「うっ、うぅ……！？」

西の海岸に流れ著いた獣人たちの、助かった１人の男が目を覚ました。

「あっ！？　ねぇ、ケイ！」

「ん？」

そのことに気付いた花が、土魔法で簡易の竈を作って調理をしていたケイに呼びかける。

彼らがいつ流れ著いたのか分からないので、空腹だった時のことを考えて軽食を用意していた。

「あぁ、起きたか？」

もう大完していた調理を終え、ケイは目を覚ました男のところへ近付いていった。

「やぁ、目醒めたかい？」

「あぁ……」

目を覚ましたのは、ケイよりし年上くらいの男。

頭に耳が付いた茶髪茶目のガッシリした格の持ち主だ。

獣人には獣人で々な種族がいて、その種族によって能力に差があるらしい。

ただ、共通しているのは、総じて能力が高く、魔力がない。

彼らがどんな種族なのかは分からないが、見たじ強そうだ。

「……まずは、助けていただきありがとうございました」

「どういたしまして。ん？　気が付いていたのか？」

若く、力があるからだろうか。

ケイたちが救出する時、一番先に回復させた相手だ。

全員意識がないように思えたが、彼は気が付いていたのだろうか。

「意識がなくなるギリギリ前にしだけ聲が聞こえました」

「なるほど……」

どうやらキュウに指示を出した時の聲が辛うじて聞こえていたらしい。

「悪いな。全員は救えなかったが……」

「親父……」

しだけ話をした後、ケイは彼ルイスを並べた亡骸たちの所に連れて行った。

すると、ルイスは一番損傷の激しい男の亡骸の所に近付いていき、涙を流し始めた。

「……親父さんか？」

「えぇ……、漂流していたら天気が悪くなってきて、波が荒れ、そこに鮫のような魔に船が襲われて……」

２日前この島も天候が悪かったが、その時に船が魔に壊され、皆海に落とされたらしい。

「親父とそっちの小父さんが相手したんですけど、親父が噛みつかれて、その隙に小父さんが攻撃したんだけどすぐには死ななかったらみたいで、暴れた鮫が當たりしてきて船が転覆しました」

ルイスの父親の隣に寢かされている男を指さし、ルイスは転覆した時のことを詳しく説明してくれた。

「そもそも何でこんな人數で海に出たんだ？」

「魔のスタンピードです。村に大挙で押し寄せてきました」

魔のスタンピード。

何のきっかけか、魔が大量繁して人間に多大な被害が及ぶことだ。

「うちは小さい村で、対抗のしようもなくみんな散り散りに逃げました。俺たちは皆海の近くに住む近所の住人で、逃げる場所が海しかなかった。それで皆と話し合って、近くにあった船にしの食料と乗れるだけの人間を乗せて、村から離れようって海に出ました」

「なるほど……」

たしかに規模にもよるが、小さい村ではスタンピードに対処できないのも仕方がないだろう。

「何で漂流したの？」

「…………慌てて海に出たため、船と海の扱いに長けた者がいませんでした」

この島から獣人が住む大陸は見えない。

なので、相當な距離があると思う。

最初漂流したと言っていたが、魔から逃げるにしても陸から離れすぎていないだろうか。

そう思って聞いたら、なんと言葉を返していいか分からない答えが返ってきた。

ケイの言いたいことが分かっているのか、ルイスも言いにくそうな表をしている。

「お母さん！！　お父さん！！」

どうやらもう１人目を覚ましたようだ。

の獣人がケイとルイスの方に向かって來た。

小さい子供で助かったのはこの子だけだった。

背丈などから考えると、ケイの息子のレイナルドよりし年下くらいの金髪茶目の子だ。

向かって來たは、そのまま両親と思しき２人の亡骸に縋り寄り、大きな聲で泣きんだ。

「セレナ……」

「……ルイス兄ちゃん！　お母さんが……！　お父さんが……！」

後で聞いた話だが、ルイスは近所の子の面倒をよく見ているせいか、近所のお兄さん的立場らしい。

ルイスが優しくの頭をでてあげると、はルイスのに抱き著き更に泣き続けた。

助かった人間はルイスとセレナ以外に、他にも２０代前半の、人（１５歳）したてくらいの男だ。

彼らもしして目を覚ますと、親や兄弟の亡骸の前で涙を流した。

ケイと花は、とりあえず獣人たちの気持ちが落ち著くまで待つことにした。

そして、皆落ち著いた頃を見計らって、ルイスに聲をかけた。

「みんなお腹は空いていないか？　軽めに卵粥を作ったんだが……」

「ありがとうございます。皆！　悲しいだろうが、が弱ったままではいけない。甘えさせて頂こう」

「「「「…………」」」」

ルイスにわれたみんなは僅かに頷き、ゆっくりとケイが作った料理の方へ向かって行った。

「ルイス……」

「何でしょうか？」

皆、花が配った卵粥を食べ始めるが、無言だ。

時おり思い出したかのように涙を流している。

気持ちは分からないではないので、ケイは話ができそうなルイスに話しかけた。

「食事が終わってし休んだらここを離れたいんだ」

ケイたち家族しか住んでいないこと、ここは危険な魔（豬）が來る可能があること、安全な所は東の端になることを、ケイはルイスに説明を始めた。