《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第2章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 6 二十年前の約束

6 二十年前の約束

きっとどこかに、防犯カメラが付いている。

門の前に立ったのが何者であれ、その姿を監視できるようになっているはずだ。

剛志は約束の時間ぴったりに呼び鈴を鳴らし、手にしている紙袋の中には、普段なら近寄りもしない高級メロン二つが収まっている。

きっと、そんな姿の剛志が、二日前にあった電話の主だとわかったのだ。呼び鈴を鳴らしてふた呼吸したかどうかで、馬車でも飛び出してきそうに思える門がガタンと鳴った。

驚いて半歩飛び退くと、鋼と木材を組み合わせた左右の門扉が開き始める。そこから目に飛び込んできた景は、映像や寫真でしかお目にかかったことがないものだ。

日本風ではあるのだが、西洋の景観に合わないかといえばそうでもない。まさしく和洋折衷という建で、土地の広さからすればこぢんまりという印象もないではないが、それでもそうそう目にできない豪邸だ。

門から向かって右手には、林だった頃を思い出させる木々が植えられている。その反対側は手れの行き屆いたしい庭と、家庭菜園には広すぎる畑が広がっていた。

そしてその間を、舗裝された道が一直線に玄関扉まで続いている。

あの時、あいつは確かに、剛志に向けてこう言ったのだ。

――彼のために必ず……必ずだぞ……お願いだ……。

それが伊藤の最期の言葉で、彼とはもちろん、桐島智子以外の何者でもない。

だからここからが本當の勝負と腹に據え、剛志は重厚溢れる玄関扉の前に立った。

そこで今一度、自分の立ち姿を確認する。金持ちがすべて気難しいとは限らないが、とにかくしでも悪い印象を與えたくなかった。だからベーシックな紺のスーツに、最近では滅多に著ることのない白のワイシャツを選んで著ていた。

さらに途中散髪屋にも寄って、長めだった髪のもばっさり切った。あとは相手に不信を抱かれないよう、言葉と態度に気をつけるだけだ。

そんな思いでいっぱいだった剛志の前に、男はあまりになく現れる。

「どうぞ、鍵は開いてますから……」

そんなのが不意に聞こえて、剛志は慌てて聲のした方に目を向けた。

すると扉の上部からビデオカメラがこちらを向いて、その脇にスピーカーらしきものが付いている。彼は言われるまま取っ手をつかみ、一度は手前に引きかけた。ところがまるでかない。

――開いてないのか?

そう思いながら、何気なく取っ手を押したのだ。するとガチャっと音がして、ほんのしだけ扉が開いた。

――へえ、向きなんだ……。

珍しいな、と思いながら、彼はゆっくり扉を押し開いていった。

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