《【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド曹司》11.こんな目に遭うなんて

道香は事聴取のために警察に連れて行かれた。もちろん隣にはマサがいた。

簡易的な取り調べの際、マサが通話を録音していてくれたおかげで、一方的に薬を飲まされ、道香はあくまでなにも知らずに、タクミが勝手にクスリを混した事が証明された。

警察の話では、タクミの所持品から薬と呼ばれるタブレットやの他に、DRD、いわゆるレイプドラッグなどが見つかったことから、道香は簡易検査をけさせられた。

検査の結果、覚醒剤や麻薬の類いではない事が判ると、被害屆の手続きを済ませたら、そのまま帰って良いと言われた。

「怖い思いさせてごめんな」

「電話切らずにいてくれたんだね」

「最初は誤作かとも思ったんだけどな。會話の容が不穏だったんで、電話出來ない狀況なんだと思って」

マサが録音までしておいてくれたおかげで、タクミとの會話のやりとりが殘されていて助かった。後半の容は二度と思い出したくないものだったが、無理やりことに及ばされそうになった証拠になると警察の擔當者は話していた。

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「一人で大丈夫か」

「分からない」

「バイクは平気か?」

「乗ったことない」

「そうか」

マサは道香の手を取ると警察署を後にする。無言のまましばらく歩き、何分歩いたのか、気付けばマサのマンションの前に到著していた。

「道香を家まで送ってやりたいけど時間が時間だし、俺はバイクなんだよ。さすがにスカートでバイクに乗せるわけにいかないから。俺んちで良かったか」

「一人だと怖い……怖いの」

「大丈夫。俺んちなら安全だから」

道香を抱き寄せると、大丈夫と繰り返し、大きな掌で背中をでる。

エレベーターで7階に上がり、マサの部屋にるよう促される。

道香はマサがタクミのように豹変しないか、恐怖で心臓が暴れ出す。その様子に気が付いたのか、マサは優しく道香を抱きしめると、その低く落ち著いた聲で大丈夫だと何度も言い聞かせる。

玄関を開けて靴をぎ、マサに見守られながら部屋の中にる。

「風呂、お湯貯めるからし待ってろ」

「ありがとう」

マサが冷蔵庫から取り出したペットボトルをけ取ると、キャップを捻る指に力がらない。

「貸せ」

マサは道香の手からペットボトルを奪うと、キャップを開けて改めて道香にそれを渡した。

「俺はバイクを取りに行ってくる。変なとこに停めっぱなしなんだ。その間一人になるけど大丈夫か」

「……分からない」

「すぐに戻るから、鍵を掛けろ。俺は電話するから中から開けてくれ。それ以外で開くような事があったらジッとしてろ」

まずそんなことは起こらないと言いながら、それでも道香の心中を慮ってか、マサはソファーの上で茫然としている道香の頭をそっとでる。

「アスタリスクの近くだから、急げば5分も掛からない。悪いけど行ってくる。すぐ戻るから」

「マサさん……」

「どうした」

「一人だと怖い」

「大丈夫だ。なら電話しながら取りに行くから、通話しろ」

マサはポケットからスマホを取り出して道香のスマホを鳴らす。そして道香に出るように促すと、このまま話していようとスマホ越しに優しく聲を掛ける。

『慌ててたから鍵つけっぱなしなんだ。盜難されたら厄介だから、マジで申し訳ないけど取りに行ってくる』

実際の聲とスマホ越しの聲が重なって聞こえる。

道香は放心しながらもうんと頷くと、玄関先までマサを見送り、言われた通り鍵を掛けた。

マサがいなくなった部屋で、孤獨や蘇る恐怖と戦いながら、耳に響く優しい聲に全てを委ねる。その聲に集中しなければ、闇に引き摺り込まされそうになる。

『バイクあったわ』

「盜まれなくて良かったね」

『ならすぐ戻るから悪いけど切るぞ』

「うん」

『家の前に著いたら電話するから、その時に鍵を外してくれ』

「分かった」

プツリと切れた電話に、急に恐怖が蘇ってくる。もしもマサが來てくれなかったら。ゾッとした。靜かな部屋があの狀況を思い出させるので、道香はテレビをつけて靜寂を掻き消した。

