何とか攻撃を避け続け致命傷を避けていた山岸鏡花。

そして彼が分析した通りに増させていた木の枝を振るっていた狂の神霊樹。

――その二人がきを止める。

それは、目の前の圧倒的強者である天照の前においては致命的なミスと言えるモノではあったが……。

「何を……何をしている！？　あの、馬鹿者が！」

最初に聲を上げたのは天照であった。

その視線の先には、巨大化した黒の狼の存在があり――、その姿を見て彼は焦ったかのように、鏡花と狂の神霊樹を無視して駆け寄ろうとするが――。

「――っ！？　何をする！？」

取りし周囲の狀況が見えなくなった天照の進行方向には無數の蔓が出現し彼の行く手を阻む。

「何をする……ですって……」

息が切れている鏡花は、天照のを収束させ作り上げられた剣で肩を切られたのか、炭化した傷口に手を當てながら

「貴の相手は、私達……よ……。行かせる訳にはいかないの……」

そう力無く呟くが――。

「愚かな！　當代の巫が、ここまで愚かだとは思わなんだ！」

その言葉と同時にの剣が、橫薙ぎに鏡花の首筋を狙って振るわれるが、無數の木の蔓により防がれる。

「――っ」

「妾が居る事も忘れて貰っては困るのう。それに、それだけ取りしているという事は――」

「ええっ。何とかうまく行っているというところかしら？」

狂の神霊樹の言葉に、そう同意しつつ鏡花の視線は時折、視界の先に現れた漆黒の獣に向けられていた。

「何を言っている……。この世界が破滅しても良い……そう思っておるのか？」

「――え？」

その天照の言葉に、鏡花のから思わず聲がれる。

「あれは、ディアウルフ」

「ディアウルフ？　あの北歐神話に出てくる？　――でも、何で月読さんが、そんなことに……」

「裏切った當代の巫に話す言葉なぞない！」

天照は、無數のの玉を作りだし、それらをの周囲に纏わせると、漆黒の獣に向かって走っていく。

それを引き留めようと行した狂の神霊樹であったが、天照がの周囲に展開していたの玉により蔓が一瞬のうちに消滅し引き止めることはできなかった。

二人を引き離した天照は、漆黒の獣と化した月読の前に立つ。

「止めなさい！　月読！　どういうつもりなの！」

天照の聲が――、き通った聲が、周囲に響き渡る。

そして、その音は、もちろん獣と化した月読にも屆く。