《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第53話
ケイたちの家の隣に、家を建てることになった。
ルイスとアレシアが結婚をすることになったからだ。
「いつの間に……」
「気付いていなかったの?」
結婚の報告を聞いたケイは驚き、茫然としてしまったのだが、花の方は大して慌てた様子がなかった。
どうやら、2人の距離がだんだん近くなっていたことに気が付いていたようだ。
こういったことは、やっぱりの方が敏なのかもしれない。
「気付くわけないだろ……」
花と違い、ケイは2人の仲が進展しているなんて気にもしていなかった。
「2人は生き殘った人たちを引っ張っていかなければならなかったから……」
20人近くの仲間の、生き殘ったのは僅かに5人。
その中でも年長の2人は、他の3人の神的支えにならなければならなかった。
ルイスはその役割が特に強かった。
獣人の中には、強い者が上に立ち、他の仲間を守ることが暗黙のルールのようになっている。
この島で一番強いのはケイだが、慣れないうちはまだよく知らない者より、昔からの知り合いに言われた方が指示をけても納得の仕方が違う。
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生き殘ったのは男だけではないので、のことはアレシアに任せるしかないが、その役割をしっかりこなした。
そういった役割をこなすうえで、お互い連攜を取る必要がある。
次第と話す機會も増え、仲もしずつ良くなっていったと花は説明してくれた。
「苦労を共にしたことで距離がまったってことか……」
「そういうこと」
花から聞いた話から考えると、ケイは思い至ることがあった。
自分と花の狀況も似たようなじだったからだ。
々な食材を確保し、今では遊ぶ余裕までできた。
釣りは元々趣味だったので、當初から食材確保と同時に遊びでもあったが、今は釣らないといけないというでもなくなった。
花がきてからすぐ、不作の時期があった。
飢えるまではいかなくても、ちょっと苦しい時期だったが、そんな時でも2人キュウたちもいたがでなんとか乗り越えてきた。
そういったこともあって、ケイと花の距離が近付いたと後になって思うようになった。
自分たちと重なるからだろうか、花はルイスたちの結婚が何だか嬉しそうだ。
「イバンたちの方は分かってたんだけどな……」
「あれは分かりやすいから……」
イバンとリリアナの人したての2人も仲が良い。
同じ農家の家で近所に住んでいたからか、2人は仲が良い。
どうやら馴染だという話だ。
前世の自分なら羨ましくも憎たらしい関係だが、今のケイからすると微笑ましかった。
村に住んでいた時のように、2人には畑の手れを任せるようにしている。
同じ仕事を一緒にしているからか、自然とくっついていったようにじる。
「ベタだな……」
「まぁ、確かに……」
ケイの言うように年齢を考えれば、近い者同士でくっつくのは確かにベタだ。
花もそう思うのは分からなくもない。
「でも、良いんじゃない? バランス良くて」
「……そうかもな」
世代が変われば、考え方も食い違うこともある。
その食い違いが積み重なれば、関係を続けることもできなくなる。
同じ世代ならそういった食い違いもきっとないはず。
それに、ここの人口を増やすということなどのバランスを考えれば、花の言う通りこの組み合わせが一番いいのかもしれない。
「レイナルドの奴にも相手ができたことだし」
「あれは……まぁ、あの子自のせいね」
まだ先のことだが、レイナルドはセレナとの結婚が決まっている。
というのも、ゆらゆら揺れているのを見ていて気になったのか、レイナルドがセレナの尾を握ってしまったのだ。
案の定、獣人の尾は結婚相手以外の異がってはいけない決まりになっている。
そんなこととは知らずに、みんなで一緒に住むようになってからレイナルドはやらかした。
セレナの尾を握ってしまい、その場でセレナにぶん毆られていた。
あまりの右ストレートに、レイナルドが死んだかと思う程だった。
「レイを鍛えておいて良かったよ」
「そうね」
この島でも、魔にいつ遭遇するか分からない。
もしもの時のことも考え、ケイと花はレイナルドのことを小さい頃から鍛えていた。
魔闘も使えるようになっていたが、まだまだ多くの魔力を使いこなせないでいる。
咄嗟の時に使えるようにしておけと言ってはいたけれど、ちゃんということを聞いていたようだ。
セレナの拳をける寸前に魔力を纏い、直撃を食らっても死なずに済んだ。
いきなりだったとはいえ、流石にやりすぎたとじたのか、毆ったセレナはひたすらケイたちに謝っていた。
「毆られたのは俺なんだけど……?」
「この場合はしょうがない」
口の中を切り、口からをダラダラ流しながらレイモンドは呟くが、ケイの言う通り仕方がない。
尾を握ってはいけないとは知らなかったと言えば、今回はうやむやにできたかもしれないが、流石にそれはセレナが可哀想だ。
「レイ! あんたが責任取りなさい!」
「…………はい」
花の鶴の一聲で、レイナルドは頷いた。
父親として甘いケイの命令より、花の方がレイナルドは恐ろしいらしい。
頷く以外の選択ができなかった言ってもいい。
その事があって、花という味方をつけたからか、レイナルドはセレナにに敷かれるようになっていった。
同じ男として、ケイはレイナルドに同するが、奧さんのに敷かれている方が結構上手くいくものだと諭している。
何故なら、ケイもどちらかと言えば花のに敷かれている立場だからだ。
「これからきっと人が増えて行くんだろうな……」
「そうね……」
まだまだ人數はないが、これだけいればこれからきっと人が増えていくだろう。
そのうち村と呼べるようになるかもしれない。
たった一人の孤獨な生活から始まったここが、そうなっていくと思うとケイは慨深いものがある。
言葉などからそれをじ取った花も、同じようにじる。
「これからもがんばりますか!」
「うん!」
ないながらも、島によるみんなの祝福をけるルイスたちを見て、なんとなく決意を新たにするケイと花であった。
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