《わがまま娘はやんごとない!~年下の天才と謎を解いてたら、いつの間にか囲われてたんですけど~》十九話「心を強く持ちましょう」四
「いずれにしても、早く解決して帰らないといけないか」
「そうじゃな。まあ、お主が私を匿かくまい、共に遠くの國にでも行ってしまうというのも悪くは無いが」
「いや、それだと別の問題がある。壱子を連れ出す手配をした梅乃さんだ。それに梅乃さんが護衛に隕鉄さんをつけたのだって、道中で何かがあって壱子が帰ってこなくなってしまったら困るからだと思う」
「む、真面目な返答を……。しかし、それはその通りじゃな。では、早急に帰るために解明せねばならぬことををまとめておこう」
そう言って、壱子はすらすらと口をかしていく。
「まずはヌエビトの呪いの正。これはほぼツツガムシで間違いあるまい。まだ証明は出來ておらぬが、私の考えが正しければすぐにでも分かるはずじゃ」
「壱子の考えって?」
「それはまたいずれな。次に窟の白骨が誰かということじゃ」
「でもそれは、骨から特定するのは難しいんでしょ?」
「うむ。それゆえ、これは全ての答えあわせみたいなものじゃ。仮説が正しいか確かめた後でも良い」
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「仮説が、ね。……あのさ、もったいぶらずに教えてくれても良くない?」
「仮設はあくまで仮説じゃ、話す段階ではない。それに、急かす男は嫌われるぞ」
その言葉に、平間は簡単に言い負かされて黙り込む。
平間が靜かになったのを良いことに、壱子はさらに続けた。
「次に、窟の側路の先にあった畑らしきものが作られた目的じゃ」
「もしかして、これも仮説が正しかったらすぐに分かるの?」
「よく分かったな。そして、私たちが見たヌエビトらしき影。これはまあ、解明すると言うまでも無いのじゃが……まあ、すぐに分かる。あと、広場に曬された犬の首もあったな。これも大した話ではないが」
「僕はもう解説を催促する気も起きないよ」
「賢明な判斷じゃ。そして解明すべき最後の一つは……」
壱子は目を伏せて、沙和のいる部屋の方向に視線を向ける。
「沙和がなぜ死んでしまったのか、じゃ」
平間は、壱子の聲の高さが一段落ちたことに気が付いた。
彼としても、やはり気持ちを整理できない部分は多いらしい。
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「一応聞いてみるけど、手がかりは?」
「無くは無い。が、正直な話、沙和の死因だけはまだ分からぬ。脳に何か起こったのではないかということは想像できるが、しかし私の知っている醫事方の報では特定が出來ぬ」
「つまり、手がかりが足りないってこと?」
「正しいまとめ方じゃな。しかしそうではないとも言える。そもそも、醫事方が抑えている報も決して完全ではないのじゃ。人のについては分かっていないことのほうがずっと多い。沙和を死に至らしめたのは未知の毒かも知れぬし、もともと沙和が何か病を持っていて、それを話していなかっただけなのかも知れぬ。こればかりは、私ではどうすることも……いや、待てよ」
壱子は何かに気付いたらしい。
「もう一つ分からぬことがあった。なぜ沙和が突然姿を消したのか、じゃ。平間、あの時沙和の部屋に爭った痕跡は無かったよな?」
「うん、確かそうだったと思う。むしろ、部屋の散らかり合なんかはすごく普通だった」
「その通りじゃ。つまり、第三者が侵して沙和を攫い、その後で痕跡を消した線は考えにくいということになる」
「……つまり、どういうこと?」
壱子はあごに手を當てて俯いた。
平間が壱子のこの仕草を見たのは、久しぶりであるような気がした。
「沙和は自分から出て行った……?」
「でも壱子、沙和さんにはそんなことをする理由は何も無いよ」
「そう、何も無い。そしてもう一つ、沙和が取った不可解な行がある」
「不可解な行?」
「うむ。平間、私たちが沙和を見つけたのは森の一番奧、窟の中じゃ」
「そうだけど、それが?」
問いかける平間に、壱子がその大きな黒い瞳を向ける。
「平間、なぜ沙和は窟から戻らなかったのじゃろうか。あの時の沙和はを拘束されていることも無かったし、弱ってはいたが、歩けぬほどではなかった」
