《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》ダンジョンツアー(2)

「山岸先輩、これはひどいですね」

「そうだな……」

佐々木の意見には俺も賛同せざるを得ない。

まぁ、千葉東警察署も7割近くが懲戒免職になったのだ。

引き継ぎも々と含めて、忙しかったのだろうと推測もできるが……。

「しかし、困ったな……」

これでは、片付けが済むまで寢られない。

下著や洋服も散らばっていてまるで強盜がったかのようだ。

――コンコン

「山岸さんいるかい?」

「――これは、お久しぶりです。杵柄きねづかさん、家賃の件ですか?」

そういえば、1ヶ月も自衛隊中央病院にいたからな。

家賃を、まだ払っていなかった。

「それもあるけど……、じつはね――。ここのメゾン杵柄にね山岸さんの家を含めて4件空き巣がったのよ」

「――え?」

ま、まさか……。

この強盜がったようだと思っていた部屋は、警察が荒らしたのではなく空き巣がった――、ということか?

「――ええ? ほ、本當ですか!?」

佐々木が慌てて部屋から出ていく。

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どうして佐々木が、そんなに慌てているのか……、意味が分からない。

まぁ、それは今は置いておくとしよう。

「もしかして……、外に集まっていた人だかりって……」

「1階の小塚さんがね、自宅に戻ったときに空き巣と遭ったらしくて――、それで警察に通報したらしいんだけど、あんな事があった後でしょう? 警察も人手が足りないらしくてね――、まだ來れないみたいなのよ」

「な、なるほど……」

つまり警察が汚したかどうか分からないと……。

まぁ、よく考えてみれば泥靴でってくるような警察はいないよな?

「それで犯人は、まだ捕まっては?」

「一応、特徴は黒のジーンズにグレーのコートしか分からなかったみたいなのよね」

「顔や年齢などは?」

「顔はマスクで隠していたんだって、年齢は分からないけど長は170センチくらいだってさ」

「そうですか……」

つまり犯人の特徴はほとんどないってことだ。

「――あっ!?」

そういえば、印鑑と通帳をデスクの引き出しにれたままだった!?

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すぐにデスクを開ける。

デスクの一番上にはミニチュアダンジョンが存在している。

そして2段目に本來あるはずの通帳と印鑑がなくなっていた。

「すぐに口座を止めないとまずいな」

攜帯電話を、ポケットから取り出す。

「先輩?」

「――ん?」

慌てていたから気がつかなかった。

佐々木が、俺が開けた引き出しの一番上の棚――、ミニチュアダンジョンをジッと見つめていた。

「佐々木……」

「へー」

佐々木が、ミニチュアダンジョンに手をばす。

そして――。

「先輩は履歴書はボールペンで書くんですね!」

まるでミニチュアダンジョンが存在しているのが見えないように、引き出しの中から履歴書を取り出してマジマジと佐々木が見ている。

もしかして……、佐々木にはこれが見えないのか?

「佐々木」

「はい? なんでしょうか?」

「このデスクの一番上の棚の中には何が見える?」

「……え? 履歴書と職業経歴書ですよね?」

どうやら、本當にミニチュアダンジョンが見えてはいないようだ。

「それがどうかしたのですか?」

「いや、何でもない」

へんな先輩と言いながらクスッと笑う佐々木。

そんな彼を見て俺は溜息をつきながら銀行に連絡をし口座を停止してもらう。

ただし、早めのうちに銀行に來て手続きをしてほしいと言われた。

まぁ、それは仕方無い。

あと問題は……。

「杵柄さん」

「どうだったかい?」

「通帳と印鑑がやられていました。一応、銀行には連絡をしました。それと窓ガラスの修理ですが……」

「あとで払ってくれればいいよ」

「そ、そうですか……」

やはり俺が払わないといけないらしいな。

備品が壊れたとか、そういうじで直してくれるのをしだけ期待したんだが……。

「それでは杵柄さん、窓ガラス修理の方の手配をお願いできますか?」

「それは不産屋に連絡しておくよ」

「助かります」

話しが一段落したところで大家さんが玄関口から出ていった。

「さて、あとは窓ガラスの修理と部屋の掃除が終わるまでホテルでも借りるか……」

「せ、先輩!」

「どうした?」

「わ、私の部屋で良ければ泊まってもいいです……」

「いや、だってお前の家とか田だっただろ?」

さすがに田は遠すぎる。

田から就職活とか無理だ。

「わ、わたし! 先輩の隣の部屋に引っ越してきたんです!」

「…………はあ?」

こいつは何を言っているんだ?

