《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第51話

「えっ!? 豆からチーズが作れるのか?」

「えぇ、できると思いますよ」

秋の終わり、収穫も全て済んで冬支度を始めたころ、ルイスと話しているとチーズの作り方を知っているという話になった。

ケイは牛がないのでチーズなどの製品は作れないものだと思っていた。

しかし、牛の代わりに豆でも作れるそうだ。

なんでも、ルイスは前の村で牧場で働いていたらしい。

その時、ルイスは製品の製造も手伝ったりしていて、牛じゃなくても作れるということを聞いていたそうだ。

「そうか! と植の違いがあるけど、代用できるのか……」

ここに住み著いて20年以上経って、ケイはようやくこのことに気が付いた。

よく考えればもしかしたらもっと早く思い出していたかもしれないだけに、何だか損したような気分がする。

「まぁ、でもチーズの作り方は知らないから意味ないか……」

確かに考えれば代用できると思いつくかもしれないが、作り方を知らなければ結局のところ意味がない。

Advertisement

そう思うと、さっきのこともどうでもよくなった。

「豆と何が必要なの?」

さっさと気持ちを切り替えて、ルイスに豆チーズの作り方を教わることにした。

「レモンかお酢があれば作れますよ」

「…………えっ? それだけ?」

「はい」

「え~……」

もっと何か必要なのかと思っていた。

これなら魚醤なんかより簡単だったかもしれない。

あまりの材料のなさに、ケイはちょっと茫然としてしまった。

「あっ! レモンもお酢もないや……」

材料はないが、よく考えたらこの島でレモンなんて見たことがない。

獣人の國とかだと結構簡単に手にるらしいが、まさか船で行く訳にもいかない。

お酢も作り方が分からず放置してきた。

「ん~、この赤い実でいいかな?」

ケイがこの島に來た初期の頃、酸味がある赤い実を見つけた。

お酢を造ることができないので、この実を潰して出たを代わりに使って來た。

畑の一部でわざわざ育てているほど重寶している。

レモンにもお酢にも近いじがするので、これでも出來るのではないかとケイは考えた。

「……この実は何ですか?」

「……さあ?」

「「………………」」

ルイスに言われ、今更ながらこの実が何なのか考えたが、ケイにも答えようがなかった。

この世界の鑑定では名前が分かるということはないのだから、仕方がない。

その鑑定で見たところ、ちゃんと食用ではある。

よく分からない実を使ってできるのか疑問に思い、2人とも無言になるという変な間ができてしまった。

「……とりあえず作ってみますか?」

「だな!」

考えても仕方がない。

代わりになりそうな材料がこれしかないのだから、これで試してみるしかない。

ケイたちはとりあえず、豆作りから始めた。

使うのは、これまた昔にケイが見つけたインゲン豆のような実の豆の部分だ。

味噌を作るために使用するので、畑で育てるようにしている。

この実の味自はまあまあといったじで、手れしてもあまり味は向上していない。

今でも塩を作る時があるので、その時ついでにできたにがりで豆腐を作ったりもしている。

出來ればちゃんと大豆を使いたいが、この島では見つからないので我慢するしかない。

が必要なので豆を水に1日つけ吸水させた翌日、十分に膨らんだ豆を潰すのだが、昔はそれを人力で潰していたが、今は違う。

れた豆と水を魔法でミキサーのようにして、あっという間に豆を潰した。

潰して出來たを火にかけ、搾って豆を作り上げる。

「では、できた豆をいれた鍋を火にかけてください」

「あいよ!」

ルイスに指示され、ケイは返事と共に竈に豆をいれた鍋を置いた。

「火力は?」

「中火くらいで軽く混ぜてください」

「あいよ!」

竈だと火が安定しないのが不安だが、沸騰しないようにすればいいとのことなので、それほど難しくない。

「火を消してレモン代わりのれてください」

「あいよ!」

ここまでは特に何も変化がない。

「軽く混ぜてあとはし待ちます」

「ん? もしかしてこれで水を切ったのがチーズなのか?」

レモンやお酢の代わりに、赤い実を絞ったれるとしずつ変化が訪れてきた。

ここまで來ると、テレビで見たような記憶がある。

搾ってできたのがチーズで、出た水がホエーとかいうだった気がする。

「そうです」

「こんな簡単だったのか……」

聞いてみたらやはりそうだった。

まさかこんな簡単にできるとは思っていなかった。

ここまで簡単なら覚えておけばよかった。

「これで出來たのがカッテージチーズになります」

「へ~……、あっ! 本當にチーズだ! スゲエ!」

できたのを味見してみたら、確かにチーズの味だった。

これなら々な料理に使えそうだ。

そう考えると、ケイのテンションは上がる一方だ。

「豆で他にも何か作れるのか?」

「試してみないと分からないですが、いくつかありますね」

どうやら製品に関しては、ケイよりもルイスの方が詳しそうだ。

ではなく豆になるが、他にも作れそうなら試して見る価値はある。

「じゃあ、ルイスには豆々作ってもおうかな? もちろん時間がある時で構わないけど……」

「分かりました」

これから冬になると、みんなやることがなくなる。

カルロスと、念のためセレナはまだ許可できないが、それ以外の者はダンジョンに行くことを認めている。

単獨でのチャレンジは、もしもの時のことを考えて止。

數人行代で行くように決めてある。

何日も行ったままなのは不安になるので、最高3日までしか潛ってはいけないというのも決まりにした。

他の隊がチャレンジ中は、他の隊はらないというのもルールとしたため、どうしても暇な時間はできる。

その時にやることができたので、ルイスとしても好都合だ。

その日、ケイはできたばかりのチーズを使って、米の生地のピザをみんなに振舞ったのだった。

    人が読んでいる<エルティモエルフォ ―最後のエルフ―>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください