《【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド曹司》23.進んでいく日常

「賑やかでごめんね。特にお母さんが」

「いや、良いご両親じゃん」

「マサさん、お父さんと何話してたの?」

緒。敢えて言うなら最終兵かな」

「何それ」

道香はマサの言葉の意図が分からず、諦めたように笑うと、マサの家からはどうやって帰ろうかと思案し始める。

「もうずっと俺んちいれば良くね」

「やだよ。掃除もしたいし、引っ越すなら要らないの処分もしたいもん」

「なら俺が転がり込む?」

「捗らない未來しか見えないよ」

「うわ、斷りやがった」

「そりゃ斷るよ」

引っ越しをいつにするか、業者の手配をどうするか、そんな話をしているうちにマサのマンションに到著した。

マサの部屋から荷を引き取ると、結局はタクシーで道香のマンションまでマサが送ってくれることになった。

ここでもやはり油斷はということで、マサは部屋の前まで道香を送り屆けると、引っ越す前に、道香の部屋を見てみたいと半ば強引に上がり込んだ。

八帖のワンルームにロフトスペースがついた、本當に學生向けの件である。

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道香はロフトに布団を敷いて寢ているので、八帖のフローリングにはそれなりに家が揃っている。

「學生のころ、友だちの家がこんなじだったわ」

「彼じゃないの?」

「彼ではないな」

「うわ、それ凄く遊んでるじ」

「十年以上前だから時効だろ。道香だって付き合ってた男いたんだし」

「そりゃまあね」

掘り下げても仕方がないので、ソファーにマサを座らせると、コーヒーかビールどっちにする?と狹いキッチンから聲を掛ける。

「ビール」

「言うと思ったよ」

道香は缶のままマサにビールを渡すと、自分はお茶を飲んで、引っ越しの話を詰めた。

土日はどうかと相談するものの、こんな時期とは言え業者が手配できるか分からない。

なので結局はお互い休みを取って、平日に引っ越しを敢行することに決める。日程は片付けの都合もあるので週明けの金曜日に決めた。

「ああ、急ピッチで片付けないと」

道香はスマホで引っ越し業者のカンタン見積もりをタップして費用をザッと調べる。

「いよいよこの部屋ともお別れかー」

「俺は持ち家だから、荷は置きっ放しでも問題はない」

「後に誰か住むの?」

「従兄弟の學生が一人暮らししたがってるから、親が良いならそいつに貸すかもな」

「そっか」

「道香はなんか処分するの?」

「うん。忙しくてお金使う暇がなかったし、思い切って家を一新しようと思ってる」

「じゃあ、全部処分するのか」

「うん。ソファーとかもマサさんちのやつ持ってくるよね?」

「新しく買うつもりだけど」

「……金銭覚」

「俺も道香と同じで、仕事忙しくて使う時間なかったから、それくらいの余裕ならあるんだよ」

「もしかしなくても、ベッドとか全部置いたままにする気?」

「さっき言っただろ。とは言え貸すかもしれないから、最低限の家は置いといてやりたいんだよ」

「ああ、そういう意味ね」

「それ考えたら業者呼ぶほどでもない気がするわ」

「そうか、洋服類程度だね」

「そうなるな」

トランクケースに詰めれば車で運べるなと、マサは真剣な顔で何かを考えている。

「そうか、私も家を新しく買うから、実質荷なくなるな……」

「引っ越し業者要らなくねえか」

「でもテレビとかデスクトップとか細々とした家電は持っていくつもりだし」

「ならリサイクル業者に買取に來てもらってから最低限の荷で見積もり取れよ」

「んー。金曜日に引っ越すとなると、今週は準備のために有休使うだけ使わせてもらおうかな」

「俺が手伝いに來ようか」

「専務が何言ってんの」

道香は笑うと、あ!と聲を上げる。

「どうした」

「同棲前に挨拶に伺わないと」

マサの両親に挨拶にも行ってないのに、引っ越しの日取りを仮確定してしまっている。

「ああな、今週の出勤予定は?」

「木曜は商談と打ち合わせがあるから、出勤確定してるよ」

他の日は都合がつけば有休取るかもしれないと道香は答える。

「なら木曜の仕事上がりに実家行くか」

「分かった。木曜ね」

そこまで話をまとめて気がつくと23時半を過ぎている。

「ごめんねマサさん。話し込んじゃってこんな時間だ」

「良いよ別に」

「気を付けて帰ってね」

「無理すんなよ。夜なら空いてるから気軽に呼べよ」

「分かった」

鍵をかならず掛けろ。脅かせるつもりはないが、まだ安全とは限らない」

「分かってる」

「インターホンは俺以外シカトしろ。あと水曜なら時間作れるから、リサイクル業者は俺がいる時間に呼ぶようにしろ」

「ありがとう。心強いです」

「本當に必要なら一緒にここにいるから、変に遠慮するなよ」

「うん。戸熊さんにも連絡れてみる」

「そうしてくれ」

マサは道香を抱きしめると、髪にキスをして抱く腕の力を強める。

「じゃあ、帰るよ」

「うん。大通りに出ればタクシー拾えるはずだから、そっちこそ気を付けて帰ってね」

靴を履いて名殘惜しそうに見つめるマサに、し背びをして啄むようなキスをすると、道香は鍵忘れないからと笑って見送る。

「おやすみ」

「おやすみ。すぐ閉めろ」

「分かった」

マサを見送ると、言われたとおり鍵を閉めてドアロックも閉める。

バタバタと引っ越しが決まり、どうくべきか思案する。

「明日出勤したら相談して、そのまま午後休取れたら水曜まで一気に有休使えないかな」

獨り言を呟いて、會社支給のタブレット端末にログインすると、今週……つまり明日の月曜からの流れを再確認する。スケジュールは引き延ばせるものや、そもそも締め切りが迫った案件がない。

來週になると一気に打ち合わせや商談が立て込む。

「やっぱり今週中がベストか」

有休を使えることを祈りつつ、明日に備えて風呂にることにした。

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