《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》ダンジョン講習會(3)

すると山自衛は、俺たちの後方に一瞬視線を向けた。

講者の中で、探索者に興味がない俺は後ろをさりげなく確認するが、育館から外へと通じる扉と映寫機を扱っている自衛がいるだけで何か変わった様子はないように思える。

「……ふむ」

「パンフレットの後ろから3ページ目をご覧ください」

自衛は俺が前へと視線を戻したタイミングで語り掛けてきた。

どうやら、彼に目を付けられてしまったようだが……、別に構わないだろう。

41歳の中年が自衛隊にれるわけでもないし、探索者にも興味はないからな。

今日は、あくまで佐々木の付き合いで來ただけに過ぎない。

接點が無いのだから最低限の節度ある対応だけしていればいいと考えていると山岸自衛の後ろのスクリーンに畫像が映し出される。

――なるほど……、どうやらスクリーンの切り替えができるかどうかを目で確認していたというところか?

し詮索しすぎていたようだな。

「ダンジョン探索者の主な収源はモンスターコアと呼ばれるになります」

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「モンスターコア?」

佐々木が疑問の聲を呈するが、山自衛はそんな言葉に頷きながらスクリーンの文字列に指示棒を向ける。

「モンスターコアというのは、ダンジョンで徘徊しているモンスターをかしている核――、人間で表すところの心臓部といったです。これはモンスターを倒すことで手にれることができます」

「あの! いくらで買い取るとかは書いていませんが……」

「モンスターコアは、下層のモンスターほど良質なを出すようになります」

スクリーンが切り替わる。

スクリーンにはいくつもの合いの違う石が映し出されていた。

「一番品質が悪いものが、石炭のような合いをしており1個100円となっています」

その言葉に佐々木が「安っ!」と、思わず聲に出していた。

ちなみに俺も心の中で安いと思っていた。

そして、佐々木と俺が思っていたことは講者も全員が思っていたようで誰もが困した表を見せている。

そのうち講習參加者同士で「探索者って稼げるって聞いたのに!」などと勝手に話し始めた。

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ざわめく育館――。

その様子を見ながら俺は溜息をつく。

プレゼンの仕方がなっていないと。

講者の皆さん! 落ち著いてください!」

「山岸先輩、聞きました? モンスターコアが100円らしいっすよ」

一部だけを見て全を想像するのはいいが、話は最後まで聞かなければ意味は為さない。

だが、問題は自衛にもある。

プロジェクターを使って説明をするなら、料金表の一覧も作っておくべきだろうに。

木だけを見せて森を見せないから問題になるのだ。

「佐々木、山さんは異なる石を指揮棒で指示していた。つまり、そういうことだ」

「どういうことですか?」

「――お前は馬鹿なのか? 別の合いの石があるんだから買い取り価格が異なるって言っているんだ。そもそも簡単に稼げる仕事なんて世の中には存在しない。そんな甘言に乗る奴がいるから詐欺が無くならないんだ」

シーンと靜まり返る育館。

全員の視線が俺に向けられていた。

自衛も固まってしまっている。

――仕方ない……、パンフレットは読み終えたことだし、それと早く帰りたいし助け船を出してやるか。

し発言をよろしいでしょうか?」

「は、はい」

「山2等陸尉殿は――」

「山で結構です」

「わかりました。山さん、モンスターコアの買い取り価格の一覧表などがあればプロジェクターを通してスクリーンに投影していただけませんでしょうか? 口頭で説明するよりも視覚的に訴えた方が分かりやすいと思うので――」

