《【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド曹司》15.終わっていなかった事件

1時間半の道のりを帰る中で、めぐみはマサのことをあれこれ詮索し始める。

「じゃあ、一緒に過ごした先週末も、なんだかんだパソコンに向かって仕事してたんだ」

「うん。私はテレビ見たり映畫見たり。食事はデリバリーで済ませて、でも全く會話しなかったわけじゃないよ」

「肝心なこと聞けてないんじゃ世話ないわ」

「だって、あんまりしつこくして嫌われてもイヤだったから」

「ああ、惚れた弱みね。まあそりゃ仕方ないにしても、まさかグラブレの専務がバーテンやってるなんてね」

「そうだね。何かしら理由はありそうだけど、今日聞いてみるよ」

「まあ、私は興味本位で気になるだけだけどね」

この時間の割に意外と高速道路が空いている。前の車と充分に距離を保ちながらめぐみが運転する車は進んでいく。

「でもさ、逆に凄くない?だって相手はグラブレの専務だよ?玉の輿じゃん」

「いや、付き合ってるかどうかも怪しいのに、それは大袈裟だよ」

「いやいやいや。アンタ、そこは強気でいかないと」

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「強気って……」

「だから!道香が自分のでもなかったら家の鍵まで渡すと思うか?ってハッキリ言ってたじゃん」

あの呆れた顔見たでしょ?めぐみは低い聲を絞り出してマサの真似をすると、戯けたように笑ってそれで付き合ってないって言ったら私が張り倒すわよと騒なことを言う。

「でもやっぱり同なんじゃないかって」

「切っ掛けなんてなんでも良いじゃん。アンタは良い意味でも悪い意味でも思い込みが激しいから良くないわ」

「だけど哀れんで傍にいられるんだと思うと、なんかしんどくて」

「道香……そりゃさ、あんなことがあって普通にしてろなんて言わないけどさ。その前にも愚癡とか聞いてくれたり、雨宿りさせてくれたりしたんでしょ?それがあったからこそ助けに駆け付けてくれたんじゃない?」

全部が全部同だとは思わないよとめぐみが言い切る。

「マサさん優しいから……」

「どこが!アイツの私に対するやり取り見てなかったの?」

「それはめぐみが喧嘩腰だったからでしょ」

「アンタどっちの味方なの」

めぐみは笑って道香の頭をくしゃりとでると、は多いみたいだけどなくともマサはまともな男だと思うよと続けた。

「私、男見る目がないからな……」

「最初からガッツリ狙ってたわけじゃないじゃない、最初はあの忌々しい変態男に……あ、ごめん。この話は気分悪いわよね」

「いや、それが事実で痛い目を見たから」

「アンタに非は無いわよ!あのクソ野郎、もしアンタにまた何かしでかしたらイチモツ引きちぎってやるわ」

「表現がグロすぎるよ」

被害屆は出したが、裁判まで持っていくとなると、めぐみが言うように逆恨みで何かをされる可能もある。

タクミ本人ならまだ顔も特定できるが、彼の友関係などは分からないので不安要素は數えきれない。そう思ってまたが震える。

「やだ、顔真っ青じゃない!ごめん、私無神経にペラペラと……」

道香を気遣って片手で背中をでると、本當に無神経なことを言ったとめぐみが謝る。

「違うの、仕返しとか嫌がらせとか、本人ならまだしも、知人とか別の人を介してやってきたら怖いなって」

「そうか。確かに狡猾そうだもんね……それも含めて警察とマサさんにもちゃんと相談しときな」

「うん。実際パニックでそこまで頭が回ってなかったから、めぐみのおかげで気が付いたって言うか、ふと不安になって」

「あー。やっぱり私のせいだよね、ごめん」

「いや、良いんだよ。あんなことがあったのに、私どこかやっぱり短絡的で報復とかそういうのまで考えが至らなくて」

「普通はそうよ!私もアンタが酷い目に遭ったっていうのに、どこか他人事だから冷淡にそんな話しちゃって。怖くて當たり前よ」

何度もごめんと謝りながら、めぐみは自宅近くのインターで高速道路を降りる。

「下の道、意外と混んでるね」

「本當だ。高速は比較的空いてたのに」

二人でそんな會話をしながら、ゆっくりと進む渋滯を抜けてめぐみの家に著いたのは20時前だった。

「でも2時間程度だしマシだったのかな?」

「まさかの下道で渋滯にハマるとはねー」

めぐみは運転疲れか、肩を回してストレッチをしている。

「さ、れ違ってもいけないからすぐ準備してマサさんち行くよ」

「やっぱりタクシーで良いよ」

「アンタはバカなの!」

「なんで怒るの」

「帰り道で話したばっかでしょ。もしマサさんの家が特定されてたらどうするの!アンタ一人で行って危ない目に遭いたいの?」

「怖いこと言わないでよ……」

「だから護衛するって言ってんの。行くわよ、忘れない?」

「うん。大丈夫と思う」

「よし、じゃあ行くか」

持ち込んだ小さな旅行カバンを手に取ると、泊めてくれてありがとうと改めて道香はめぐみに禮を言った。

「私とアンタの仲でしょ、ビール一杯で良いから」

そう言って笑う。その答えがめぐみらしくて道香もつられて笑顔になる。

めぐみの家から20分ほどでマサのマンションまで著いた。

近くのコインパーキングに車を停めたが、心配だから部屋の真前まで送り屆けると言って、ショッピングバッグはめぐみが持って道香と二人でエレベーターに乗り込む。

何気ない會話をしながら、7階に到著したエレベーターから降りると、マサの部屋の前に人影が見える。

「……道香。アンタ下がってな」

道香にだけに聞こえるような小聲で囁くと、めぐみは先陣を切ってマサの部屋の前へ足を進める。すると突然人影がき出してめぐみに襲い掛かった。

「危ない!」

道香がぶと同時に人影が宙を舞った。

「誰に手ぇ出したと思ってんだ、このクソが!道香、110番。暴漢に襲われたって通報しな」

めぐみは冷靜に襲って來た男の腕を捻り上げると、背中に重をかけて固定し締め上げている。

道香は慌ててスマホを取り出すとすぐに通報して警察の到著を待った。

腕を締め上げられて男がき聲をあげる度に、めぐみが汚い言葉で罵倒するので、マンションの廊下には何事かと住人が數名顔を出してちょっとした騒ぎになった。

しかしその騒ぎも警が駆け付けると、安全を確認したのか皆それぞれ家の中に戻って行き、すぐに収まった。

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