って與えるなどは未だしょっちゅうあることだった。

彼の家は晝定食屋をやっていて、母親は朝早くから晝の仕込みに大忙しだ。

だから彼の弁當にまで手が回らず、かと言ってこづかいで買える菓子パン二つ三つでは足りるはずがない。育ち盛りである彼の胃袋を満たすには、それらはあまりに力不足すぎたのだ。

彼の名は児玉剛志。戦前から続いている稚園で一緒になってから、もうかれこれ十年以上の付き合いだった。

ただ卒園後は、智子が私立に進んだせいで二人はまったく會わなくなった。

ところが小學校三年生の時、智子は一生忘れられない再會をする。

――あれ、あいつ見たことある。

學校帰りに、停車中の車の脇にの子が立っていた。彼を目にして、剛志はすぐに智子なんだと気がついた。最初は、道でも聞かれているのだろうと思っていたのだ。

ところがいきなりドアが開いて、車からびた手が智子を引きずり込もうとする。

この瞬間、剛志にもすぐこの狀況が理解できた。気づけば車に向かって走っていて、無我夢中で車の男につかみかかった。

それからすぐに、男の腕に噛みついてやったと思うのだ。ところがその後どうなったのか、彼は一切覚えていない。目を覚ますと病院に寢かされていて、のあちこちに包帯がぐるぐると巻かれていた。

犯人は剛志の突撃によって、智子をそのままにして車を急発進させたらしい。と同時に力いっぱい剛志を外へ押し出した。彼は回転しながら地面に落下。落ちた拍子に額を打って気を失い、道路脇にある側まで転がっていた。

智子が恐怖に打ち勝ち駆け寄ると、側半分れ込んだまま、剛志はき一つしないのだ。幸いご近所さんが通りかかって、慌てて剛志を救い出してくれる。それからすぐに家に戻って、119番へも電話してくれた。

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