《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》31話「狩りの途中で出會ったモンスター」

冒険者ギルドでの出來事があった翌日、俺は懲りもせずギルドへと赴いた。

懲りもせずというと語弊があるかもしれんが、目的はボールドに依頼しているダッシュボアの解分の報酬をけ取りにきたのだ。

さすがに數度目ともなると勝手知ったるなんとやらというもので、とりあえずニコルの姿を探す。

すぐに目的の人は見つけたのだが、し興味深い相手と話していたのでそのまま気配を殺しながら聞き耳を立てて會話を聞く。

「ミリアン先輩、いい加減にしてください!」

「だってーしょうがないじゃない。人間なんだものー」

「そんな取って付けたような言い訳をしてないで、仕事してください。仕事!」

ニコルが丁寧な口調ながらも苛立ちを含んだ聲を上げる相手は、この冒険者ギルドにやってきて最初に出會ったギルド職員であるミリアンだった。

生真面目な格である雙子の妹マリアンとは打って変わり、大らかでぽわぽわとした格を持つ彼がどこかで聞いたような臺詞を宣う。

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一方でラレスタの冒険者ギルドにいるニコルとは違い、こちらのニコルは真面目な格をしており、ちょうどラレスタのマリアンとニコルとは正反対の立ち位置にいるようだ。

「これ以上我が儘を言うようでしたら……また教育が必要なようですね」

「ひっ、ちょ、ちょっとニコルちゃん。あれはもう勘弁してちょうだい!」

「なら仕事をしてください仕事を!」

「わ、わかったわよー。すればいいんでしょすれば」

どうやらこちらもラレスタの時と同じくニコルの“教育”が怖いらしく、ぶすっとした表を浮かべながらもミリアンが仕事をし始める。

二人のり行きを見屆けた俺は、そのままニコルのいる付カウンターに行き、昨日の報酬をけ取る手続きを頼んだ。

「それではこちらが、ダッシュボア五匹の解分の小銀貨二枚と大銅貨五枚になります」

し多い気がするが」

「他の冒険者が狩ってくるダッシュボアよりも狀態がよかったようで、通常よりも高く買い取らせてもらいました」

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なるほど、おそらくだが俺が解したダッシュボアの素材もそうなのだろう。三匹分の素材で討伐依頼二回分と同じ金額というのはおかしいと思っていたが、どうやらそういうことらしい。

それから次にける依頼を相談していると、ミリアンが絡んできた。しかしながらニコルの教育という名のほっぺ抓りが聞いたのかすぐに仕事に戻っていった。

「それでローランドさん、折りって相談なんですがよろしいでしょうか?」

「ん? なんだ」

「実は昨日ローランドさんから買い取ったダッシュボアの素材なのですが、すぐに商業ギルドに卸した結果瞬く間に売れてしまいまして、他の買い手の方から同じものはないのかという問い合わせが何件か來ているようなのです」

「なるほど。だから今日もダッシュボアを狩ってきてできれば俺が解したものがいいと?」

「……はい、申し訳ないのですがお願いできますでしょうか?」

「別に構わないが、その分手間賃がしい」

「もちろん解の報酬も付け加えさせてもらいます」

「ならば問題ない」

ニコルとの話も終わり、ダッシュボアの買取金を魔法鞄にしまうと、俺はさっそくダッシュボアの生息域へと出掛ける。

一瞬とはいかないまでも、ものの數分という短時間でダッシュボアがいる草原へとやってきた俺は、さっそく狩りを開始する。

今日はし早めの時間帯だったため、昨日よりも冒険者の數がなく、その分ダッシュボアの遭遇率も高くなっている気がする。

「ゴボゴボゴボゴボ……」

「さて、これで九匹目だな。そろそろ解作業を始めたいところだが……うん? あれは?」

狩りも順調に進みあと一匹狩ってからと考えていたが、ここで事態は急変する。

草原の奧に進み過ぎていた俺は、草原と森の境目の場所にいたのだが、森の方からいつものダッシュボアとは異なるモンスターが現れた。

見た目はダッシュボアのそれなのだが、その格はダッシュボアとは比べにならず、かつて戦ったレッサーグリズリーよりも大きい。

目算で三メートルはあるのではないだろうか、その巨を揺らしながら堂々とした歩みでこちらに向かってくる。

明らかな上位種の出現にとりあえず鑑定を使い、現れたモンスターの正を探ろうとしたのだが……。

「これは、こんなやつもいたのか」

鑑定した結果が意外だったために思わず口に出して呟いてしまった。鑑定が教えてくれたやつの能力がこれだ。

【名前】:ワイルドダッシュボア

【年齢】:十二歳

別】:

