《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第39話
「にいたん……」
「どうした? カルロス」
レイナルドが6歳になった時、ケイと花の間には子供がもう一人男の子が生まれた。
目はやはり黒、髪はし金も混じった黒、顔立ちは花に似たようだ。
レイナルドも弟ができて喜んだ。
弟のカルロスが3歳、レイナルドが9歳になり、兄として頼られるのが嬉しそうだ。
今も釣り針が服にかかって困ったカルロスを、優しい顔で助けている。
ケイたちの子供だけではなく、キュウとマルにもそれぞれ子供が出來た。
どちらの子も、ケイがキュウに初めて會った時の大きさだ。
ケセランパサランは発生型であろうと誕生型であろうと、生まれたばかりのサイズはこれくらいなのかもしれない。
以前、マルが生まれてきた時のように、やはり集めていたに意味があったようだ。
2匹が生まれた今回も、集めていたはずのがなくなっていた。
気になったこととして、キュウが15歳を皮切りに大きくならなくなった。
ソフトボールの大きさくらいだろうか。
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どんどんでかくなっていき、食事の量まで増えたらどうしようかという悩みがなくなって、ケイたちは心ホッとしている。
子供2匹の名前は、キュウの子がドン、マルの子がガンと名付けた。
小さな問題として、見た目でドンとガンの區別がつかない。
これは、そのうちキュウとマルにも起きることかもしれない。
一応判別方法はあり、探知で集中して見た場合、魔力量がほんの僅かに多い方がドンのようだ。
同じ方法でキュウとマルも見分けられるのだが、こちらは結構分かりやすい。
キュウの方が魔力保有量が多いからだ。
長した要因は、キュウもケイたちと時折ダンジョンにるようになったからだ。
レイナルドはまだダンジョンには連れていっていない。
島の魔なら危なげなく倒せるようにようになってきたので、ケイと花は10歳になったら連れて行くようにしようと話し合っている。
“ヒュ~~ウ、パンッ!!”
「「っ!?」」
ケイたちが海岸で釣りをしていた時、西の方で破裂音が鳴り響いた。
その音を聞いた瞬間、ケイと花は顔を見合わせた。
「花!」「えぇ!」
その言葉だけで通じ合う。
さすが夫婦といったところだろうか。
2人は慌てて行を開始する。
ケイはすぐさま西へ向けて走り出し、花は息子たちを連れてマルがいる家の方へ移し始めた。
「えっ?」「ふぇっ?」
母に抱えられた兄弟は、狀況が分からず面食らった表をした。
「レイナルド! キュウに何かあったかもしれない。マルたちと一緒にカルロスの側にいて!」
「えっ!? 何?」
先程の合図はキュウからによるものだ。
ケイの教えのおかげもあってか、キュウの魔法はかなりのものに長した。
島の魔なら相手にならないほどだ。
しかし、魔素がそれほど濃くなく強力な魔が発生する可能がないとはいえ、もしもということもある。
念のため何かあった時は合図を送るように教えておいた。
今日はドンやガンのために食材確保に向かっていたはずだが、どこか怪我でもしたのだろうか。
「絶対にここからでないで!! わかった!?」
「う、うん!」「?」
キュウへの不安が募る花は、説明もあまりせず家の中にれて扉を閉めた。
レイナルドの方は勢いに押されて返事をしたが、カルロスの方はよく分かっていないらしく首を傾げたままだ。
「マルちゃん! 頼んだよ!」
“コクッ!”
子供たちを家の中にれた花は、畑の見回りから戻ってきたマルに子供たちの護衛を任せ、ケイと同じく西へ向かって走り出した。
「キュウ!」
「っ!?」
全速力で走り、ケイは30分ほどでキュウの所にたどり著いた。
西の島の端にある海岸の近くだった。
ケイの姿を見つけたキュウは、元気そうに飛び跳ねた。
「はぁ、はぁ……、怪我したわけじゃ……なさそうだな?」
息切れするくらい全力で走って來たのに、見た所キュウはどこも怪我をしている様子はない。
安心したのと共に拍子抜けのは否めない。
「……いやっ!? これは……」
安心したのもつかの間、海岸の方へ向けた探知の覚に引っかかりを覚えた。
それを探知したケイは、慌てて海岸の方へ向かった。
「…………獣人?」
西の海岸に著くと、そこには総勢17人の獣人たちが橫たわっていた。
特に子供たちが多く倒れている。
もしかしたら、天候が悪かった2日前に難破したのだろうか。
「生存確認をしよう!」
探知に反応がある者もいる。
それだけでは生きているいないを判斷できない。
息はしていなくてもまだ脈があるかもしれないからだ。
「キュウも手伝ってくれ!」
“コクッ!”
全員を1人では時間がかかる。
一刻を爭う事態なので、キュウにも手伝ってもらうことにした。
「息があったら頭の付近に石でも置いてくれ」
“コクッ!”
海の魔にやられたのか、明らかに助からないであろう人間もいる。
5分もしないうちに確認は済んだ。
「ケイ!」
ケイたちが生存確認が済んだ頃、後から向かって來ていた花がたどり著いた。
「花! 9人は助けられる可能がある。助けられる者から助けるんだ!」
前世で見ていた、再放送の救命救急のドラマが思い出された。
こういった場合、重傷者の治療に時間をかけるよりも、1人でも多く助けるように癥狀がある程度軽い人間から見た方がいい。
とは言っても、ほとんどの人間が危険な狀態。
元々醫學の知識なんかないのだから、息があって外傷がない者を優先することにした。
ケイと花ができるのは回復魔法をかけるか、薬草から作った自家製の回復薬を掛けたり飲ませたりするくらいしかできない。
後は本人の生命力に期待するしかない。
「…………これ以上は無理だな」
一生懸命回復魔法をかけ続けたケイたちだったが、これ以上は魔力切れをおこしてしまう。
幾らケイたちでも魔力がなくなれば、この島の魔でも危険な相手になる。
魔力をし殘しつつも、何とか9人中5人が助けることができた。
「目を覚ましたら話し合う必要があるな……」
「……うん」
救えなかった12人の亡骸は丁重に並べておいた。
火葬するのにも、もしかしたら生存者の家族がいるかもしれない。
そもそも獣人族は火葬の習慣があるのかも分からない。
取り敢えず、助かった者のうち誰かが起きるまでにしでも魔力を回復させようと、ケイたちは靜かに待つことにした。
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