《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第38話
「……………………」
西の島の腕鶏が姿を見せる地域。
樹のに座り、1人の年が銃を構えている。
髪はほんのし金が混じる黒、目は黒く、年齢は5歳くらい。
そのすぐ後には、若い青年がその様子を見守っている。
『今だ!』
“パンッ!!”
年が発した弾は離れた所を歩く腕鶏に當たり、1撃で仕留めることに功した。
「やった!」
「あっ! おいっ!」
腕鶏を仕留めた年は、喜び勇んで橫たわる腕鶏に向かって走り出した。
青年が止めるような言葉を発するが、年の耳には屆かず、年はそのまま走っていってしまった。
「パパ・・! 鳥つかまえたよ!」
よっぽど嬉しかったのか、年は仕留めた鶏の首を持ち上げると、ブンブンと振り回し始めた。
弾が頭に當たり、がダラダラ流れる鶏を年が嬉しそうに振り回す姿はちょっとシュールだ。
年の呼び方からして、青年はどうやら年の父親らしい。
「よくやったぞ! レイ」
まだ々注意したいことがあるが、息子の天使のようにめちゃくちゃかわいい笑顔を見せられると、そんなことは忘れて優しく頭をでるしかない。
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「ちょっと! 何褒めてるのよ!」
「げっ!」
「あっ! ママ・・!」
注意をするべきことをせず、顔を緩めて息子の頭をでる姿を見たが、2人の側に現れた。
レイと呼ばれた年の母親らしい。
そして、言葉通り、お怒りのようだ。
「レイ!」
「……はい」
母の言葉と態度に、どうやら何か良くないことをしたと思ったのか、年は困の表に変わった。
「仕留めた所までは良かったけれど、周囲に魔がいないかちゃんと確認してから取りにいかないとだめじゃない!」
「……ごめんなさい」
母に言われて、年はさっきまでの笑顔が噓のようにシュンとしてしまった。
両親に狩りに行く前の注意點として、耳にタコができるくらい言われたことだ。
生まれて初めて腕鶏を仕留められたことが嬉しすぎて、その注意のことを忘れてしまっていた。
そういえば、走り出した自分を父も止めようとしていたことを年は思いだす。
もしかしたら、父もこれが言いたかったのだろうか。
「まぁまぁ、俺が代わりに見ておいたから……」
落ち込んでしまった息子がかわいそうに思え、父親は妻をなだめようとした。
初めてのことに浮かれて、飛び出して行ってしまったのは5歳なら仕方がない。
それをフォローするためにも自分がついてきているのだから。
「そういうことじゃないの!」
「……すいません」
妻の方からしたら、子供が良くないことをしたのだから、それを叱るのは父親の仕事だろうという思いがある。
しかし、彼は子供に甘く、もっぱら叱る役は自分になってしまっている。
それに、もしも1人で同じようなことをしてしまったら、あっという間に命を落としかねない。
この島にはそれほど強い魔は存在しないが、それでも年にはまだまだ危険な場所だ。
なだめようとしてくる旦那の態度にもイラッと來て、思わず口調が強くなってしまった。
妻に叱られ、今度は父親の方まで落ち込んでしまった。
「折角レイが仕留めたんだし、今日は鶏料理にでもしようか?」
「……そうね」
注意をけて落ち込んでしまった息子がいたたまれなくなり、空気をかえようと父親の方は話題を変える。
母親の方もこれ以上言うと、父子に口やかましい人間に思われてしまいそうなので、その話に乗った。
「レイ帰ろ」
「うん」
優しく微笑んで差し出した母の手を握り、家に向かって親子3人歩き出した。
お気づきだろうが、年の父親はケイで母親は花だ。
年の名前はレイナルドという。
花が島に流れ著いて8年が過ぎた。
たった2人で無人島生活をしていて、健康な男の仲が次第に近付いていくのは當たり前のことだ。
元々お互い馬が合っていたのだから、むしろ當然といったところだろう。
子供が出來にくいと言われているエルフだが、結構あっさりと子供ができた。
そして生まれたのが息子のレイナルドである。
エルフと人族のハーフになるレイナルドだが、顔はどちらかというと父に、髪と目のは母の花に似たようだ。
エルフ特有の長い耳は、人族である花の普通の長さの耳と合わせて2で割ったくらい。
見事に半分ハーフといった長さだ。
顔が自分に似ているせいか、ケイはどうしてもレイナルドがすることに甘くなってしまっている。
「ただいま!」
「「っ!?」」
“ピョン! ピョン!”“ピョン! ピョン!”
ケイの聲に反応した黒い2匹の玉が、飛び跳ねながら親子に近付いてきた。
「おぉ、ちゃんと畑を見張ってくれていたか?」
“コクッ!”“コクッ!”
右手に大きい方、左手に小さい方の玉が乗り、嬉しそうに頷いた。
「今日の夕飯はレイが仕留めた鶏料理だぞ」
「「っ!?」」
“ピョン!”“ピョン!”
ケイの言葉を聞いた2匹の玉はケイの手から飛び降り、そのままレイナルドの肩に乗った。
「ふふっ! くすぐったいよ。キュウ、マル」
肩に乗った2匹は、そのままレイナルドの頬にそのをすり寄せる。
両頬に絹のようながこすれ、くすぐったい覚にレイナルドの落ち込んでいた姿は消え失せた。
キュウたちは、ただ食べを取ってくれたレイナルドを褒めただけだったが、良い方に転んだようだ。
「良かったね」
「うん」
落ち込んだレイナルドは、結構引きずるタイプなのが花の悩みどころだ。
花も叱ってしまったことを引きずっていたように思える。
そんなところは花に似たのかもしれない。
キュウたちによって笑顔になったレイナルドを見て、ようやく花も優しい表に戻った。
この日の夕食はレイナルドの仕留めた鳥を使った々な料理が食卓に並び、みんな笑顔で堪能したのだった。
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