俺の言葉に、山自衛は頷く。

すぐにプロジェクターを通して大きなスクリーンにモンスターコアの買い取り一覧が表示される。

黒 100円

 500円

 1000円

 2000円

黃緑 5000円

緑 10000円

青 50000円

……なるほど……、相環といったところか。

ただ、問題はダンジョンや魔といったのは、元々は空想上の伽噺だったはず。

それが地球の理學の影響をけているとは考えにくい。

――いや、すでに俺たちの世界に存在しているのだから空想上のモノではないな。

「買い取り価格は、このようになっています」

「探索初心者は一日でいくらくらい稼げるんですか!」

どうやら、価格一覧が提示されたことで講者にも考えるという余力が生まれたようだ。

それにしても――、どうやら當初から思っていた問題。

2等陸尉は軍曹よりも階級が低いという可能だが、信憑を帯びてきたな。

――何故なら、俺の知っている軍曹なら「黙れ! ゴミ共! 貴様らは黙って俺の言うことだけを聞いておけ!」と、新人教育を軽やかに練の教師だからだ。

それができないということは、まだまだ階級も低い新人といったところなのだろう。

まあ、一般の企業で20代後半なら々チームリーダや係長補佐くらいだから仕方ないな。

俺は、山自衛の話を聞きながらも手に持っているパンフレットへ視線を落とす。

――いくつかの規約はある。

ダンジョンでの殺人・犯罪は日本國憲法にて裁かれるということ。

これは當たり前と言える。

……あとは――。

一つ、刃を持ち歩くことを許されるのは人のみだということ。

一つ、探索者登録をする際、神病院での神鑑定をけていること。探索者となった後、月に一回神鑑定をけること。

一つ、持ち歩く刃に関しては最寄りの陸上自衛隊駐屯地とダンジョン探索者協會での登録が必要。

一つ、前科のある者は探索者になることはできない。

一つ、外國籍の者は探索者になることができない。また、日本國籍を有していても日本語での意思疎通ができない者も不可とする。

一つ、ダンジョンで死亡した場合は自己責任とする。

一つ、ダンジョンで手にれたに関しては一度、ダンジョン探索者協會へ全てを提出し審査をけること。

一つ、ダンジョンで手にれたは、ダンジョン探索者協會のオークションで販売すること。無斷で流通させた場合は、30年以下の懲役もしくは固または5億円以下の罰金刑に処する。

――5億円って……、またとんでもない価格だな。

それよりも外國籍だと探索者になれないというのは聞いたことがない。

意図的に排除しているのか? それとも、ダンジョンが出現してから5年の間に々あったのか?

「それでは説明は以上となります。このあと探索者になることを希される方は、今回の講習のためにカウンセラーの先生が來ていますので申し出てください」

どうやら、山2等陸尉も説明が終わったようだな。

まぁ、パンフレットの中に書かれているのは、探索者になるにあたっての注意事項くらいなものだったからな。

あとはインターネットのサイトで確認してくださいと書いてあった。

きっと、あとで講者たちは確認するのだろう。

人間というのは一度に全てを教えようとしても、一度で覚えられるほど賢くはできていない。

ノコモココールセンターでも、攜帯電話の作の仕方や規約などを一ヵ月かけて講習會で教えるのは一度に教えてもに付かずに忘れてしまうからだ。

パンフレットにネットを見て確認してくださいと書いてあるのも理に適っていると言える。

「山岸先輩」

「――どうした?」

「俺、カウンセリングをけてきてもいいですか?」

「別に構わないが……」

「山岸先輩はどうしますか?」

「俺は帰る」

全員の視線が俺に向けられる。

だから俺は目立つのはあまり好きじゃないんだが……。

「山岸先輩も冒険者は稼げる職業だって聞いていましたよね? 青いモンスターコアを1個手にれるだけで5萬円ですよ! 5萬円! 一日1個で5萬円ということは……」

「30日出勤して月額150萬と考えているのか?」

「はい!」

「そうか! 頑張れよ!」

俺は佐々木の肩に手を置くとパイプ椅子から立ち上がる。

「先輩、待っていてくれるんじゃ?」

「待つわけがないだろ。講習會は終わった。つまり、俺が付き合うことはもうないってことだ」

「ええー」

「ええー、じゃない。がんばれよ」

俺は社辭令を言い育館から出るとトイレを探す。

寒い育館の中でずっと座っていたのだから、そろそろトイレに行きたい。

問題はトイレの場所が分からないことだな。

「失禮、山岸さんでよろしかったでしょうか?」

「はい」

後ろから話しかけてきたのは山2等陸尉。

「先ほどは、ありがとうございました」

「いえ、お気になさらず」

ずいぶんと低姿勢な人だ。

普通なら、いくら助け船だったとしても司會ならば教える側の人間に一瞬とは言え會話の主導を握られたら嫌悪を抱く。

「山岸さんは、探索者にはなられないのですか?」

「今日は後輩がどうしても付いてきてほしいと言っていたので、私自は特に興味はありません」

「そうなのですか?」

「はい。それに危険が付きまとう仕事は私には向いていないと思いますので」

後輩や親しい中ならともかく相手は今日出會ったばかりの人間。

俺という言葉を使うのは好ましくはない。

これも社會人としてのTPOというやつだ。

「山岸さんなら優秀な探索者になられると思いましたので――」

どうして俺をそこまで買ってくれているのか分からないが、正直なところを言わせてもらえばさっさと帰りたい。

何が悲しくて寒空の中、男二人で會話をしないといけないのか。

「それは買い被りというモノです。それでは失禮いたします」

俺は無理やり、會話を切って自衛隊駐屯地を後にし帰路についた。

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