目の前で人が死んだ。知らないやつだ。

襲われているの子を助ける。きっと、アニメや漫畫みたいにかっこよく助けられる。そんなことを思っていた。でも現実は違った。

俺は今、きっと怒っているのだろう、だって今俺は、盜賊を殺したいと思っているから。

刀の柄に手をかけ、森を出る。靜かに１歩ずつ、確実に盜賊に近づいていく。

１歩　２歩　３歩、俺の靴に小石がぶつかった。ようやく盜賊の一人が俺に気づいた。

「なんだてめぇ」

盜賊はこちらに振り返り、腰にあるダガーを構えた。

それでも俺は足を止めず、確実に近づいていく。

５歩目あたりだろうか、ついに盜賊の一人が近づいてきた。もちろんダガーをもって、俺を殺す気で。だんだん俺と盜賊との間の距離はなくなっていく。

盜賊はダガーを振りかぶった。その時點で盜賊は俺の刀が屆く範囲にっていた。右手で持っている刀を抜刀する。居合切りと呼ばれるものだ。刀は盜賊の首めがけて進み、何の抵抗もなく首を切り落とした。

ごとん

そんな音と共に首は地面に落ち、は俺とすれ違い、後ろで倒れた。俺は今日初めて人の命を奪った。だが不思議と心は穏やかだった。

思った以上に簡単に切れてしまった。この刀を振るったのは初めてだ。それでもやはりしっくりくる。黒い刀には盜賊のが流れていた。

俺が盜賊の一人を殺した。そんな景を見た盜賊たちは、驚きはするもののすぐに意識を切り替えた。俺が敵だと。

そして盜賊の一人がまた俺に向かってきた。仲間の靜止も聞かず。

「こいつっ！」

そしてそいつはダガーを振りかぶった。そしてそれを見たもうひとりの盜賊が後に続く。

右手で持った刀で盜賊の武を狙った。

ダガーは刀とぶつかると、ぶつけたはずのダガーの方が砕けてしまった。

武を無くして驚いている盜賊を、刀を左上から右下へと振り下ろし命を奪った。

いつの間にか俺の橫に回り込んでいたもう一人の盜賊は、ためらいもなくダガーを振り下ろした。

俺はそれをバックステップで回避した。

そしてを後ろに倒しながら、刀を上に切り上げた。刀は盜賊の首を捉え、また首を切り落とした。

「これで、あと二人」

俺は狀況を確認するため、周りを見渡した。盜賊が二人、そしての子とその近くに護衛が一人。地面には盜賊のが三つ、護衛のが二つあった。

「おいそこの、護え……」

俺がの子の橫にいる護衛に話しかけようとしたとき、俺の橫を一本の矢が通り過ぎた。振り返ると、その矢は護衛の頭に刺さっていた。その護衛だったものは、力なく地面に倒れた。

盜賊の方へ向き直ると盜賊のが弓を構えていた。そいつはもう一本矢をつがえると、それをの子へと放った。俺はすぐにの前まで移、その矢を刀で切った。

どうやらの子はおびえているようだ。俺は安心させるために聲をかけた。

「ちょっと待ってろ、あいつらを先に片づけるから」

の子は俺の言葉を聞くと、靜かにうなずいた。

俺は矢を放った、を睨む。するとは後ずさった。

「くそっなんなんだよ！おまえは！！」

するともう一人のダガーを持った男が、ダガーを構えこちらに向かって走ってくる。その表は怒りだった。俺はし前に進むと男のダガーを持つ手を切り落とした。

「ぎゃぁぁああああ」

そんなび聲をあげるが、俺は次に足を切り落とした。もちろん両足だ。そして俺はいま思っていることをそのまま男に伝えた。

「お前に怒る資格なんてないんだよ」

俺はそういって男の心臓を貫いた。そして最後の目標へと目を向ける。

今の狀況を理解したは、地面に座り込み足を引き摺りながら後退する。

「い、いやだ、死にたくないっ」

俺はそんな言葉を聞いても何とも思わない、そして確実にとの距離を詰める。

「お前はそういった人を何人殺した?、助けた奴なんているか?　いないだろ。だから俺もお前を助けない」

「わ、私を助けてくれたら、このを好きにしていいから、男ならうれしいだろ?」

俺はそんな言葉を聞いて、吐き気がした。

「お前みたいに汚れたなんかいらねーよ、諦めろ」

俺の言葉を聞き、はを起こし、俺から距離を取るために走った。だが次の瞬間、のから一本の黒い刀が生えていた。そう、後ろから心臓を貫いたのだ。は聲も上げることなく、その場に倒れた。

《スキル：解離魂の停止を確認》

エルの聲が聞こえ、我に返る。

俺は刀を振り、刀についたを払い鞘へと仕舞う。

周りを見渡すと道には倒れている人が８人と武が數本。それと一人のの子。

の子を見ると目が合った。そしてし震えていた。

「君、大丈夫?」

俺の聲を聴くとの子は座り込んでしまった、張が解けたのだろう。殺されかけたのだ仕方ない。

俺はそっとの子に手を差し出した。