《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第2章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 6 二十年前の約束(2)

6 二十年前の約束(2)

――どこからどこまでが、玄関なんだよ?

ちょっとしたホテルのロビーのような空間があり、中は思った以上に西洋風の造りに見えた。

左奧の壁伝いに二階へ続く階段があって、きっと名畫であろう絵畫がずらっと上まで飾られている。そこを、一人の男が下りてきた。まるでこっちには目を向けず、階段から一直線に剛志の方に近づいてくる。

となればきっと、彼が屋敷の主人、巖倉氏に違いない。そう思って軽く頭を下げたのだ。

ところがなんの反応もない。顔を見ようともしないまま、剛志の前を通り過ぎる瞬間「こちらへどうぞ……」とだけ聲にした。

もしもこの時、右手が前方に差し出されていなければ、その言葉の意味を知るのにしばらく時間がかかったかもしれない。

ただとにかく、構えていた剛志は呆気に取られ、出かかっていた挨拶の言葉を呑み込んだ。そして慌てて巖倉氏の後を追ったのだった。

その行き先は広々としたリビングで、巖倉氏に促されるままソファーに座る。手みやげを差し出し、突然の來訪をここぞとばかり丁寧に詫びた。

そうしていよいよ、本題を切り出そうとした時だ。

まるで降って湧いたように尿意が一気に押し寄せる。

天気もよく、二月とは思えないくらいのポカポカ気なのに、それはあまりに強烈なるものだった。さらに何より、このままの狀態では落ち著いて話ができそうもない。

「すみません、先にお手洗いをお借りしても、よろしいでしょうか?」

だから思い切ってそう聲にしたのだ。

その途端、能面のようだった巖倉氏の表が一気に変わった。

と同時に、下向き加減の顔がビクンとき、視線が左から右手にスッと流れる。

それは、〝驚いた〟というのともし違う……ハッとして、我に返ったとでもいうようにき、それでもあっという間に元の表に戻ってしまった。

――いきなりトイレを貸せってのは、いくらなんでもまずかったかな……?

そんな後悔をめ、五十畳はあるリビングから教えてもらったトイレに急いだ。

やはりトイレもかなり広く、小用便が三つもある。ちょうどから上辺りが大きな窓になっていて、最初剛志はそんなことにも気づかないまま立ったのだ。

ところがホッと一息ついたところで、剛志の視線にあるものが飛び込んだ。

その瞬間、あまりの驚きに小便していることさえ忘れ去る。思わず顔を窓に近づけ、その途端下半にガツンと衝撃。と同時に、便から響いていた音がスッと消えた。

いかん! 彼は起きている事実をすぐに悟って、慌てて便に向けてを心掛ける。

小水を出し切り、それから飛び散ったところをトイレットペーパーで丁寧に拭き取った。そうしてから今一度、小便のないところから窓の外を覗き込む。

すると、目の前に広がる庭園の中、やはりその中央辺りにそれはあるのだ。

――どうして、こんなところに?

そう考えて、頭の中で位置関係を思い描いた。

しかし見ている先が、東か西かさえわからない。ただ唯一あれが、すぐそこにあることだけは確かだった。

――あの〝巖〟が、いったいなんだっていうんだよ……。

そんな思いで見つめた大きな巖が、二十年経って再び視線の先に現れた。直徑が三メートルは優にあり、地上から三十センチくらいの高さで削り取られたようになっている。

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