《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》27話「次の街へ」
顔見知りに挨拶を終えると、そのままラレスタの街をあとにする。
こちらとしてはもうし滯在する予定だったが、それがし早まった形となってしまった。ミサーナ、マリアン……たちよさらばだ。
後ろ髪を引かれる思いでラレスタを出発し、そのまま強化の魔法を使って急ぎ足で次の街へ向けて疾走する。
街を出る際に門番の兵士に話を聞いたところ、ラレスタの街から馬車で六日ほどの距離の場所にラガンフィード領の領都レンダークという都市があるらしい。
ラレスタよりもさらに発展した場所で、ラガンフィード領最大の都市でもある。
當然そこにはラガンフィードの領地を治める領主ラガンフィード子爵も在中しているようだが、できればお近づきになりたくはないので目立つ行は控えよう。
「よし、しだけ急ぐか」
いくら強化の魔法を使えるとはいえ、馬車で六日徒歩にして十日の距離をゆっくりと進んでいては、用意した旅の資が底をついてしまう。
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尤も、仮に徒歩でゆっくりと進んだとしても飲み水は水魔法で確保できるし、野営自も土魔法で土壁を作りモンスターや盜賊の襲撃を防ぐことだってできる。
用意した保存食がなくなったら鑑定を使って食用可能な果や茸を採取し、火魔法で調理だってできる。ちなみに塩はラレスタの街で手済みだ。
で二時間ほど走り続けた俺は、ちょうどいい木を見つけたのでそこで一時休憩を取ることにする。
ちなみに走行中は街道からある程度離れた場所を走っているので、他の人間に俺の姿を見られる心配はない。
「野に咲く~花のように~、ふんふんふん、ふんふんふんふーん。野に咲く~花のように~」
一昔前に流行った“なんだな”という口癖が特徴的な放浪畫家をモデルにしたドラマのオープニング曲を口ずさみながら、保存食を口にする。
あまり味しいものではないが、満足な店もない旅の最中なので食べられるだけありがたいことだと妥協する。いずれ調理道を手にれて料理をするのもありかもな。
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それからも小まめに休憩をれつつ、異世界の風景を楽しみながら進んでいると、日が沈んで空が暗くなってきた。
さすがに徒歩十日掛かる道のりを一日で踏破できるはずもなく、その日は野宿をすることにする。
先ほど説明した土魔法で四方に土壁を出し、その天井を小さなの開いた土壁で塞ぐと誰にも侵不可の安全地帯が完する。
その中心にラレスタの街で購した簡易式のテントを張って、その日はそこで一夜を過ごした。
通常であれば寢ずの番で見張りをするのだろうが、壁の中にってこられるやつはいないので、當然ぐっすりと眠らせてもらいました。
翌日、土壁やらなんやらを片付け朝食の保存食と近くに自生していた果を腹の中に収め、強化を発していざ出発!
