《TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―》アイドルVS実質アイドル
私、皆原祐里香は生まれて初めて同い年のライバルを見つけた。
「――勝負よ千佳ッ! どちらが主役の座に相応しいか、どちらがこの學校のアイドルに相応しいか、勝負よ!」
現役の子役である私が素人に負ける訳が無い。そんなことは言われなくても分かっている。
でもきっとこの子は違う・・。素人、なんて括りで語ってはいけない人種だと私は考えた。
――一般人はファンクラブなんて持たない。というか私でさえまだ千人も會員がいないのに!
「問答無用! 勝負は次の劇の主役オーディションよ!」
千佳に隠れてリサーチした報から、押しに弱いことは分かっている。
九重先生……通稱、柚梨ちゃんからは私たちの勝負を全面的にバックアップしてくれるという話も貰った。
準備は萬端っ! 勝負は一発目が肝心って聞くし、ドドンとかましてやるわ!
「手を洗って・・・・・待ってなさい!」
「……」
あら? 私の決め臺詞にポカンとしているわ。
もしかして言葉が難しすぎたのかしら?
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「……えっと、首を洗って、かな?」
「――っ!!」
いやぁ!? もしかして私、間違えてた!?
カッコよく宣言をしたのに赤っ恥を掻いた私は、乾いた笑みで空気を濁す千佳から顔を背けた。
うぅ、恥ずかしい……やっぱりアドリブは苦手よ……。
「……はぁ、分かったよ。でもやるからには私も全力でいくからね?」
「え、ええ! 私も本気でやらせてもらうわ!」
よし、何も無かったかのような空気に出來たわ!
誰がなんと言おうと何も無かったのよ!
「――それで祐里香。學校のクラブだからと言って、私に報告せず決めてしまったの?」
「ごめんなさい」
放課後、車で迎えに來てくれたマネージャーの篠田さんと合流して、今日の出來事を話していました。
そして主役を決める勝負をすることを伝えたら、厳しい口調で窘たしなめられました。
「えっと、やっぱり仕事もあるから、難しいですか?」
「そうね。仕事とクラブだったら斷然仕事の方が優先よ。祐里香はプロなんだから」
「そう、ですよね……」
あれだけ啖呵を切っておいて、こっちの事で勝負が流れるとか……踏んだり蹴ったりすぎるわよ。
明日千佳に謝らないと……。
「ねぇ、篠田さん。どうにか――」
「でも千佳ちゃんなら仕方が無いわね。よし、祐里香と千佳ちゃんのドキュメンタリーを企畫出來ないか社長に直談判よ!」
「出來ないかと聞こうと思ったけど、うん。心配して無駄だったわ」
千佳との勝負よりも、篠田さんを病院に連れていく方が先かしら?
早く企畫を通さないととアクセルを全開にしようとする篠田さんを必死に止めて、速度超過で捕まることだけは阻止したわ……。
「祐里香ちゃん! 千佳ちゃんと演技勝負で子役の座を懸けるって本當っ!?」
「どんな尾ひれが付いた噂よ!? この年で役者人生を懸けたくないわよ!」
事務所に著いてゆっくりレッスンルームに行くはずが、篠田さんに急かされて二人で社長室に行った後、レッスン前だというのに神的な疲労でぐったりしていた私。
そんな私の元へと飛び込んできたのは、千佳の被害者その2。
先輩優でアイドルでもある、ことなでした。
「ことな、どこから聞いたの? まだ企畫段階、というか學園の許可を取れてないのに」
「篠田さんが事務所にいるファンクラブメンバーたちに伝えてくれたの!」
「篠田さぁん!? さっきのプロなんだからって言葉の信頼がドンドン失われてるんだけど!?」
駄目だ……千佳は人を駄目にしてしまう……。
「わた、わたたたたたたたた」
「ことな!? 壊れたゲームみたいになってる!?」
「私もっ、私も參加させてくださいお願いします」
「土下座っ!?」
止める暇もなく、とても綺麗な土下座をすることなにプライドは微塵も無く。
千佳、貴そろそろ國で取り締まった方がいいと思うわ……。
「ちょっと止めてよ。ことな!」
「お願いしますお願いします、大事に取ってきた一生のお願いここで使ってもいいから、壽命半分くらい持って行ってもいいから!」
「私は悪魔か何かなの!? あと、一生のお願いは大事に取っておきなさい!」
私だってまだ使ってないんだから。
「とりあえず土下座を止めて! 他のレッスン生がヤバそうな目で見てるから!」
「お願いします。あ、足舐めたほうがいいですか?」
「戻ってきて、ことなぁ!! 私が貴をめているって勘違いされるから、戻ってきてぇ!!」
そうして私を取り巻く環境は千佳という自稱一般人による謎の変化を遂げながら、世界を巻き込む壯大なものへと変わっていくのだった。
尚、ことなの土下座を見ていたレッスン生のの子がSMという新たな扉を開けることになるのだが、それはまた別の話。
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