《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》ワークデスク。

「山2尉」

「金村3佐、どうかなさいましたか?」

「――いや、し気になって追いかけてきたのだ」

「そうですか……」

「何か気になったことでも――、あの男にあったのか?」

「そうですね……、講習會の時に私はわざと講習會に來ていた者たちの解決能力を試す試みをしました」

「例のモンスターコアの買い取りの件だな?」

「はい」

同意し頷きながらも山2尉の視線は、ゲートを潛りぬけて去っていく山岸の背中に向けられている。

「あの山岸という男は、なくとも問題解決能力は非常に高いです。職業として何をしていたのかは分かりませんが、ある程度は裁量を與えられたうえで相手が何を求めているのか、そしてどうすれば解決できるのかという判斷を瞬時に下せるだけの訓練をけていると思います」

「ふむ……、つまり探索者向きというわけか」

「はい。探索者はダンジョンという室空間において狀況に応じて最適な行・最良の答えを瞬時に導きださなくてはいけません。それができなければダンジョンでは死ぬことになりますから」

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「そうだな……、それで追いかけて彼をダンジョン探索者にスカウトしようとしたのか?」

「私としては、陸上自衛隊ダンジョン攻略班にしかったのですが……」

「ふむ――」

「ダンジョン攻略期日まで時間が限られている現狀、しでも優秀な人材は必要です。それにレベルが上がれば年齢によるの劣化は問題なくなります」

「そうだな……」

「それなら、竹杉に掛け合ってみるか?」

「幕僚長に!?」

しい人材なら、それなりにく必要があるだろう?」

後輩の佐々木にわれて下志津駐屯地のダンジョン講習會に參加してから3週間が経過。

現在、無職となった俺は就活真っ最中であった。

「それにしても、ハローワークの求人は給料が安いよな……」

ハローワークのパソコンに表示される賃金は、最低賃金で月額を構したのか? と、突っ込みをれたくなるばかりだ。

時たま、デスクワークかコールセンターの仕事でいいものがあって窓口に持っていっても窓口擔當員に呼ばれたあと対面した時に「この求人は専用ですね!」と言われるのだ。

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俺が「求人票にのみの募集とは書いていませんが?」と尋ねると、決まって「男雇用均等法のせいで書類上は男募集にしておかないと駄目なんですよ」と説明してくる。

――だが、俺としては書類上に最初からのみとか男のみとか書いておけ! と、言いたくなる。

わざわざプリントして整理番號をもらって窓口に行って「この求人はのみです」と言われるとイラッとくるのだ。

まったく面上ばかり気にして効率を求めないから日本の役所というのは時間がかかって仕方ない。

苛立ちを抑えながら椅子に座って順番を待っていると攜帯電話が振する。

スマートフォンを取り出すと新著のメールが10件と表示されている。

10件中5件が、お祈りメールであった。

貴殿のますますのご活躍をーという文言で書かれている。

就職できていないのだから、ご活躍も何もあったものではないと思うのは俺だけだろうか?

ご活躍を祈るくらいなら採用してくれと思ってしまうのだが……。

それにしても妙だな……。

俺が面接に行った件數は3週間で20件近い。

その全てがお祈りメールなのだ。

何か呪われているとしか思えないのだが……

とりあえず気を取り直して。

「あとの5件は……」

登録會に來てくださいというお知らせがメールが件名に書かれている。

「登録會か……」

正直、派遣會社の登録會というのは本當に意味があるのか? と、俺は思ってしまっている。

なんというかいつでもクビを切っていいから労働者に寄生する派遣會社を通さずに高い給料で直接雇用してくれと俺は思っている。

そう、いつクビを切ってもいいから高い給料で雇ってくれと!