俺は部屋から出る。

そして隣の家の表札を見ると、表札に佐々木と書かれていた。

「おかしい。となりの家の住人はたしか山口だったはず……」

「山口さんなら、先輩の家に怖い人が來た翌日に、大家さんに「こんな危険なところに居られるかー、俺は別の場所に引っ越すぞー!」と言って出ていったそうです」

「そうなのか?」

なんだか死亡フラグぽい話し方のような気がしないでもないが……。

まあ、隣の家の人間は大學生だったからな。

そういう言い方をすることもあるだろう。

それにしても佐々木の家が俺の家の隣とか作為的なものしかじないな。

空き巣がった日、2度目の警察の來訪対応を行った後、千葉駅前に何軒かあるホテルに電話をかけ空き室を確認したところ、部屋を借りることができた。

電話でホテルを探している間、後ろでは、「先輩! 私の部屋なら空いていますよ!」と佐々木が抗議していたが無視した。

朝、ホテルから出たあと、その足で不産屋に直行し家賃を払ったあと、モノレールに乗り込みモノレール千城臺に到著したのは、お晝近かった。

俺は途中で掃除用を購したあと、アパートに向かう。

「――ん?」

何やらアパートの前に一臺の軽トラックが停まっていた。

「橋本ガラスか……」

「おや、ずいぶんと遅かったね」

「杵柄さん。もう業者の方が來られたのですか?」

「そうだよ」

杵柄さんと話をしていると作業服を著た30代ほどの男が2階から下りてきた。

し無想そうな男だ。

「こんにちは、アパマルショップ経由で依頼された橋本ガラスです。一応、割れたガラスを見させてもらいましたが、曇りガラスなのでガラス代が18000円 施工料金6000円 基本料金6000円 合計で3萬円くらいになりますね」

「3萬円……」

無職な俺には結構大きな金額だ。

あとで寶くじ売り場に行ってお金を稼ごう。

一応、今日の朝にはステータス制限は解除されていたからな。

「わかりました。どれくらいで直りますか?」

「そうですね。工場の稼働次第ですが早くて2日……、遅いと5日ほど見てもらえば……」

「……今日中とかは?」

「それは無理ですね、さすがに――」

「そうですか……、それなら仕方無いですね」

「はい。曇りガラスには在庫はありませんので……ただ……」

「ただ?」

橋本ガラスの職人さんが、軽トラックの荷臺から板のようなと分厚いテープを俺に見せてくる。

「養生テープと、プラべニアです。これで壊れた窓を一時的に塞げばしは寒さが凌げるでしょう」

「……はい」

「とりあえず窓は簡易的に塞いでおきますので」

「分かりました。お願いします」

橋本ガラス店の職人さんは先にアパートの階段を上がっていく。

さて――。

「杵柄さん」

「なんだい?」

「家賃ですが、アパマルショップに支払っておきましたのでよろしくお願いします」

「あいよ」

俺は、アパートの裏に住んでいる杵柄さんに頭を下げてアパートの階段を上る。

すると、ドアをしだけ開けてこっちを見てきている佐々木と目が合った。

佐々木はふてくされた顔をするとドアをパタンと閉めた。

何やらご機嫌斜めのようだ。

そして、部屋の前に到著すると橋本ガラス店の職人さんが手際よくプラベニアというのをカットし窓を塞いでいた。

さすが職人だ。

ここは、コールセンターのスぺシャリストの俺と通じる何かをじる。

料金は不必要だと言って去っていく職人さんを見送ったあと、俺は部屋の掃除を始めた。

「はぁ、疲れたな……」

部屋の掃除も終わり、汚れた布団や類を全てコインランドリーで洗い乾燥し終えた頃には時刻は5時を過ぎていた。

「さすがに窓を塞いだと言っても寒いな――」

今日は暖房MAXにして過ごそう。

來月の電気代が怖くて請求書をあまり見たくないな。

俺は、ホットココアをれながら椅子に座る。

しかし……、ようやく日常に戻ってきたじだ。

無職だが――。

それ以外は、日常と言っていい。

まずは、就職をしないとな……。

院中に送った就職活メール118件が全てお祈りメールに化けてしまっているのは、しありえないが……。

俺はパソコンを起し、仕事を探そうとしたところで広告が目にった。

――それは、日本ダンジョン探索者協會の求人の広告

「ふむ……、そういえば佐々木が日本ダンジョン探索者協會に就職したって言ってたよな」」

俺は広告をクリックする。

すると日本ダンジョン探索者協會のホームページが開く。

その中で俺が住んでいる近隣にダンジョンがあることが表示されている。

「貝塚ダンジョンか……、貝塚インターチェンジの近くにあるダンジョンだな。思ったより近いな……、そういえば、楠という男が日本ダンジョン探索者協會が警備に當たっていると言っていたな。一般人向けのツアーもやっているのか? 參加費は無料で……、貝塚ダンジョン特産品の落花生がもらえるのか……」

どうしてダンジョンの特産品が落花生なのかは疑問の余地があるところだが……。

どうせ仕事が中々決まらないのだ。

一度、気分転換としてダンジョンツアーに參加してみるのも有りかもしれないな。

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