《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第58話

「どこだ?」

「……何が?」

硫黃の臭いをじ取ったケイは、花を伴って島の北にある小山の頂上にたどり著いた。

きちんと説明をしていないせいか、花はケイが何を言っているのか理解できていないらしく、首を傾げる。

そんな花を構いもせず、ケイは周囲をキョロキョロと見渡した。

「………………こっちか?」

「だから何が?」

何の説明もしてくれないでいるケイに対して、花も々イラ立ってきた。

しかし、ケイも今は急いで確認したいことがあるので、説明している時間が惜しい。

申し訳ないが、花への説明は後回しだ。

「…………あそこだ!」

「え~?」

頂上から山の斜面を見渡していたケイは、目當ての場所を見つけた。

「……何あそこ?」

花は何だか分からないまま、ケイが指さした方向へ目を向ける。

山の北側、海沿いの斜面の一部に煙が出ている場所を発見した。

その煙が出ているところの周辺は、何故かポッカリと樹々が生えていない。

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それが異質に思えた花は、若干引き気味にケイに問いかけた。

「……たぶんあそこが噴火口だ」

「えっ!? 噴火口って……、あそこから噴火するの!?」

花はようやくケイが慌てていた理由を理解した。

ここの島は、はっきり言って大きくない。

結構離れているといっても、噴火したらみんなが住んでいる所にも被害が及ぶことは確実だ。

噴火するとしたら、このことをみんなに知らせる必要がある。

花! 先に帰ってみんなに伝えろ!」

「先にって……、ケイはどうするのよ?」

確かにみんなに伝えるべきだが、何故自分1人でなのかと花は疑問に思った。

殘った所で何かできるとは思わなかったからだ。

「意味があるか分からないけど、村への被害が減るようにちょっと細工するつもりだ!」

自然災害相手に人間1人ががどうこうできるなんて思いもしないが、前世と違ってこの世界には魔法がある。

そもそも噴火をするかも定かではないし、いつ噴火するかも分からない。

たちの異変があったのは最近なので、噴火するにしても今日とは限らない。

それだけの時間があるのなら、村への被害をなくする方法を考えるべきだ。

といっても、時間がない狀態での思い付きなので、意味があるかは分からない。

ともかく、もしも噴火した時のために、みんなの避難場所などの確保などは花に任せることにした。

「細工って……、危険じゃないの?」

「大丈夫。危険だとじたらさっさと村に戻る!」

確かに細工をしようとしている最中に噴火でもしようものなら、ケイでも無事では済まないだろう。

十中八九で大怪我するのは目に見えている。

いや、怪我で済めば息子2人が回復魔法が使えるので、死にさえしなければどうにかなる。

そう考えればしは無茶ができるが、花の手前無難に答えておくしかない。

「……分かったわ。本當に無理しないでよ!」

「あぁ!」

ケイの妻として長いこと一緒に過ごしてきた。

今のケイの発言と表はなんとなく引っかかる所がある。

妻の……の勘だろうか、本音半分、噓半分といってじに思える。

問い詰めたい気もするが、今はやめておこう。

どれだけの時間があるか分からないのだから、無駄なやり取りをして時間を食うより、早いところケイにやることをやらせて戻って來てもらうのが一番だ。

花はケイに釘を刺し、急いで山を下り始めた。

◆◆◆◆◆

「んっ? 母さん?」

今日の夜まで見張りはレイナルドだ。

帰ってきたケイとの代になるのだが、最近の異変の容によっては遅くなるかもしれないので、特別にイバンが代わりになるかもしれない。

朝出かける父の注意に、いつもよりい表で見張りをしていた。

晝が過ぎ3時近くになったころ、出かけて行った両親のうち、母が一人で帰って気たのを発見した。

「どうしたんだ? 父さんは?」

母の急ぎ合と、1人で帰ってきたところからして、何かあったのかもしれない。

嫌な予がしたレイナルドは、母に一緒に行ったはずの父のことを尋ねた。

「ハァ、ハァ、レイ! 全員村に集めなさい!」

「いったい何が……?」

余程急いできたのか、母は息切れしている。

しかし、すぐにレイナルドに向かって指示を出した。

ただ、理由を把握してないレイナルドは、反的に問いかけずにはいられなかった。

「説明は後よ!! 急ぎなさい!!」

「わ、分かった!!」

母の慌てようから深刻な狀態なのだと判斷したレイナルドは、慌てて見張り臺から村の方向へ走り出した。

「えっ!? 噴火!?」

村の子供も大人も集まる中、花はみんなに向かって魔の異変の原因を説明した。

「そもそも、あの小山が火山だなんて……」

「だから魔がいつもいないところに現れたのか……」

「どうしたら……」

誰が言ったのかは分からないが、みんな花の話に慌てている。

確かに、魔以外に注意するべき脅威が長いことなかったからか、こういった自然災害が起こるとは想像もしていなかったのだからあわてても仕方がない。

“パンッ! パンッ!”

「「「「「!?」」」」」

「みんな! 気持ちは分かるけど落ち著いて!」

うみんなを落ち著かせようと、花は手を叩いて注目を集め、冷靜に話す。

「気になっていると思うけど、ケイは無事よ。戻って來てないのはここの被害をなくする細工をするって言って山に殘っだけよ。時間がなくて何をするのか聞けなかったけど……」

ケイのことが気になっていた全員が、僅かに安堵の表に変わる。

しかし、山に殘ったと聞いて、またも表が曇る。

「……ケイならたぶん大丈夫よ。無理をしないと言っていたから……」

みんなと同様に花もケイのことが心配だ。

だが、今はそれどころではない。

「それよりも、みんなは噴火した時のことを考えましょう!」

「「「「「はい!」」」」」

ケイはたった1人からここまで発展させた程の人間だ。

きっと何かの考えがあるはずだ。

花の言うように不安があるが、きっと大丈夫なはず。

拠はないがみんな同じ思いに至ったのか、すぐに気持ちを切り替えたのだった。

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