そもそも派遣會社を通そうと、クビを切られて一番痛いのは労働者であり派遣社員なのだ。

派遣會社なんて痛くもくもない。

別の人材を派遣すればいいのだから。

結局、いつも痛い思いをするのは労働者だ。

――それでも、仕事を探してもほとんど派遣會社が絡んできているので、正當な賃金がもらえない。

中抜きされた賃金をもらっても労働者が消費に回せるわけがない。

だからいつまで経っても日本の経済は上向きにならない。

出生率が低下するのも給料が悪いからだ。

本當に派遣法改正をした當時の與黨――、赤泉純一王と竹山平蔵は歴史に殘る最悪の政治家と言える。

俺は椅子から立ち上がる。

整理番號を確認するが、まだまだ時間がかかりそうだ。

「すみません」

「はい。何でしょうか?」

窓口擔當者へ引き継ぐ前の擔當者――、つまり付擔當者が俺を見てくる。

「申し訳ありません。急用ができたのでキャンセルしていただけますか?」

「わかりました」

付擔當者に整理券番號札を渡して建から出る。

「さてと……」

俺はバスを待っている間に面接について詳しい容を確認していく。

「――ん?」

俺は、一つのメールを見て眉間に皺を寄せた。

「このご時世に、履歴書を持ってこいとか……」

――まったくいつの時代の話だ。

前時代的にもほどがあるだろうに。

いまの時代は、全てWEBサイトからの登録だぞ……。

実際、俺が就職として利用している【はたらいてネット】というサイトは、履歴書が全部WEBで改稿可能だし。

「仕方ないな……」

先方は履歴書がしいと言っているのだ。

それなら持っていくしかないだろう。

しかも時給が2400円と一番高い仕事だからな、多は配慮をしてやってもいいか。

自宅まではバスで20分弱。

すぐに自宅のドアを開ける。

さすがに5件の登録會だと々と調べるや用意するものがあるのだ。

主に登録する派遣先企業への登録會の場所確認など。

「まずは履歴書だな」

1DKの一人暮らしの家の割には片付いていると俺は自負している。

まぁ、必要以外のは買わないというのがあるし、捨てるときはサッパリと纏めて捨てるからだが。

「履歴書は、たしかワークデスクのどこかに……」

家の中には、企業が使うワークデスクを置いている。

その方がパソコンを何臺も置けるからだ。

「ないな……、引き出しの中か?」

中々、引き出しが開かない。

鍵が掛かるような高いワークデスクではないはずなんだが……。

中で何か詰まっているのか?

「仕方ないな……」

開かない引き出しがあるなら開かせて見せよう。

マイナスドライバーを、引き出しに無理やり突っ込む。

そして、テコの原理で引きずりだす。

ガコッ! と、いう音と共に引き出しが開く。

「まったく……、手間を取らせやがって……」

開いた引き出しの中に履歴書があるかどうかを確認するために視線を落とす。

そして、俺は思わず引き出しを閉じた。

「…………見間違いか? 俺は、そんな趣味はなかったはずだが……」

もう一度、引き出しを開ける。

引き出しの中には、たくさんの通路や小部屋や大部屋が存在していて、さらに無數の1センチほどの小さな置いていた。

「何だ、これは――? まるで――」

――そう、まるで形が……、ダンジョン講習會で説明していたダンジョンにそっくりだ。

「これって本か? いや――、でもな……」

どう見ても、無害そうにしか見えない。

俺の方を見てくる魔らしきはいないし、仮に俺を攻撃しようとしても人差し指で押しつぶせそうだ。

「――いや、落ち著け。3週間も仕事が決まらなくて、きっと疲れているに違いない。まずは風呂にってから一旦、仮眠でも取ろう」

疲れている時に登録會の用意をしてもいいことはないだろう。

俺は引き出しを閉めてから風呂にり仮眠を取った。

――そして……、夜に起きてワークデスクの引き出しを開ける。

そこには、やはりミニチュアのダンジョンが存在していた。

「夢じゃ……、ないのか……」

溜息しか出ない。

いったい、何が起きているんだ?

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