【種族】:ボア種

【職業】:なし(Dランク)

力:1400

魔力:300

筋力:C+

耐久力:C

素早さ:C−

用さ:D

神力:C+

抵抗力:C-

幸運:D-

【スキル】:突進Lv3、咆哮Lv2、統率Lv2、強化Lv1

強さ自は俺よりも劣っているが、全的に一段階か二段階程度の差でしかないため油斷はだ。

力は俺とほぼ互角だし、スキルの突進もレベル3とやや高めだ。てか、こいつ今生の俺の年齢と同い年じゃないか。

強化も低いが所持しているし、統率はおそらくダッシュボアの群れを統率する時に使用するスキルだろう。

……とまあ、いろいろとワイルドダッシュボアというモンスターについて考察を進めていたのだが、ここにきて致命的な問題が発生していた。その問題とは――。

「まずい、魔法鞄の容量が一杯でこいつを持って帰れないぞ」

そう、ここにきてまさかの魔法鞄の容量に空きがなくなってしまったのだ。

魔法鞄はラレスタの街で購したのだが、その時手にれた魔法鞄の容量は五十キロが限界と店員は話していた。

実際に前回ダッシュボアを持って帰ろうとしたのだが、容量が足りず結局れれるだけれて帰ってきたのだ。

今回すでに限界容量一杯になってしまっており、しでも軽くするためこれから解作業にろうとしていた矢先の出來事であったため、もうこれ以上の余裕はなかたのである。

「ダッシュボアの上位個っぽいから個人的には狩っておきたいけど、魔法鞄がそれを許してくれん。くっ、仕方がない。今回は見逃してやろう」

「ブモォオオオオ」

などと言ったところで、モンスターに通じるわけもなく痺れを切らしたワイルドダッシュボアがこちらに向かって突進してきていた。

さすがにダッシュボアの上位種だけあってそのきは俊敏で突進にも威力があるのが見て取れた。

しかしながら、いくら早さや力が増したところで豬の突進であることに変わりなく、向かってくる方向とタイミングさえわかっていれば難なく避けることができた。

何度かワイルドダッシュボアの突進を躱しながら、この狀況から逃げようと取れる選択肢を模索した結果、最適解を導き出す。

「馬鹿正直に突っ込んでくるやつにはやっぱこれでしょ! くらえ【ピットホール】」

「ブモォオオ!?」

土魔法のピットホールでワイルドダッシュボアの進行方向に落としを掘る。ただし、足止め程度にするための深さは淺めにしておく。

である俺にしか意識が向いていないやつが、急に現れたに反応できるはずもなく、無様に落としに嵌ってしまう。

「よし、今のうちに逃げるぞ。じゃあな豚野郎。今度會ったときは必ずその味そうなをいただきにくるからな。あばよ!!」

そう捨て臺詞を吐きながら強化を使ってその場から瞬く間に移する。

ワイルドダッシュボアが落としから抜け出した時には、すでに獲である俺の姿は遙か彼方で、簡単に逃げることに功したのであった。

それから安全圏まで逃げた俺は、手持ちのダッシュボア九匹すべてを解し、手にったし遅めの晝食を食べたあと、前回と同じように休憩を挾みその後街へと帰還した。

手にれたダッシュボアの素材九匹分を清算してもらうと、討伐依頼の功報酬に解費用、そして素材の買い取り金を合計した金額の小銀貨七枚と大銅貨五枚が手にった。締めて七千五百円也。

「次の目標は新しい魔法鞄を買うための資金集めに決定だな!」

そんなことをつぶやきながら俺は宿に戻り、その日は眠りに就いた。

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