《【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド曹司》13.これはどんな関係なのか

そのまま週末はマサの勧めもあり自宅に帰らずにマサの家で過ごした。その分平日に自宅で獨り夜を越すのはしんどくて辛かった。

仕事は変わらず慌ただしく、必死に打ち込めばなにも考えずに済んだ。それだけでも気が紛れた。

今週末マサはどうしても外せない仕事があるらしく、一緒には過ごせない。家の鍵を渡されてはいるが、マサのいない部屋で獨りで過ごすのも寂しさが募る気がした。

道香は悩んだ末にめぐみに連絡をとり、今回あったことを説明した上で、泊まりに行っても良いか尋ねた。二つ返事でOKされたので、小ぶりな旅行カバンを持ち、仕事帰りにめぐみの新居に向かった。

「よー。いらっしゃい。上がって上がって」

「お邪魔します」

10帖のワンルームのめぐみの新居には、必要最低限の家だけが揃えられていた。聞けば実家から見合いの話が出ているらしく、結構な良縁のようで見合いの席に顔を出すらしい。

「めぐみがお見合いとか、なんか不思議なじ」

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「思ったより元気そうで安心した」

「……うん。ごめんね。きちんと忠告してくれたのに私」

「怖かったよね、思い出させてごめん」

「まだね、時々が震えるんだ」

「道香……」

めぐみは涙ぐんで道香をハグする。もっときちんと釘を刺せば良かったと、めぐみは自分を責めるので、そうじゃないと返す。

「私がいけないの。もちろん悪いのは向こうだけど、今回のことで人のことを信じすぎる自分の甘さを痛した。世の中善人ばかりじゃないんだよね」

ハグをほどくと、めぐみの手を取って友達は良い人だから人を見る目が無いわけじゃないと思うんだけどねと苦笑いする。

「で、あの口も態度も悪いマサって人が助けてくれたんだよね。付き合い始めたの?」

「分かんない。同から一緒にいてくれてるのかも。家の鍵は預かってるけど、どんなふうに思われてるのか本當に分からなくて」

「まあ、難しいところだよね」

デリバリーでも頼もうかとめぐみはスマホをタップして、たまにはピザのドガ食いとかどうよと笑う。つられて道香も笑うとそれなら大量のビールが要るねと買い出しに行く相談をする。

とりあえず先にコンビニに行ってビールを大量に買い込むと、帰宅してすぐにLサイズのピザを二枚と他にもサイドメニューを山ほど頼んだ。

「で?アンタ自はマサさんのことどう思ってんの」

熱々のピザを頬張りながら、めぐみは道香を見てこれ味い!と早く食べるように促す。

「どうかな。凄く優しい人だよ。同からだったとしてもそばにいて癒してくれる人だし、好きは好きだけど……」

言い淀んだのは、未だにマサの本當の仕事を知らないからだ。出會って日も淺いし、の関係が先行したこともあって、同してしまう哀れなだと思われているような気がしていた。

「マサさんて、まだあの店で働いてるの?」

「あ、うん。なんだかオーナーにお世話になったことがあって、恩返しって言ってた」

ピザを頬張りながらしばらくマサの話をする。話と言ってもあまりよく知らないことの方が多い。結局どこらへんに惹かれるかなど、當たり障りのないバナになる。

「めぐみは?なんでお見合いする気になったの」

サイドメニューのメキシカンポテトを摘むと、ビールを流し込んで話を切り替える。

「なんでだろうね。まあ、自分で選んで同棲までしたのに上手くいかないこともあるわけだから。だったら他生の縁とでも言うの?會うだけ會ってみるのも悪くないかなって思っただけ。なかなかに男前なんだよね」

テレビの下の小さな本棚から見合い相手の寫真を取り出すと、めぐみはそれを広げて歳はかなり上だけどねとビールを飲んだ。

「優しそうな人だね。実際會うまで分からないだろうけど、確かにかっこいい」

「アンタのマサさんも、黙ってればめっちゃカッコいいけどね」

「相當印象悪いんだね」

「……悪いけどアンタに聞いてない。そっちの子。絡まれた方に聞いてるんだ」

聲を低くしてめぐみがマサの真似をする。道香は聲を上げて笑うとピザを頬張る。

「よく覚えてるね」

「人のことおしゃべりババアみたいに。失禮でしょ」

ナゲットを頬張ると指に著いたソースを舐めとって、めぐみはそれでも道香の恩人だから謝はしてるけどねと呟く。

「そういえばお見合いはいつなの?」

「ん?來週の土曜日。クーザロイヤルホテルで會食形式」

「クーザってすごいとこじゃん」

「ね。お腹いっぱい食べなきゃ」

「そこ!」

道香が笑うとめぐみも笑った。

「仕事もある程度単調になってきて、別に辭めたいわけじゃないし、周りからそういう意見も出てないけどさ。27になるとなんかこう、周りもチラホラ結婚とかしていくじゃない?」

「確かにね」

「みんながしてるから私も、とかじゃないんだけど、いい波が來たら乗りたいわけよ」

「サーフィンみたいに言わないでよ」

笑ってそう言うと、いい波だと良いねとめぐみの手を取った。

「アンタこそ。マサさん?と曖昧な関係でズルズルなんて、もう若くもないんだからハッキリさせなさいよ。この歳で遊ばれるって結構しんどいよ」

「そうだよね。嫌われてはないと思うけど、聞くのも怖くて」

「確かに分からんでもないけどさ、曖昧な関係でズルズルする方が傷が深くなるのは目に見えてるじゃん」

ぬるま湯に浸かってても、のぼせないとは限らないんだからね。そう言ってめぐみはピザをかじる。

マサのことは、多分と言わず好きだ。けれどめぐみにも話したように、同されて傍にいてくれてる覚が拭えない。

めぐみは口が悪いと非難するが、マサは優しい。だのだの語るタイプじゃないけれど、大切にされている気はしている。

「ぬるま湯……か」

天井を見上げて息を吐き出すように呟くと、めぐみが困ったような顔で道香を見ていた。

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