《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第47話

夏は暑い。

當たり前のことである。

ここは海に囲まれ、いつでもって涼むことができると思うが、実はそうでもない。

この世界には海の魔もいるのでっていると襲われて怪我をする、という訳でもない。

もちろんその可能もあるが、淺瀬に大怪我を負わせるような魔はそうそう現れないし、現れても探知で近付いてくるのが分かるので危険ではない。

単純にこの島の人間は、みんな溺れて流れ著いた人間ということもあり、海がし苦手になっている。

ケイや花も泳ぐことはできるが、溺れた時の記憶がチラッとフラッシュバックするのであまりりたくないというのが本心である。

「ここでいいかな?」

波がある海で泳ぎたくはないが、涼みたい気持ちはある。

獣人のみんなも、そんなところがあったら嬉しいと言っていた。

なので、作ることにした。

ケイたちが住む近くの海岸、その東は巖場になっている。

貝などを手にれるにはいい巖場だが、他にも巖場はあるのでここがなくなっても食料的には問題ないだろう。

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「ここでいいのですが、ケイ殿1人で大丈夫ですか?」

「たぶん大丈夫だよ」

ルイスは何か手伝えることがあるかもしれないからと、ケイに付いてきた。

はっきり言って、魔法を使えば出來るので手伝いとかいらないのだが、作ってから何か助言でもあったらしてもらおうと思っている。

「どれくらいの大きさが良いかな……」

ケイが今作ろうとしているのはプールだ。

魔法で巖を加工して、島のみんなが涼めるようにしたい。

それに、レイナルドに泳ぎを教えた時に困ったのが、まだ泳ぎに慣れていないのにもかかわらず足が付かないところに行った時だ。

親の気持ちからすると不安で仕方がなかった。

下の子のカルロスも、そろそろ泳げるように教えていきたい。

初心者・子供用に淺い所と、大人用の深い所を作る必要があるだろう。

「ハッ!」

巖場にを開け、その分の巖で防波堤のようなもので枠を作っていく。

「25mプールでいいだろ……」

錬金で大工道を作る時、メジャーを作ることに功している。

ルイスに手伝ってもらって距離を測り、25mの目印を作っておいた。

それを目安に作り、淺い所2コース、深い所4コースの結構ちゃんとした枠ができた。

淺い所は小さい子供用と初心者用で、2段階の高さにしておいた。

これならまだ小さいカルロスでも足が付くだろう。

「………………とんでもない魔力量ですね?」

土をるのはまだ難しくなく、魔力もあまり消費しない。

しかし、い巖を変形させるとなると、その分魔力を消耗する。

なのにケイは、長さ25m、幅15mの綺麗な窪みをあっという間に作り出してしまった。

獣人からしたら、考えられないような魔力量がないと作れないはずだ。

「エルフは魔法が命だからね」

驚かれるのは嬉しい。

なんとなく褒められている気分になる。

獣人と違って魔力がなければ何もできないという欠點もあるが、その場合はルイスたちに任せればいい。

できることは自分でやって、できないことはできる人に任せればいい。

何でもかんでも自分1人でできるなんて考えるのは、おこがましいことだ。

家を建てるのにも々な人間が関わって、作業を分擔して作り上げていくものだ。

小さい頃から父に言われていた事だし、自分でもその通りだと思っている。

「中の水は海水の方が良いかな? それとも魔法で作った水の方が良いかな?」

「………………海水で良いのでは?」

プールの枠はできたが、水はまだっていない。

海にあまりりたくない大人たちが涼むための意味もあるが、子供たちが海で泳げるように、泳ぎの練習のためのプールでもある。

大人たちのことを考えると、上がった時海水だとべたつくのが嫌だという人もいるかもしれない。

まぁ、魔法で作った水で軽く流してしまえばいいので大したことではないので、ルイスの言うように海水で溜めることにした。

「これでしすれば溜まるでしょ?」

「そうですね」

ケイは、防波堤のような枠の一部に魔法で小さめのを開け、海水が流れてくるようにした。

もう一ヵ所反対側にも開け、これなら溫泉のようにかけ流し狀態になり、綺麗な狀態を保てるだろう。

「さぁ! プール開きだ!」

1日経つとプールに水が溜まった。

それを見て、ケイはプール開きをみんなに伝えた。

「さぁ、カルロス。まずは顔をつける所から練習しよう」

「あい!」

ケイは作る前からの目的通り、カルロスへ泳ぎの練習を始めた。

花はケイたちの隣のレーンでセレナの泳ぎをチェックしていて、その隣のレーンでアレシアとリリアナは優雅に泳いでいる。

「ヒャッハー!」

「うわっ!?」

「そ~れ! それ!」

イバンとレイナルドは、ルイスに放り投げられている。

それが面白いのか、何度もルイスにねだっていた。

思っていた通り、みんな波がなければ恐怖もないらしく楽し気だ。

ただ、殘念なのは陣が水著でないことだ。

陣は上半で下はハーフパンツ。

陣は上半はノースリーブで、下は短パンといった格好だ。

何はともあれ、みんなに楽しんでもらえたので、プールを作った甲斐があった。

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