周囲の景を置き去りに進んでいると、前方に數臺の荷馬車の一行が見えた。
どうやらモンスターの襲撃をけているようだったが、俺が助けるまでもなく護衛の冒険者たちによって討伐されていた。テンプレ回避功。
そのまま街道を目印に進み続けること十二時間、ようやくレンダークの城壁が目に飛び込んでくる。
距離的にはまだ數キロほどあるが、その距離からでもわかるほど都市を守る城壁は大きく壯大だった。
もうそろそろ疾走モードを止めておく頃合いだと判斷し、前回同様誰もいない場所からしれっと徒歩で歩いていく。
三十分ほど歩いて行き、レンダークの門までたどり著くことができたところまではよかったが、領都と言うだけあって都市にろうとする人間の行列が凄まじかった。
とりあえず、並ばないとれないので大人しく行列の最後尾に並ぶ。
セキュリティがしっかりしているのか一人一人のチェック時間が長かった。通常は二、三分程度で済むのだが、今回に至っては五分以上も掛かっている。
「次」
そんなこんなで行列に並び続けること約一時間半が経過し、ようやく自分の番が回ってきた。
病院などの待ち時間って異様に長く待たされるが、その時の記憶が蘇りちょっと嫌な気分になった。
対応してくれている兵士は、ラレスタの街とほとんど変わらなかったがこちらを値踏みするように観察する眼はこちらの兵士の方が強かった。
分証の提示を求められたため、冒険者ギルドで手にれたギルドカードを提示する。
「駆け出し冒険者か、この街に來た目的は?」
「出稼ぎと観だ」
「観だと……その歳でか?」
「今まで一所にいたのでな、いろんな場所を見て回ってみようというただの好奇心だ」
「……そうか。では最後にこの水晶にれてくれ」
いくつかの質問に答えたあと、設置されていた水晶にれるよう指示される。何の気なしに手を置くと水晶が青くり出す。
おそらく、犯罪歴の有無を調べるための水晶なのだろうが、詳細を聞いたところで答えてくれなさそうだったので、質問せずにスルーしておく。
「もういいぞ。これで手続きは終了だ」
手続きが完了すると、そっけなくそう告げ門の方へと兵士が促す。一日に何百人という數を見なければならないから仕方のないこととはいえ、しばかり寂しい気もする。
かといってその場に留まり世間話をしたところで、返って兵士の迷になりかねないため、兵士の指示し素直に従ってレンダークの街にった。
街の様相はラレスタと比べるとさすがに領都というだけあって規模も大きいのは當然だが、見たじ木造の建はなく石造りの建が多い気がする。
大通り自も人が六、七人が両手を広げて一列に並んでも余裕があるほど広く、これなら荷馬車が二臺橫並びで並走しても問題なさそうだ。
人の流れに逆らうことなく道なりに進んでいくと、十字路の大きな差點が見えてくる。
そこには広場があって中央には大きな噴水があり、目印としてとても目立っている。待ち合わせに便利な場所だ。
「冒険者ギルドはどっちだ?」
街の風景を楽しみながら歩いていたのはいいが、一つ困ったことが起こっている。
それは今いる広場は十字路となっているため、どちらの方角に冒険者ギルドがあるのかわからないということだ。
土地勘のある街の住人であるならいざ知らず、今の俺はこの街にやってきたばかりのお上りさんというやつなのだ。
とりあえず、広場で店を開いている人間がいるので、腹を満たすついでに冒険者ギルドの場所を聞いてみた。
「ギルド名ならこの十字路を真っすぐ行った先にあるよ。剣と盾の看板が目印だからすぐわかると思うよ」
「助かった、ありがとう」
店主に禮を言いつつ、店で購した何かのを串に刺して焼いた串を口の中に頬張りながら、冒険者ギルドを目指す。
しばらく大通りを歩いていると、それらしい建が見えてくる。それはラレスタで見たギルドの建よりも大きかった。
「さて、またテンプレにならなきゃいいけどな」
フラグが経ちそうなことを呟きながら冒険者ギルドへとっていく。中は広々としており、正面には付カウンターが並んでいる。
正面向かって左側には酒場と食事処を兼任する食堂があり、夕飯時とあって多くの冒険者が食事と酒を楽しんでいる。
右側には演習場と解場につながる扉があり、加えて二階に上がるための大きな階段もある。
ギルドの裝を心したように眺めていたその時、突如として怒號が響き渡った。
「なんだとてめぇ! もういっぺん言ってみろ!!」
「ああ、何度でも言ってやらぁ。てめぇじゃあ荷が重いって言ったんだ。雑魚は雑魚らしく大人しくしとけやボケェ!!」
「上等だ! 表出ろゴルァ!!」
「おう、やってやんよ!」
冒険者ギルドに來て早々テンプレかと思ったが、どうやらめているのは別の冒険者でその矛先は俺に向いていない。一瞬俺かと思って焦ったぜ。
ラボラスと戦た時のように野次馬の冒険者十數人が、當事者の冒険者と共に演習場へとっていくのをこっそり眺めながら、俺は靜かになったギルドを歩き出し付カウンターへと向かった。
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