「それは……そもそも、沙和さんが自分からここを出て森にったのだとしたら、何か理由があって夜の森に居続けたかったんじゃないの」
「そうかも知れぬ。しかし、調を崩しかけていた沙和が、一人で、私たちに黙って夜の森の窟に行き、その上で一晩を窟で過ごす理由は恐らく無い。なぜなら、そんなことをしても沙和に何もいいことが無いし、同じくその夜に、この宿舎にいてはいけなかった理由も無いからじゃ」
確かに、調が悪い時にわざわざ一人で出かけることに意味があるとは思えない。
もともと沙和は商人だが、それにしたって平間たちを出し抜く理由は見つからない。
なぜなら、沙和が森で何か有用なものを見つけたとしても、平間たちがそれをしがることが無いのは沙和から見ても明らかだったからだ。
平間が噛み砕きながら納得していると、壱子はさらに続ける。
「もしこの推論が正しいとすると、沙和が森に向かったのは『夜の窟に篭こもる』とは全く違う別の理由がある。それはつまり、沙和は窟から出なかったのではない。『出られなかった』のじゃ」
「出られなかった? あ、それはあれだよ、幻覚のせいだ。沙和さんは僕たちが迎えに言った時、窟のり口辺りの目に見えない何かに怯えていた。だから、それが怖くて出られなかった。そうじゃない?」
正解と肯定を確信して、平間は自ありげに言う。
が、壱子の反応は鈍かった。
「それはどうじゃろう……沙和は窟のり口でのみ恐怖しておった。もしそれが幻覚を見ていたのだとしたら、違う場所で他の何かに怯えるのが自然じゃ」
「……だったら、つまり?」
「つまり……沙和は本當に幻覚に怯えていたのか?」
「そうは言っても、あそこには怖いものなんて一つも無かったじゃないか。確かに多は不気味な雰囲気だけど、沙和さんはそれまでも雰囲気に怖がっている様子は無かった」
「それもそうか……」
平間の言葉に、壱子は肩を落としてあからさまに落膽する。
そしてそのまま、畳の上に座り込んでしまった。
「分からぬ……どうして沙和は暗くて寒い窟に居続けたのじゃろうか……。やはり幻覚か? だとしても……」
そうして、壱子は一人でブツブツと呟き始めた。
が、しばらくして。
「まさか」
ぽつりと呟き、壱子は顔を上げる。
「白骨、二度曬された犬の首、大飢饉、畑、匂い、ツツガムシ、窟……ああ、まさか!!」
壱子は跳ねるように立ち上がると、部屋から廊下へ駆け出して行った。
それを平間は反的に追いかける。
「ちょっと壱子、どこに!?」
「平間、わかったのじゃ」
「分かったって何が!?」
平間がぶように尋ねると同時に、壱子は沙和の居る部屋の前で足を止める。
そして転げるように部屋にり、沙和にすがりつく。
いよいよ本格的におかしくなったのか、という不安が平間の頭をよぎった。
「……あった、これか。平間、今日は何日じゃ!?」
「え? 十六日だけど……」
「では、私たちがこの村に來たのは?」
「たしか、三日だったはず」
「十三日か……し短いが、この位置なら有り得る」
「壱子、さっきから何を言っているんだ?」
そう平間が問いかけると同時に、玄関の戸を開ける音が聞こえた。
「來たか。平間、行くぞ」
そう言って、玄関へ駆けていく壱子の後を、平間は追いかける。
そして玄関には、懐かしい顔の人が立っていた。
隕鉄だ。
壱子は隕鉄が戻ったばかりだということに気を留める素振りは全く見せずに、早口で隕鉄を問い詰める。
「頼んだことは調べてくれたか!?」
「うむ、お嬢の言ったことは調べたが……何かあったのか」
「沙和が死んでしまった」
「……は? 何故!?」
「詳しい説明は後じゃ。隕鉄、調べて分かったことの中に、――はあったか?」
壱子の言葉に、平間は耳を疑った。
その言葉が今ここで出てくることが、全く予想外だったからだ。
しかし隕鉄は、壱子に気圧けおされるように頷く。
「うむ、確かにあったが……」
「やはりか。ああ、やはりそうか」
搾り出すように言うと、壱子は平間のほうへ振り向いた。
その目は、怒りと悲しみのり混じったをしている。
「平間、分かったぞ。沙和の死因と、沙和を死に至らしめたもの。そして、どうして沙和が殺されなければならなかったのかが……!」
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