《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第61話

「…………良かった」

魔力を目に集めて視力を強化し、噴火した山の方を見てケイは安堵の聲をらした。

遠くに見えるケイが作った巨大な壁からこちら側には、溶巖が流れてきている様子がない。

噴火した時のために細工してきたことは、どうやら役に立っているようだ。

「大きな噴石も飛んで來ていないようだし、これなら大丈夫そうだな……」

この星の自転の影響なのか、噴火した煙はこちらに向かって來ているようだ。

つまり、火山灰もこちらに流れてくるだろう。

「レイ! この周辺に薄く魔力の壁を張るんだ!」

「分かった!」

噴火したことで沸き上がった小さな噴石が、ようやくケイたちの所にもパラパラと落ちてきた。

ただ、この調子なら薄い魔力障壁で十分だ。

まだ噴火したばかりなので、ケイは異変が起きた時のために、念のため魔力は溫存しておきたい。

なので、ケイは息子のレイナルドに、みんなの住宅を含めた範囲に魔力の障壁を張らせた。

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山に作った壁のように、この周辺に土魔法で天井を作ろうかとも考えたのだが、積もった火山灰の重さで崩れ落ちようものなら、二次被害になりそうなのでやめておいた。

「どれだけ持つ?」

「……これくらいの規模なら半日近くかな?」

弱いと言っても範囲が広いため、まあまあの魔力を消費する。

それを普通に半日使えると言えるのだから、レイナルドの魔力もとんでもない量をしているのが分かる。

レイナルドの弟のカルロスも、同じように魔力の量がとんでもないので、自分も窟の外で手伝うと言っていたのだが、もうすぐ結婚を控えているなので、外よりも中を守るようにケイたちが言いつけた。

「余裕を殘して10時間ってところか…………ん?」

【しゅじん! キュウたち! てつだう!】

ケイとレイが代で障壁を張れば大丈夫そうだが、疲労の蓄積を考えると2人だけだと々不安が殘る。

そんなケイの下に、従魔のキュウたちが近寄ってきた。

「そうか……じゃあ、みんなにも手伝ってもらおう」

【うん!】

キュウを筆頭に、魔法特化とは言ってもケイの従魔たちは強くなっている。

魔力も地道に増えていて、花よりも魔力量だけなら上かもしれない。

「キュウ2時間、マル1時間、ガンとドンは2匹で1時間頼む」

【うん!】

キュウたちの魔力量を考えると、魔力障壁を張っていられるのは4匹で4時間くらいだろう。

それだけでもケイたちが休めるのであれば十分だ。

「レイが8時間で、殘りは俺がやる」

「分かった」

噴火がどれくらいの期間続くか分からないので、全員の余裕を持った時間を考えると、これぐらいがちょうどいいだろう。

ケイが半日請け負うが、レイナルドとケイの魔力量の差を考えれば、當然といったところだ。

「「「「…………」」」」

キュウたちに協力してもらうようになると、子供のケセランパサランたちもケイの側にやってきた。

期待した目は、自分たちにも手伝わせてほしいといったところだろうか。

「……お前たちはみんなと中にってな」

““““……コクッ!””””

はっきり言って、彼らたちでは実力的に手伝ってもらう訳にはいかない。

なので、に帰って貰った。

素直に頷いていたが、役に立てないと分かると悲しそうな表をして窟にって行った。

◆◆◆◆◆

「いつまで続くんだ……」

「だね……」

噴火が起こって1週間が経った。

キュウたちの協力で、余裕をとった時間割にしたのだが、けずにじっとしているのは神的に疲労が溜まる。

ジワジワ噴火の威力が治まっていっているようだが、小さい余震が続いているのを考えると、まだ予斷は許さない狀況だ。

のみんなは何の問題もないようなので、それに関しては気が楽になる。

“ゴゴゴゴ…………”

「っ!? 余震か!?」

「何だっ!? 強いぞ!?」

地面が揺れ出したので、いつも通りの余震だと思っていたが、いつも以上の揺れに、ケイとレイナルドは慌てたような聲を出した。

揺れの大きさからいったら、噴火した時と同じくらいの揺れをしているのだから仕方がない。

“ドカーーン!!”

「なっ!?」

「おいおい! まじかよ!?」

山の方を見て、ケイとレイナルドは驚愕の表をした。

これまで煙が出ていた場所とは違うところから、噴火が起こったからだ。

しかも、その噴火した場所が最悪なことに、ケイが作った壁のこちら側だ。

視力を強化しなくても、赤いが噴き出しているのが分かる。

「レイ! 家や畑はもういい! 窟周辺だけにしろ」

「わ、分かった!」

最悪なのは溶巖だけじゃない。

噴き出した巖や火山灰が、火砕流としてこちらに一直線に向かって來ているのが見える。

遠いのでゆっくりに見えるが、恐らくはかなりの速度で向かって來ているだろう。

こうなったら、火砕流、溶巖流、さらに巨大巖石の落石にと、全部に注意を向けなくてはならなくなる。

落石を防ぐだけでも、これまで以上の魔力が必要になる。

周辺の建や畑を守るのは諦めるしかない。

ケイはレイナルドに、すぐに小規模で強固な魔力障壁に変えるように言う。

レイナルドもそのことを理解し、強固な障壁に作り変えた。

「ぐっ!? ヤバい! 巖石の量がきつい」

「レイ! 代われ!」

元々、障壁の役を、レイナルドからキュウたちに代わる時間帯だ。

これまでの疲労で、連続して落ちてくる巨大な巖石に、レイナルドは苦し気な聲をらす。

このままではレイナルドも危険な狀況なので、急遽ケイはレイナルドと障壁を張るのを代した。

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