手元のミネラルウォーターはし緩くなっていた。それを口に含んでゆっくりと飲み込む。ガタガタと震え始めるを掻き抱くように自分自で抱きしめた。

しばらくそうしてこまっていると、スマホが震え、同時にインターホンが鳴った。

スマホをタップして電話に出ると、道香は立ち上がりインターホンに移るマサの姿を確認する。

『開けてくれるか』

「うん」

鍵を開けてドアの鍵を開ける。

「ただいま。一人にして悪かったな」

「ううん」

「風呂貯まったんじゃないか?れそうか」

「うん」

「著替え用意しといてやるからってこい」

「うん」

道香はバスルームに向かい、扉を閉めて服をいだ。何気なく洗面臺の鏡に映る自分を見る。酷く顔が悪く化粧も落ちてボロボロだ。また震え始めたを必死に抱きしめると、浴室のドアを開けて熱いシャワーを浴びて念に洗った。

まだし芯が疼く覚がある。あの時飲まされたクスリのせいだろう。酷く落ち込んだ気分のまま、道香は湯船にを沈めた。

「……めぐみとマサさんが正しかった」

ボソリと呟いて道香は顔を覆った。

そのままどれくらい湯船に浸かっていただろうか。心配したマサが浴室のドア越しに聲を掛ける。

「道香、のぼせてないか」

「大丈夫」

「一人で出れるか」

「平気」

そう答えて湯船から出よう立ち上がった瞬間、目眩を起こして足をらせた。

バシャンと音を立てて湯船が揺れる。

「道香!」

浴室のドアが開いてマサがってくる。湯船からそのまま抱き抱えられると、バスルームのマットの上に立たされて丁寧にを拭かれた。

マサは著ていた服をいで洗濯機に放り込むと、用意してあったTシャツを道香に著せ、新品の下著を履かせてハーフパンツをその上に履かせる。

「ブカブカだね」

「俺のだからな」

短い會話をすると、マサは道香の手を取りベッドルームへ連れて行くと、ベッドに座って髪のの滴をきれいに拭き取る。

「ドライヤー使うか?」

「いい」

「そうか」

「マサさん」

「なんだよ」

「やっぱりめぐみとマサさんが正しかった。なのに私……」

マサにすがって嗚咽する。恐怖や後悔、いろんなり混じって涙が止まらない。

そんな道香を痛々しい目で切なそうに見ると、マサはゆっくりと腕を回して優しく抱きしめて背中や髪をでる。

「どんだけ心配したか」

「ごめん。ごめんね」

「でも道香の機転のおかげで助けに行けた。遅くなって怖い思いさせたな」

「ううん」

「仕事でちょっと場所が離れてたんだ」

「うん」

「すぐ行けなくてごめん」

「いいよ。助けてくれたもん」

はもう大丈夫か?」

「どう、だろう。しまだ変なじがする。クスリのせいかな。が熱い」

「なら寢ろ。時間おけばしはマシになるだろ」

「隣にいてくれる?が震えるの」

「ああ。嫌じゃなければ」

「嫌なわけないよ。そうして」

橫になるとすぐにマサが腕枕で道香を抱きしめる。あやさんに悪いなと思いながら、道香は腕を回してマサのに顔を埋める。

マサは服を著ていない。直にれる元に耳を寄せると心臓の音が聞こえる。

「心臓の音って落ち著くね」

「そうか?」

し早いね」

「そりゃこんな狀況だからな」

し困ったように笑うとマサはいいから眠れと道香の頭をでた。

あたたかくて優しい腕に抱かれ、規則的に脈打つ心臓の音を聞いているうちに、道香はようやく落ち著きを取り戻し、マサの腕の中で意識を手放した。

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