《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第55話

「ば~ば!」

「う~ん……」

西の島の畑の近くから東の島の住宅地まで一緒にきたラウルは、花の姿を見つけて元気に走り寄っていった。

呼ばれた方の花は、なんとなく不服そうな表でラウルの頭をでた。

今日はレイナルドたち夫婦は魔の狩りへいっていて、子供は花とケイが預かっている。

「なんだ? まだば~ばって呼ばれるのが抵抗あるのか?」

「うるさいわね!」

レイナルドには2人の子供がおり、長男のファビオからの呼ばれ方にずっと引っかかっていた花は、レイナルドに他に呼び方がないかと困らせていた。

「私はまだ30代後半なのよ。おばあちゃんて呼ばれるのに抵抗あってもしょうがないじゃない!」

「それは何と言って良いのか……」

ケイと花は同い年、今は38歳。

普通の人族である花と違い、エルフのケイは20歳を過ぎたころから姿が変わらないでいる。

今でも剣の訓練をしてかしているし、容に気を付けてはいる。

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それもあってか、花も昔とそれ程変わりはない。

だが、時折白髪が生えているのを見つけて軽くショックをけたりしている。

自分が老いていくにもかかわらず、ケイがずっと変わらないのが実花はなんとなく気にらないらしい。

ただ、こればっかりはケイにはどうしようもないので、返す言葉がない。

「あっ、父さん。今日の仕事は上がり?」

「あぁ、ラウルが迎えに來たらしょうがないだろ?」

住宅地へ戻ると、カルロスとドゥルセが子供たちを連れて海岸の方から戻って來た。

ドゥルセは、ルイスとアレシアの最初の子で、2人は來年には結婚する予定だ。

今日は他の家族が仕事で忙しいため、海岸で遊ぶ子供たちの面倒をみていたのだ。

「相変わらず甘いね……」

「うるさい」

自分が子供の時も甘かった父のケイだが、孫にまで甘いことにカルロスはし呆れたように言い放った。

だが、ケイからしたら自分だって甥っ子に甘いくせに、よくそんなことが言えるものだというのが本音だ。

カルロスたちが面倒を見ていたのは、ルイス、アレシア夫婦の子たちと、イバン、リリアナ夫婦の子、それに甥っ子に當たるファビオだ。

農作業専門のイバン夫婦同様、ルイス夫婦も15年前から始めたチーズ作りとパン作りの仕事がもう彼らの専門になっている。

もう、ケイも口を出さないし、出せないでいる。

ルイスはチーズ職人、アレシアはパン職人といったじだ。

仕事で忙しいとは言っても夫婦の仲は良く、彼等には3人の子供がいる。

がカルロスの妻になるドゥルセ。

母に似てスレンダーな型をしており、丸みを帯びた顔はし可らしく見える。

小さい頃からカルロスにくっついていたのが、そのまま夫婦になっていったといったじだ。

がマリベル。

ドゥルセと2つ違いで、型は姉同様スレンダーだが、顔は完全に母に似、人タイプといったじだ。

姉よりも年上に見えるじがして、ちょっとコンプレックスを持っていたが、魔人のシリアコに褒められてからはそれもなくなったようだ。

年が離れてはいるが、ケイとしては2人の仲が上手くいってくれることを願っている。

末っ子は長男のドミンゴ。

マリベルからさらに2年経って生まれた子だ。

父親に似た容姿で元気いっぱいに育っていて、子供たちの中では年齢的なこともあって一番強い。

レイナルドの長男のファビオの目標になっている。

ファビオは獣人のハーフなのでかなりの能力がある。

さらに、父譲りの魔力も多くあることから、數年後にはドミンゴを越えられるとは思う。

イバンとリリアナの子供は、ルぺというの子だ。

ルイスの夫婦の次であるマリベルの翌年に生まれた。

結婚してなかなか子供が出來なかったこともあり、妊娠が発覚した時にはイバンたち夫婦だけでなく、他のみんなも喜んだものだ。

ただ、ちょっとお転婆に育ってしまっているじがしてならない。

畑仕事を手伝うよりも戦闘技を鍛えることが楽しいようで、親のイバンたちはちょっと困っているようだ。

特に花を尊敬しているらしく、いつも剣の指導を頼みに來ている。

「ただいま! じいちゃん」

「おぁ、お帰り」

叔父のカルロスと共に帰ってきたファビオが、ケイに帰ってきた挨拶をしてきた。

ファビオも花の剣が好きなのか、最近は剣の稽古ばかりしている。

なので、祖父のケイに遊んでくれとは言わなくなりつつある。

まだ6歳なのに、相手にされなくなってきているのでケイはちょっと寂しい。

「あっ! パパ! ママ!」

ケイと花が、ファビオとラウルと一緒にボール遊びをしていたら、魔を狩りに行っていたレイナルドと妻のセレナが帰ってきた。

それをいち早く見つけたラウルは、ボールそっちのけで両親のもとに走り出した。

ボールをケイに渡した後、ファビオもその後を追いかけて行った。

「父さん、母さん今日はありがとね」

レイナルドに抱き上げられ、ラウルは満面の笑みだ。

親子4人で並ぶ姿は、ケイたち夫婦からすると何とも心和む風景で、自分たちの昔を思い出すようだ。

「孫の面倒なんて何の苦にもならないわよ。呼び方以外……」

レイナルドに謝された花は、なんてことないように言った。

後の方の言葉は小聲だったが……。

「はいこれ豬! 解して皆の家に配らないとね」

今日レイナルドたちは、最近蟲の魔が増えてきているため、數を減らしに行っていた。

帰りについでだからと、食料調達に豬を狩ってきたそうだ。

この島の住人は好きが多いので、みんな豬は大好だ。

特にケイが作る料理が好きらしく、今日はこの豬を使ってみんなでケイ特製料理やバーベキューパーティーをすることになった。

畑の見張りのシリアコもカルロスと代し、ケイの豬料理に舌鼓を打ったのだった。

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