《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第3章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 〜 3 止まっていた時(4)

3 止まっていた時(4)

二人してタクシーに乗り込んですぐ、智子が辺りの変化に気づくのだ。一度、驚くような顔で剛志を見つめ、その後はただただ車窓に目を向け続ける。その時、彼の顔は、

――どうして? いったい何が起きたの?

と、まさしく剛志に告げていた。

考えてみれば、當たり前の話だろう。二十年という年月をあまりに軽く考えすぎた。

二十年かかって変貌していったすべてが、たった數時間で姿を変えたも同然なのだ。

剛志が気づかない些細な変化も、あの頃のままの智子ならわかってしまう。家があったりなかったり、もしかしたらそこに、親しい友人が住んでいたかもしれない。

そもそもこの辺の道は、今やほとんどコンクリートかアスファルトで覆われている。

ところが智子のいた時代なら、土剝き出しの道ばかり。

砂利の敷き詰められたところも多かったように思う。

――そりゃあ、驚くわな……。

これが真っ晝間であったなら、彼の驚きはさらなるものになっていたはずだ。丘からは遠くに高島屋のが見えて、そこら中にあった畑や田んぼは住宅地へと変わっている。そんな家々かられる明かりを、智子は何を思って見ていたろうか?

そうしてあっという間に、タクシーは最初の目的地に到著するのだ。

スッとドアが開いて、剛志は表に出ようと構えた。ところが智子がかない。ウインドウに顔を向け、き一つしないままだ。だから剛志はポツリと言った。

「降りなくて、いいの?」

何も知っちゃいなかったのだ。だからこそ、こんなお気楽が聲にできた。

ちゃんと考えれば當たり前だし、三十六にもなって、けないくらいどうにかしている。

剛志の聲で、智子がいきなりこっちを向いた。その顔はクシャクシャで、涙が頬を伝って幾つも筋を作っている。

思えばだ、十六歳のがよくぞここまで、堪えていたと考えるべきだろう。

にしてみれば、あの火事から一日と経ってはいない。なのに林は忽然と消え失せ、街並みもおそらく彼の記憶とは大違いだ。

あの頃、電信柱の明かりはない。あったとしても、確か剝き出しの白熱燈だ。當然明るさ自ぜんぜん違うし、こんな変化だって智子にとっては驚きのはずだ。

そしてさらには、タクシーが停車したところに、あったはずの家が、ない。

見事なまでに消え失せて、その代わりに見たこともないようなマンションだ。建あちこちで照明が輝き、正面に見えるエントランスは晝間のように明るいのだ。

そんな景を目の前にして、智子は濡れた頰を両手で拭い、そして剛志を見據えて言ったのだった。

「これっていったい……なんなんですか?」

微かに震える聲が響いて、剛志はそこでようやく腹を決めた。

「あの、すみません……このまま、城の駅に向かってもらえますか?」

智子の顔に目を向けたまま、彼はタクシー運転手へそう告げる。それから運転手には聞こえないよう注意して、智子の耳元で聲にした。

「今は、あれからずいぶん経ってしまった未來なんだ。君はきっと、眠らされたか何かして、知らないうちにこの時代に來てしまったんだよ。どうしてなのかはわからないけど、あの部屋みたいなところを調べれば、きっと元のところに戻れると思う。だから、安心してほしい。明日には絶対、あなたを元の時代に戻してあげるから……」

囁くように、それでも必死に笑みを浮かべてそう告げる。

智子の震える聲を聞いた時、彼はとっさに思ったのだ。

――現実を、見せてしまおう。

どう説明しようが噓っぽくはなるだろう。

ならばまず、今という世界を見せてしまう、きっとそんなのが一番で、そうして浮かんできたのが、駅前にできたばかりのコンビニエンスストアだった。

あそこなら、新聞だって置いてあるし、今という時代を知るには絶好の場所だ。

あの時代、剛志が高校生だった頃、コンビニエンスなんて言葉さえ知らなかった。まして二十四時間営業なんて店、剛志はお目にかかったこともない。そんなふうに思って、自宅とは正反対にある城學園前駅に向かうと決めた。

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