「さん……。何とか、なりましたね」

「そうね」

佐々木は、山岸直人を抱きかかえながら、意識を取り戻した相沢凜に言葉を返す。

その間にも天から降り注ぐの粒子は、地下深くに淀んだ闇を吸収しの塊を作り出していく。

そして、りの塊は人の形となっていく。

「――え？」

人々が、りの中から発生していく中で、呆然と信じられないと言った様子で、一點を見つめ大きく目を見開く相沢凜。

彼の視線の先には――。

「……た、卓也！？」

相沢凜は、手にしていた日本刀を無意識のうちに床の上に落すと、倒れ込んでいる自分の思い人であり旦那であり、行方不明だった自分の夫へ駆け寄る。

「あれが……」

佐々木は、りの中から現れた人間達を見ながら、一つの確信に思い至る。

「もしかしてダンジョンの中で死んだ人が蘇っているの？」

彼は周囲を見渡しながら呟くと同時に周囲の壁が崩れていく。

天井からも無數の破片が落ちてくる。

佐々木が、それらを殘された魔力で、りから現れた人々を守っていくが――。

「魔力が……もう……」

佐々木は、魔法の使いすぎで意識が希薄となっていく。

その時、彼の抱きしめていた腕の中から、立ち上がる存在があった。

「すまなかったな。佐々木」

「先輩？」

そう、ようやく目を覚ました山岸直人は天井を見上げる。

そして――、山岸直人は手に緑に輝く剣『草薙の剣』を顕現させていく。

「地下に降りてきてからの意識はハッキリしないが、お前が生きているのなら、それで問題ない。とりあえず、地上に戻るとするか」

「――でも、ここって地下深く……。それにダンジョンが崩壊を始めているみたい」

「大丈夫だ。あとは、俺に任せておけ」

山岸直人は、『草薙の剣』を構える。

そして、大気から――、大地から――、海から――、天候から――、全ての存在から力を――、の粒子を集めていく。

「すごい……」

佐々木は、その景を見て嘆の聲を上げる。

そして、それを見ていたのは相沢凜も同じであった。

彼も、呆気に取られて山岸直人と『草薙の剣』を視界におさめていた。

二人とも、ある一定のラインに到達した強者だからこそ分かる力。

それは――、二人が到底辿りつくことが出來ないと理解できるには十分すぎるほどの力であった。

「草薙の剣！」

山岸直人が大空の天井に放った極大の緑の極は、天井を粒子レベルで消滅させる。

さらに、全ての階層を消し飛ばし天を貫くの柱を生み出した。

そのの柱は、大気を――雲を――層圏を貫く。

「やっぱり先輩はすごいです」

「立てるか？」

「はい。それより、山岸先輩」

「何だ？」

「何も覚えていないんですか？」

「ここまで來たところまでは覚えているが……」

首を傾げる山岸直人。

その様子を見て、佐々木はを噛みしめたあと、笑顔になり――「おかえりなさい。先輩」と語り掛けた。