《妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~》114:欠けるモノ
俺は無我夢中で、拳を振り回していた。それでは當たらないと分かっているのに、に任せ、目の前にいる相手に向かっていった。
「だめだよ~。もうちょっと真面目にやってよね」
雛乃はユウの攻撃を軽々かわし、返しに薙刀を振るう。振るわれた薙刀はユウの足に當たるが、ユウがに纏っているのは災禍の鎧と呼ばれた防だ。ヨリヒメが編み出し、黒鬼と呼ばれる所以になったものだ。
「って、かたーい。その黒いのすっごくいんだけど」
“ちょっとユウちゃんもっとしっかりして”
薙刀をはじかれた、雛乃はユウから距離を取り、巖を飛ばしてくる。それを拳で砕く。黒鬼の鎧をまとっている狀態では、能力も向上している。そう簡単にダメージはけたりしない。
「なんだか、足りない。足りないよ。ユウ君は強くないと、私を守ってくれるぐらいに、じゃないと、じゃないと私の中でのユウ君の存在の意義がなくなっちゃう。それはだめ、ダメだよ。このままじゃほんとに……殺しちゃうよ?」
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雛乃の虛ろな目がしっかりとユウを捉える。そな薙刀の切っ先はユウの元へ向けられている。その目は絶、悲しみを背負っており、來たいなんては一切見えない。
そして、次の瞬間、雛乃が俺の懐へとってくる。それと同時に俺の視界には丸いっかが二つ見えた。
金屬同士がぶつかるような音が二回、俺には雛乃の攻撃は飛んでこず、薙刀によって弾かれたチャクラムは俺の後方へと戻っていく。
『斬撃痕』
さらに、目の前には見覚えのある二人の男が出てくる。俺のことを嫌い、剣馬鹿とまで呼んだ。クラスメイト、三人。柊柑奈・宮方総司とえーっと勇者1が……
「おい、剣馬鹿。ここは俺等に任せて、他のとこ回れ」
「は? お前ら何言って……」
「いいから、こっちは私たちにもやらなきゃいけないもんがあるのよ。それに、こっちはSSランカーが加わったから大丈夫だけど……」
柑奈の話の途中で、頭の中にアイリスの聲が鳴かれ込んでくる。
(ユウさん。こっちはもう大丈夫です、迷宮都市の方へ向かってください)
「なんだ、ユウ君いなくなるの」
いつの間にか橫に來ていた雛乃が、普通に話しかけてくる。だが、警戒は解いておらず、いきなりの攻撃にも対処できるようにしている。
「まぁいいや、こっちの目的も果たせたし、さぁあっちはどうかな。ふふふっ」
さっきまで、橫にいたはずの雛乃は、笑い聲を殘し、いつの間にか消えていた。
「おい、ひなっ。くそっ」
勇者一は地面に剣を突き立てて言った。後ろから柑奈が駆けつけ、勇者一をめていた。
勇者は四人だった。日本でも固まっていていた四人だ。そこから一人が、探していた一人が、目の前で消えたんだ。失くしたものは違えど、ユウは何かしらの親近を覚えていた。
災禍の鎧を解き、そこで異変に気付く。
「鎧が解けたのに、角が……」
ユウの頭には小さくなった角が殘った。頭をって確かめるが、確実に殘っている。
(ヨリヒメどういうことだ?)
“ユウちゃんはもう人じゃない。それの現れだよ。ちなみにこういう現象を侵食っていうよ。珍しい事例だけど”
人をやめたとは言ったが、前までは見た目も人種とそう変わってはいなかった。
だが、ユウの中では自分が人をやめ、今更こんな現象が出てきてもはっきり言ってどうでもよかった。
今ユウの中にあるは悲しみと憎しみ、悔しさと後悔だ。
「くそっ、ちっ」
飛び込んでくる魔を魔法で焼き、王都の方へ向けて走りだす。
「お、おい剣馬鹿」
「あらら、行っちゃったね」
その場に殘された三人の勇者たちは、ユウの背中を見て、どこか悲しくなった。そんなを払うため、周りの魔を再び狩り始めた。
ユウは、ヒサメを呼び、王都で合流することにした。ノワールも、王都に向かっているはずだし、合流後はそのまま、迷宮都市に向かう予定だ。
走りながら、周りの魔を蹴散らし、時々、冒険者たちを手助けしていく。
“ユウちゃん大丈夫?”
(ん? 何がだ?)
“いや、大丈夫そうならいいんだ?”
ユウは頭の中で、疑問符を浮かべながら、意思疎通で、アイリス、レジーナ、ラースと連絡を取り、迷宮都市に向かうことを伝えた。
(あぁ、こっちは大丈夫だ行ってくれ、ユウ殿)
(後で一杯やろーや)
ラースの野郎は俺が未年だということを理解しているのだろうか。まぁ飲めないことは無いし、こっちの世界での人とかはわからないから別にいいけど。
(気が向いたらな)
ユウは王都に著き、ノワールとヒサメに合流した。
たどり著いたとき、ヒサメはムラクモを両腕で抱きしめ、その瞳から涙を流していた。
ユウはそれに寄り添う形で、後ろからヒサメを抱きしめた。
しばらくし、ヒサメが落ち著いたのを確認して、ユウとヒサメはノワールへ乗り、迷宮都市を目指した。
「ムラクモは俺が持つ。今は、いや、これからも離れたくないから」
ユウは折れた刀を鞘へと仕舞い、いつもと同じように、腰のベルトに差した。
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